アイテム番号: SCP-689-JP
オブジェクトクラス: Keter
特別収容プロトコル: SCP-689-JPは縦に9基ずつ、横に9基ずつ配置された計81基のコンテナ群の中央のコンテナに収容し、Dクラス職員を交代制で入室させて常時内部に誰かが待機している状態を維持してください。入室者を交代させる際は、必ず入室者が先に部屋に入り、退室者はその後に部屋を出る方式を厳守させてください。SCP-689-JPは強力接着剤で固定し、振動や接触といった外的要因で動くことのないようにしてください。その他のコンテナは不必要な入室を防ぐため個別に施錠してください。
収容開始日から30日周期で、周囲80室のどこかのコンテナに別途Dクラス職員を派遣し、入退室を行わせてください。(201█/██/██収容実験中の事件記録1を参照してください。)入退室を行うコンテナはどこでも構いませんが、不測の事態を防止するため、30日前と同じコンテナを選択することは避けてください。
収容違反が発生した場合、速やかに適切な捜索を行ってください。SCP-689-JPを発見したら、SCP-689-JPの向きを都合のいい方角へ向け、外に隣室として、トラックで輸送可能な人が入れる大きさのコンテナを増設し、SCP-689-JPをコンテナへ誘導してください。誘導が完了したら、24時間以内にコンテナに職員を1人入室させ、収容地域まで輸送し、SCP-689-JPのあるコンテナが中央の位置に来るように周囲に別のコンテナを配置して9基 × 9基のコンテナ群を設けてください。
収容違反による被害の発生した地域の民間人には、Aクラス記憶処理を施し、別途マニュアルの「SCP-689-JP脱走時に想定される被害と対策」の頁を参照して適当なカバーストーリーを流布してください。
説明: SCP-689-JPは将棋で使われる「歩兵」の駒の外見をしています。材質はツゲで、文字は漆で書かれています。その他に特別な素材は使用されていません。
SCP-689-JPは、30日以内に、SCP-689-JPが存在する部屋を除いた周囲80室以内の、最低でも1人が入れる“部屋”と呼べる空間に人の入室が1度でもあれば、翌日SCP-689-JPの向いている方向に1部屋分を瞬時に移動します。この“部屋”の定義は、“扉の有無に関わらず、(リビング、バスルームなど)概念的な区切りがあり、屋根のある空間”であると見られ、廊下などの通路も当てはまるようです。
SCP-689-JPの移動を妨害する方法は現在確立されておらず、密室状態、固定状態からでも移動することが確認されています。また、これまでSCP-689-JPが移動によって屋外に現れたところは1度も確認されていません。
この移動には高さの制限がないように思われます。例として1階建ての家Aに存在するSCP-689-JPが正面の2階建ての家Bに移動した場合、家Bの1階に出現するとは限らず、2階に出現する可能性もあります。そのため、マンションやビルなどに入った場合、何階に出現しているかの予測ができません。
SCP-689-JPの移動先は、必ずSCP-689-JPが向いている方向の最寄りの“部屋”と呼べる場所で、距離は問いません。また、移動先は建築物に限らず、普通自動車や地下鉄の車両、航空機といった乗り物も“部屋”と見なされ、SCP-689-JPの移動対象になります。もし移動先の部屋の中に先客がいた場合、先客全員が原因不明の斬撃・刺突による負傷を受け、最悪の場合死亡します。この斬撃・刺突による攻撃は人間のみを対象としますが、自立歩行のできない小さな子供、寝たきりの重病人、身体に重度の障害のある人間は攻撃されないという事例が確認されており、SCP-689-JPの攻撃は対象の活動能力を奪う目的があると考えられます。
SCP-689-JPのある部屋に後から誰かが入室した場合、SCP-689-JPは活動を停止します。この活動停止状態は入室者1人以上を維持してさえいれば、内部の人間が交代しても継続されます。ただし、入室者が退出するなどして部屋が不在となった際には即座に活動を再開します。入室者の退室まで1日以上掛かり、かつその間周囲80室以内に人の入室があった場合、SCP-689-JPは不動だった日数分を1部屋ずつ瞬時に移動します。
また、SCP-689-JPの裏面には「と」の文字が見られ、何らかの条件でSCP-689-JPが裏返る可能性を示唆していると考えられていますが、裏返る条件については現在のところ不明です。
補遺: 以下はある条件で発生するSCP-689-JPの特異な反応と、その時の状況の記録です。
概要: 200█/██/██、原因不明の連続死傷事件が発生している地域を調査していたエージェントが、数日間に渡り何件かの被害のあった部屋で不審な“将棋の駒”を目撃しており、███博士に連絡を行った際の記録。
<記録開始>
エージェント・██: 本日被害のあった芦屋市のマンションの一室にて例の“将棋の駒”を発見。
███博士: ご苦労様です、エージェント・██。危険なオブジェクトである可能性があります。不用意に近づかないように。
エージェント・██: 承知しております。
███博士: 収容チームを派遣します。安全な距離を確保しつつオブジェクトの監視をお願い致します。
[10分後、収容チーム到着。同行していたDクラス職員(D-5002)が“将棋の駒”オブジェクトを透明ケースに入れて持ち運ぶ。]
███博士: では、安全な地域まで輸送してください。
[███博士の指示により、収容チームが部屋を退出。]
D-5002: あっ!え……!?
