SCP-683-JP
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SCP-683-JPの発声器官

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SCP-683-JPの捕食器官

アイテム番号: SCP-683-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-683-JPの棲息する██山一帯をサイト-81██として指定し、カバーストーリー"火山性有毒ガス発生地帯"に基づき一般人が侵入することを防いでください。1日1回鹿や猪などの大型の哺乳類を生きたまま給餌して下さい。給餌の際は大型ドローンを用いてSCP-683-JPの周囲100mに移送し、SCP-683-JPに捕食させて下さい。SCP-683-JP周辺への録音装置やレシーバー等の持ち込み、及びSCP-683-JPの発する音のDクラス職員を含めた人間の曝露は基本的に許可されておらず、実験に必要な場合はセキュリティクリアランスレベル3以上の職員の許可を得て実施してください。SCP-683-JPの現在地は装着したGPSデバイスによって捕捉されます。GPSデバイスの反応が消失した場合は遠隔操作ドローンを使用して再度デバイスを装着して下さい。

説明: SCP-683-JPは機械的な発声器官と捕食器官を有する生物です。現在1匹のみ発見、収容されており、他の個体や類縁種の存在は明らかになっていません。SCP-683-JPはスピーカーに似た異常な発声器官を有しており、聴覚に認識災害を引き起こす特異な鳴き声を発します。この鳴き声は周囲に別の生物が侵入した場合、及び摂食活動を行う際に主に発せられることが判明しています。SCP-683-JPの鳴き声を感知した場合、あらゆる音に対して耐え難い恐怖感を覚えるようになります。この恐怖感は経時的に増大し、さらに音に対して過敏になるという副次効果を伴います。これらの影響を記憶処理によって除去する試みは現在のところ成功していません。鳴き声は非常に大きな音量1であり、SCP-683-JPの付近で聴取した場合、前述した認識災害とは別に内耳器官の鈍化、或いは麻痺に伴い突発性難聴に類似した症状を呈します。難聴の症状は可逆的なものであり、SCP-683-JPから離れることで難聴は回復しますが、逆に近づくことで音を感じ取ることができなくなります。認識災害と難聴の両者の効果により、鳴き声に罹災した生物はSCP-683-JPに向かって移動することとなります。SCP-683-JPはこの効果を用いて生物の捕食を行っていると考えられます。

SCP-683-JPは██県において禁足地として知られている██山中に棲息しており、当該領域を調査していた財団フィールドエージェントの遭難によりその存在が発覚しました。遭難時の無線の音声記録を解析した際認識災害の兆候が見られたため、ドローンを用いた調査及び小型哺乳動物とDクラス職員を用いた影響調査を実施し、鳴き声の効果範囲を特定しました。その後、聴覚型認識災害の収容に長けた機動部隊む-5("魔女の犬")の人員を運用し、確保作戦が実施されました。しかしながら当該確保作戦は失敗し、捜索に携わった機動部隊員全員が死亡、あるいは行方不明となる結果となりました。作戦失敗の結果から、SCP-683-JPの財団施設への収容は見送られました。SCP-683-JPの移動速度は極端に遅く、また通常殆ど移動する兆候を見せないことから長距離の移動を嫌っていると考えられています。この生態を利用し、特別収容プロトコルに示す通り棲息する周辺地区を封鎖した上で定期的に給餌を行い、現在の位置に留める措置を取っています。

なお、以下に示すように確保作戦の際機動部隊員の一部は帰還に成功しましたが、帰還後全員が自殺、或いは決死任務への参加に伴い終了しています。

事案報告: SCP-683-JP収容作戦失敗に伴う人的資源の損耗状況
識別コード 状況 死亡日時 死因
アルファ(隊長) 自殺 2016/12/10 舌を噛み切ったことによる窒息死
ブラボー MIA2 2016/11/3 SCP-683-JP確保任務中山中にて行方不明
チャーリー KIA3 2016/11/3 SCP-683-JPに捕食された
デルタ(副隊長) 自殺 2016/11/5 胸を強打したことによる心臓震盪
エコー KIA 2016/11/10 SCP-683-JPへの決死任務に志願、自殺直後に捕食された
フォックストロット 事故死(結果的には自殺) 2016/11/4 脳出血に伴う脳浮腫

