SCP-696-JP
評価: +53+x
blank.png
dreamy_mouse.png

SCP-696-JP-Bの一例

アイテム番号: SCP-696-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-696-JP-Aはサイト-81██の隔離医療室に収容され、継続的な麻酔投与によって昏睡状態が維持されます。接続機器より検出されるバイタルサインに異常が確認された場合、プロトコル"夢死"に従い、SCP-696-JP-Aに対する安定化処置が試みられます。この試みにも関わらず、意識レベルの上昇が規定値を上回った場合、SCP-696-JP-Aは即時終了されます。

また、隔離医療室内には武装した警備員4名以上を常時配備し、SCP-696-JP-Bが出現した場合には確保を行ってください。確保完了後、待機スタッフによって即座にSCP-696-JP-Bの生体検査・解剖が実施されます。

説明: SCP-696-JPは、以下の2つの要素から成ります。

SCP-696-JP-Aは、かつて███・████として知られていた日系ブラジル人女性です。クラスⅣ現実改変者1に指定されており、認識可能な範囲内での異常な物質生成、物理法則や認識の改竄を行使可能であることが確認されています。20██/01/16以降、財団によって継続した昏睡状態下に置かれており、現在までに身体的な異常は確認されていません。

SCP-696-JP-Bは、SCP-696-JP-Aの周囲に出現する生物群の総称です。現在までに既知の5種類の生物が観測されており、いずれの個体も異常性は見受けられず、同種の個体との明確な差異も確認されていません。SCP-696-JP-Bの出現現象は不明なスパンで瞬時的に発生し、必ず1個体だけが出現します。また、出現したこれら個体は一定時間経過後に、生死の状態を問わず霧散するようにしてその場から消失します。

以下は、現在までに観測されているSCP-696-JP-Bの一覧です。

初出現日 最終出現日 SCP-696-JP-B 概要
20██/03/27 20██/01/24 ハツカネズミ(Mus musculus) 計57体出現。いずれも出現から20分程度で消失。
20██/02/02 20██/08/09 アナウサギ(Oryctolagus cuniculus) 計4体出現。いずれも出現から60分程度で消失。
20██/10/21 20██/02/28 シバヤギ(Capra hircus) 計2体出現。いずれも出現から80分程度で消失。
20██/03/17 20██/03/17 アカゲザル(Macaca mulatta) 1体のみ出現。出現から130分程度で消失。
20██/05/06 N/A 潜水服を着用した男性 現在までに1度だけ出現。詳細は後述する事案報告を参照のこと。

上記一覧からも判断できるように、出現するSCP-696-JP-Bの質量・サイズが期間経過に伴って、段階的に増大していることが確認できます。また、出現しているSCP-696-JP-Bの大半がハツカネズミであり、遺伝子調査の結果、その大半が近交系実験用マウスであった点についても指摘が挙がっていますが、依然として関連性は不明です。それに加え、20██/05/06の人型実体の出現以降から、現在までSCP-696-JP-Bの新たな出現は確認されておらず、出現生物群に関する明確な傾向性を得るには至っていません。

SCP-696-JP-Aは20██/01/15、京都府██郡██町にて確保されました。当初は確保後に即時終了される予定でしたが、GoI構成員である疑い2が浮上したことで終了処置は延期され、調査完了までの間を昏睡状態下で勾留することが決議されました。この2ヶ月後、初のSCP-696-JP-Bの出現事象が観測され、その後もSCP-696-JP-Aの周囲で多発した生物出現事象を受け、現在のSCP-696-JPとしてのナンバリングが暫定的に付与されました。

なお、分類初期より、SCP-696-JP-Bの出現事象がSCP-696-JP-Aの現実改変能力に起因する可能性が挙げられています。しかし、出現事象中であってもSCP-696-JP-Aの情動的反応等には通常時との差異が見受けられず、依然として結論付けるに足る確証を得られていない状態です。

one_oneiros.png

SCP-696-JP-B-65、潜水服に似た装備を着用

事案報告696-JP: 20██/05/06、以前までの出現生物の傾向とは大きく異なり、初の人型SCP-696-JP-B(以下、SCP-696-JP-B-65)の出現が観測されました。

SCP-696-JP-B-65は旧式の潜水服に似た装備を身に着けており、出現直後にSCP-696-JP-Aへと何らかの危害を加えようと試みたため、警備員によって即座に取り押さえられました。以下は、拘束後に実施されたSCP-696-JP-B-65に対するインタビュー記録からの抜粋です。