███博士: どうかしましたか、D-5002。
D-5002: 駒が消えた、煙みたいに……。
███博士: 消えた?……嫌な予感がする。すぐに捜索を要請します。
<記録終了>
[███博士が全国のエージェントに“将棋の駒”オブジェクトの捜索を要請。2日後、島根県の民家で犠牲者が出たことで発見された。]
メモ: “将棋の駒”オブジェクト(以後SCP-689-JPと呼称する)を元ある部屋から持ち出すと別所に再出現することを確認。持ち運びでの回収は不可能。 - ███博士
概要: SCP-689-JPの移動日のストックがない状態で、SCP-689-JPを9基 × 9基に並べた計81基のコンテナ群の中央の位置に収容。内部をカメラで常時監視。周囲80室以内での入室者がない状態を維持し続ければ、SCP-689-JPを封じ込められるのではないか、という███博士の仮説に基づき、収容実験を行った。
経過: 30日間異常なし。
結果: 31日目、カメラに映ったSCP-689-JPが風化するように消失。全てのコンテナを調べたがSCP-689-JPの存在は確認できず。
[すぐに全国のエージェントにSCP-689-JPの捜索を要請。2日後、青森県の大学病院の病室にて、潜入していたエージェントにより発見された。]
注: SCP-689-JPが発見された病室に複雑骨折のため入院中だった民間人は、常時病室に居たにも関わらず、SCP-689-JPによる攻撃を受けなかった。
概要: SCP-689-JPを9基 × 9基に並べた計81基のコンテナ群の中央の位置に収容。1日毎に周囲80室のどこかに入室者を派遣し、SCP-689-JPが移動するたびに中央の位置にコンテナを輸送する。不測の事態に備え、コンテナ内部をカメラで常時監視。犠牲者を伴わない移動を続けさせることで収容を確立できないか検証。
結果: 4回目の移動を終えたSCP-689-JPが風化するように消失。全てのコンテナを調べたがSCP-689-JPの存在は確認できず。
[すぐに全国のエージェントにSCP-689-JPの捜索を要請。翌日、岐阜県の遊園地の観覧車内にて発見された。]
メモ: 犠牲者を伴わない移動は3回が限界。4回目で再出現が起こることが判明。また、再出現場所の選定と再出現後の向きの設定は無作為である可能性が極めて高く、現在のところ予測は困難だが、再出現先の部屋は全ての例で無人だったことから、先客のいる部屋には再出現しないと仮定できる。 - ███博士
概要: 201█/██/██、keter認定を受けたSCP-689-JPに対し、██研究員指示の下、SCP-689-JPに割り当てられたDクラス職員(D-689-JP-17)による破壊を試みた際の記録。
<記録開始>
██研究員: ではD-689-JP-17、ニッパーでSCP-689-JPを破壊してください。
[██研究員の指示を受け、D-689-JP-17がSCP-689-JPをニッパーで切断。]
D-689-JP-17: うわっ、なんだ!?
██研究員: どうしましたか?状況を報告してください。
D-689-JP-17: さーっと消えた……。
██研究員: さーっと消えた?SCP-689-JPの残骸は残っていないのですか?
D-689-JP-17: 残ってない。砂糖が溶けたみたいに消えた。
<記録終了>
[結果報告を受けた███博士が全国のエージェントにSCP-689-JPの捜索を要請。3日後、SCP-689-JPによるものと思われる被害が山形県で確認され、同県の倉庫で発見された。]
メモ: SCP-689-JPを破壊しても別所に再出現することが確認できた。一先ず破壊の試みは見送りとするべきだ。 - ███博士