探査ログ683-JP-01 - 日付 2016/11/3

探索準備中の状況、各隊員は耐聴覚認識災害装備を着用している。

アルファ: 今回も聞いたら死ぬ声を発する化け物の探索任務だ、装備に不備があったら死に繋がる、チェックを行う。スロートマイク4とヘッドギアを着用しろ。

全員が着用し、アルファ隊長がブザーを鳴らす。

アルファ: ブザーの音は聞こえないな、私の声が聞こえたら手を挙げろ。

全員手を挙げる

ブラボー: 問題ないです、アルファ隊長も大丈夫ですか。

アルファ: 問題なし、それでは出発だ。ブラボーとチャーリーは私とスリーマンセルで先行し、デルタは副隊長としてエコーとフォックストロットを指揮し、別のルートで上がってこい

山中を探索、アルファのヘッドギアに着装しているカメラ映像を本部に送信している
山中を122分探索

ブラボー: そろそろ音の範囲内に入る。ヘッドギアは外さないように。

チャーリー: 頼まれたって外しませんよ。聞いたら狂い死ぬんでしたっけ。

アルファ: ははっ、なあ、こういう時たまにヘッドギア外したらどうなるんだろうとか考えたりしないか。"マンドラゴラの叫び声"が聞けるぞ。

チャーリー: マンドラゴラの叫び声なんて聞きたくもないですけど、どんな音なんだろうと興味は沸きますね、Dクラスにでも聞かせましょう。

ブラボー: 私もたまに考えますな。まあ早死にしたくないもんですなあ。

チャーリー: 見えてきた、あれが例の化け物か。スピーカーみたいだな。

ブラボー: ちょっとデカいな、重機を使わないと難しいかもしれん。ギリギリまで近づいてGPSマーカーの設置とサンプルの採取を行う。注意しろ。

アルファ: ブラボー、少し先行しろ。向こうからこっちが見えてるかどうか分らんが、なるべく悟られないように。ヤバくなったら戻ってこい。

ブラボー: 了解、少し先行する。

ブラボーが数m前に出る、SCP-683-JPとの距離はおよそ50mとみられる

ブラボー: スピーカーが目なのか?動くみたいだが。

ブラボー: こっちを見た?

カメラが細かく振動する。

アルファ: くっ、頭が。ブラボー!大丈夫か!

ブラボーがヘッドギアを投げ捨てた。恐怖の表情と共に一度アルファ隊長側に走り出すが即座に踵を返しSCP-683-JPの方に向かっていく

アルファ: おいどうした。チャーリー、フォローを。

チャーリー: [悲鳴]

チャーリーもヘッドギアを投げ捨てた、悲鳴の後アルファもヘッドギアを投げ捨てた。放置されたカメラは両者とも一度SCP-683-JPから離れる素振りを見せるが、直ぐにSCP-683-JPに向かって走り出す姿を捉えている。三人はそのまま姿を消した。

チャーリーがヘッドギアを投げ捨てたのと同時刻、別ルートでSCP-683-JPから100m程度離れた場所まで進んでいた別動隊も同様にヘッドギアを投げ捨て、潰走しました。

その後、デルタとエコーが昏睡状態のアルファとフォックストロットを連れ帰還しました。全員木の枝を両耳に突き刺したことにより内耳と脳に深刻な外傷を受けていました。アルファは3週間ほど昏睡状態の後意識を回復しましたが、フォックストロットは意識を回復することなく死亡しました。

治療の後、比較的軽症だったデルタ及びエコーにインタビューを行いました。インタビューはスロートマイクを用いて行い、こちらからの問いかけはディスプレイに文字を写すことで行っています。

インタビューログ"デルタ"683-JP - 日付 2016/11/8

██博士: 体調はいかがですか?

デルタ: 最悪な状況が続いている。頭がおかしくなりそうだ。

██博士: SCP-683-JPの認識災害の影響ですか。

デルタ: [ノイズ]、そうだ、畜生。服の擦れすら恐ろしく感じて仕方がない。

██博士: 鼓膜は既に破れているんですよね、それでも聴こえてしまうんですか。

デルタ: 細かい振動も頭に響くんだ。だんだん敏感に、恐怖は激しくなってきている。

██博士: その恐怖、というのはどういったものなのでしょうか、どうも想像がつかないのですが。

デルタ: ヘロインやコカインが人間の快楽のスイッチを押すのと同じように、恐怖のスイッチが押されるような感覚だな、これまで経験した全ての恐怖が耳の奥に叩きつけられるような感じか、伝わるかわからんが。

██博士: 少し想像がつきました。ところで、今日はSCP-683-JP収容作戦のことについて教えてもらいたいのですが、大丈夫ですか。

デルタ: [ノイズ]、うう、ああ、分かってる。イカれちまう前に話しておかないとな。聴覚型の認識災害オブジェクトの収容は何度もやったことがあるし、メンバーに油断もなかったと今でも思っている。

██博士: それでも失敗したと、一体何があったのですか?探査映像は拝見しましたが、途中で途切れていましたが。

デルタ: 防音用のヘッドギアは途中まではきっちり仕事をしたと思うが、オブジェクトに近づくにつれ耳の奥の方に違和感を覚えるようになったんだ。オブジェクトを目視できる距離まで近づいた時、フォックストロットが突然おかしくなった。あれはクソったれのオブジェクトの音を聞いちまったに違いない。

██博士: 音がヘッドギアを抜けた、ということでしょうか。

デルタ: [ノイズ]、ああ、分かってるんだよ。いや、そうじゃないと思う。何というか、振動が耳の奥に届いたと言うべきだろうな。あれだ、骨伝導ってやつだろう。肌にビリビリくるような音だったからな。

██博士: なるほど、合点がいきました。それで聴覚への認識災害に罹災したわけですね。

デルタ: ああ、そうだな、こっちから話しかけたと同時にフォックストロットはヘッドギアを投げ捨てた。止める間もなかったし、俺もエコーもみんなすぐに同じになっちまった。[ノイズ]、オ、オブジェクトは見えていたし、逆方向に逃げるべきだとは理解できたんだが、逆に走ってすぐ足音やら虫の音が恐ろしくて仕方がなくなり、すぐに踵を返してオブジェクトに向かっちまった。みんな同じだよ。

██博士: ノイズが酷いですね、何か問題でも。

デルタ: ぐ、いや、話を続けよう。[ノイズ]、分かってるんだよ。お、お、音が聞こえない方向に全力で走るとあのスピーカー野郎がそこにいた。何の音も聞こえなかった、どう考えてもおかしいが、妙に落ち着いた気持ちになったのを覚えている。

██博士: ブラボーとチャーリーはオブジェクトに捕食されたんでしょうか。

デルタ: [ノイズ]ブラボーはいなかったが既に食われていたみたいだ。チャーリーは食われようとしていた。足を歯車みたいな歯に挟まれて、

デルタ: あああ!クソ![悲鳴]この音を止めろ。心臓が、もう駄目だ!駄目だ!止めろ!

デルタは胸部を殴打した後、強く胸部を圧迫した。数秒後後気絶した。

その後、デルタは意識を取り戻した後も発作的に胸部の殴打、圧迫を繰り返しました。拘束を行いましたが、2日後睡眠中に拘束を外し胸部を殴打した結果、心臓震盪を引き起こし死亡しました。

インタビューログ"エコー"683-JP - 日付 2016/11/8

██博士: 気分は如何ですか、エコー。

エコー: 良くないね、もっと枝を耳に深く突き刺して死んでおけばよかったと思うよ。結局みんな死んじまったのか?

██博士: アルファはまだ昏睡状態です。デルタは先日病室で亡くなりました。胸を自ら殴打して心臓にダメージが加わったためです。

エコー: 心臓を止めようとしたってか、俺も同じことを思ってるよ。心音が頭に響いて発狂しそうになる。いや、もうイカれちまってるんだろうな。

██博士: 収容作戦の状況を教えて下さい。大丈夫ですか。

エコー: 別に構わないが、あまり大したものは見てないし覚えていない。ヘッドギアをみんなで投げ捨て、混乱しながらあっちに行ったりこっちに行ったりしてるうちに気がついたらオブジェクトの近くにいた。そこでチャーリーが食われていくのを見ていたよ。アルファ隊長が引っ張って助けようとしていたみたいだが、突然手を放しちまった。

██博士: なぜそんなことをしたんでしょうか。

エコー: 分らんね。アルファ隊長はチャーリーと長い付き合いだったし、見殺しになんてするはずもなかっただろう。まああの時は皆頭がおかしくなってたからな、仕方あるまい。

██博士: 状況の確認を続けます。その後どうなったんでしょうか。

エコー: オブジェクトの近くはとても、とても静かだった。食われてしまう恐怖よりも音の恐怖の方が強かったからその場に留まろうと思ったんだろうが、アルファ隊長がみんなを引っ張っていった。そして、その辺の枝を手に取って耳に突き刺した。何をするべきか直ぐにわかったよ。同じことをした。

██博士: 皆さんそうされたんですか。

エコー: そうだ、もう誰もマトモに頭は働いてなかったからな。アルファ隊長に従ったというよりも、衝動的に同じことをしたという方が正しいな。枝の長さとか鼓膜までの距離とか考えることもできず、音の恐怖から逃れたい一心でその辺の枝をぶっ刺した。そうすると当のアルファ隊長とフォックストロットは耳から血を噴き出してぶっ倒れた。傷が浅かった俺とデルタが何とか二人を引っ張って逃げ帰ってきたってわけだ。

██博士: ありがとうございます。状況が理解できました。他に何もなければインタビューを終了しますが、何かありますか。

エコー: 一つ、頼みがある。今は何とか死なずにいるが、多分俺もそう長くない。心音が聞こえるたびに止めようと思うが、デルタみたいに犬死にするのはまっぴらだ。せめて財団に貢献して死にたい。

██博士: と、言うと。

エコー: オブジェクトにはGPSマーカーをつける予定だったが、結局できなかった。最後にあいつにマーカーをつける仕事をさせてくれ。食われる可能性は高く帰ってこれないだろうが別に構わない。

██博士: 決死作戦ですか。私の一存では難しいです。持ち帰って検討します。

エコー: 頼むよ。認められなかったとしても自殺するだけだ。せめて皆の敵は取ってやりたい。

エコーの申し出に対して決死作戦への投入の検討が行われました。エコーの財団への忠誠度が十分高く、また失敗した場合の人的損失が軽微である点を鑑み決死作戦が実施されました。

探査ログ683-JP-02 - 日付 2016/11/10

エコー単独によるSCP-683-JPへのGPSマーカー装着任務を実施した。探索に支障が出ないように防音ヘッドギアと特殊スロートマイクを用いて自分の声を含めた音を遮断している。

エコー: これから潜入する、一応スロートマイクを用いてログを取るが悲鳴が入るのは許してほしい。可能な限り帰還は試みるが、まあアテにはしないでくれ。

150分山中を探索、途中SCP-683-JPの声の効果範囲内に入った。

エコー: [悲鳴]ひっ、頭にビリビリきた、この辺りか。

エコー: 姿がまだ見えない、聞いて探すか。まだ正気がある間に遺言を遺しておく。

個人情報を含む重要性の低い文言であるため省略

エコー: 最後に財団に感謝と謝罪を。正直なところ今回の決死作戦は仲間の敵を討つのはおまけだった。ただ、安らかな場所で死にたかった。あのオブジェクトの周りの、心臓の音が聞こえなくなるほどの静寂がどうしても忘れられなかったんだ。GPSマーカーは俺の命と引き換えに装着する、その対価として一時の静寂を頂きたい。自分勝手だし、死んでいった仲間に顔向けできるとは思えないが、どうか許してほしい。

エコー: よし、行こう。どうか安らかに死ねますように。

エコーはヘッドギアの防音機構を解除した、その途端に悲鳴を上げて走り出した。
十分ほど悲鳴を上げながら走り回った末、SCP-683-JPの周辺に到着した。

エコー: いた、本当に静かだ。さあ最後の仕事をしよう。ああ、会いたかった。

SCP-683-JPは動かない。近づき、スピーカー状の発声器官周辺にGPSマーカーを取り付けた。

エコー: これで俺の仕事も終わりだ。財団も悪いようにはしないだろう。本当に静かだ。恐怖心も消えていく。

エコー: お、俺を食うのか、いいぜ、くれてやるよ。この静けさのお礼だ。静かに殺してくれ。

エコーは糸が切れたように動かなくなった。SCP-683-JPは歯車状の摂食器官を動かし、エコーの足に食らいついた。

エコー: 痛い![悲鳴]クソ!足が[悲鳴]足が潰れる音が!いやだ!もっと静かにしてくれ!この音を消してくれ!クソ![銃声]

エコーは所持していた拳銃で自殺したものと推定されます。

探査ログから、SCP-683-JPが発する音は摂食中にはある程度弱まるものと推定されます。当該決死作戦によりSCP-683-JPの現在地をモニタリングすることが可能となりました。

2016/11/25、アルファ隊長が昏睡状態から覚醒しました。精密検査の結果、脳機能と内耳に重大な損傷を受けたために首から下の運動機能、内耳の蝸牛・前庭・半規管の全機能を喪失していることが判明しました。そのため、外部及び自らが発する振動を感知できなくなっています。覚醒してから容体が安定した11/29にアルファ隊長へのインタビューが実施されました。インタビューには先の2人と同じくスロートマイクとディスプレイを用いて行っています。

インタビューログ"アルファ"683-JP - 日付 2016/11/29

██博士: 気分はいかがでしょうか。

アルファ: 何というか、気持ちの悪い浮遊感がある、あまり生きている実感がしないな。吐き気も酷い。

██博士: かなりの重症ですね。一応財団の医療技術を用いれば内耳機能が回復する可能性も残されていますが、なぜ拒否されたんですか。

アルファ: 回復したところであの恐怖にまた晒されるのはまっぴらだからな。一応治療も考えているが、しばらくこのままでいさせてほしい。

██博士: わかりました。今回はSCP-683-JPの収容作戦についてお聞きしたく思います。

アルファ: なあ、みんな死んじまったのか。

██博士: 残念ながら。最後まで生きていたエコーは自らSCP-683-JPにGPSマーカーをつける決死作戦に志願して亡くなりました。

アルファ: そうか。これも俺のせいか。で、何を聞きたいんだ、こんなクソ隊長に。

██博士: チャーリーさんを助けようとしていたとお聞きしましたが、その時の状況についてお聞かせください。

アルファ: チャーリー、ああ、俺は何てことを。もう少しで助けられたのに、俺がクソビビリなせいで見殺しにしちまった。

██博士: なにがあったんでしょうか。

アルファ: チャーリーがあの野郎に食われようとしていた時、俺は必死になってチャーリーを引っ張ろうとしていた。チャーリーは苦悶の表情を浮かべていたが、最期に少し表情を緩ませ、何かを俺に伝えようとした。今考えるとあれはアイツの遺言だったのかもしれない。

██博士: 何と言ったか覚えていますか。

アルファは涙ぐんだ、1分ほど沈黙

アルファ: チャーリーの遺言は聞けなかった。チャーリーの声を聴いた瞬間に恐ろしくなり、手を放してしまったんだ。クソ、最期の言葉すら聞き届けられなかった。俺は隊長失格だ。

██博士: なるほど、心中お察しします。そしてこれから、どうされますか。

アルファ: 目覚めてあいつらが全員死んだことを知った時は俺も後を追って死にたいと思ったが、地獄であいつらに怒られそうだ。せめてもう少し足掻いて生きていこうと思う。あいつらに会うのはいつでもできるしな。不幸中の幸いで自分の心臓の音すら聞こえない。こんなに静かなのは

アルファは30秒ほど沈黙、キョロキョロと目を動かして周りを見回す。

██博士: どうかしましたか。

アルファ: いや、何でもない。

アルファは10秒ほど沈黙

アルファ: なあ、下らないことを聞くんだが。

██博士: なんでしょうか。

アルファ: ここは安全だよな?

アルファはしばらく療養していましたが、インタビューから11日後の夜に舌を噛み切り、失血と舌の破片を喉に詰まらせ窒息死しました。自殺する前に不眠症を訴えていたこと、目を動かし何かを探す仕草を頻繁に行っていましたが、自殺した動機については不明です。

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