インタビューログ696-JP - 日付 20██/05/06

対象: SCP-696-JP-B-65

インタビュアー: 阿久津博士

付記: SCP-696-JP-B-65は、自身の主張を聞くことを条件にインタビューへと応じました。また、強い抵抗を示したこともあり、対象は上記装備を身に着けたままの状態でインタビューを受けました。

<記録開始, 20██/05/06>

阿久津博士: それでは、いくつか質問いたします。

SCP-696-JP-B-65: 分かりました。

阿久津博士: まず、なぜ貴方は現れるや否や、ベッドで眠る女性に危害を加えようとしたのですか?

SCP-696-JP-B-65: 誤解されているようですが、私は別に危害を加えるつもりはありませんでした。ただ、あの女に目覚めてほしかっただけです。

阿久津博士: つまり、貴方がここへ現れた理由は、あの女性を覚醒させるためだと?

SCP-696-JP-B-65: その通りです。これも、全ては私たちが目覚めるために必要なことなのです。

阿久津博士: 貴方たちが目覚めるとは、それはどういう意味でしょう。彼女と同様、貴方も眠っている状態だと?

SCP-696-JP-B-65: ええ、きっと現実の私は今も眠ったままなのでしょう。そして、この私は夢の中の私。つまり、現実の私の、夢の中のアバターとでも言いましょうか。

[SCP-696-JP-B-65は数秒間沈黙]

SCP-696-JP-B-65: これから話すことは、きっと多くが理解に苦しむことでしょうが、それでもお話をしてよろしいですね?

阿久津博士: 構いません、続けてください。

SCP-696-JP-B-65: ではまず、あの女のことから話しましょう。いえ、正確には、あの女の潜在意識、夢の世界について。かつて、あの女の夢の中には、私のように他所からやってきた誰かの夢のアバター達で構成されたコミュニティーと都市が存在していました。数はせいぜい2000人ほど。特に何を目的に活動するでもなく、皆はただ夢の中での第2の暮らしを満喫していました。

阿久津博士: なぜ、わざわざ彼女の夢の世界へとやって来てまで都市の構築を? 現実での彼女の危険性を考えれば、あまり賢い考えとも思えませんが。

SCP-696-JP-B-65: 最初、夢の中でのあの女の姿は、空に浮かぶ電気クラゲでした。何も危険性はなく、ただボーっと空に浮かんでいるだけ。妙に居心地が良かったのもありますが、女の現実での大暴れを間近で見られる等もあり、物好きな連中もチラホラ集まっていました。しかし、あの女が目覚めなくなってから日を追う毎に、電気クラゲは自分が夢の中の存在であることを理解し始めていました。そして、私たちが気付いた時には身体が透き通ったドレスの女へと姿を変えていました。おまけに、現実のように夢を改変する力を持った上で。

[SCP-696-JP-B-65は項垂れて溜息を吐く]

SCP-696-JP-B-65: そして、女は突然に自らを女王と称し、「ここに自らの王国を作る」と宣言したかと思うと、私たちを自らの夢から出られぬよう閉じ込めました。その結果、異変に気付き早々に退去した連中を除けば、少なくとも1000人以上が夢へと囚われ、王国のためにと労働を強いられることになりました。

阿久津博士: では、現実において1000人近くの昏睡状態の人間が存在すると?

SCP-696-JP-B-65: おそらくはそうかと。もっとも、すでに半分近くは殺され、現実へと目覚めることも叶わぬ状態となっていることでしょう。しかし、私を含む幸運な数人は何とか女王から逃げおおせ、隠れ家で悪夢から目覚める手段を探し続けました。そんな夢の中、時間は嫌というほどにあったものの、現実に残した家族のことを想うと、少しも気が休まる暇はありませんでしたが。

阿久津博士: そうして貴方は、夢から目覚める手段として「現実で眠る女王を直接的に目覚めさせる」という手段を見つけ、実行したというわけですか。

SCP-696-JP-B-65: はい。思い返せば、実験には多くの苦労と犠牲を伴いました。しかし幸か不幸か、夢の中でも動物の調達には苦労しませんでしたし、現実での仕事柄、研究での動物の取り扱いにも慣れていました。そして今日、私は目的を果たすために夢の身でありながら、現実の地を踏むに至ったのです。

阿久津博士: つまり、今までに出現した動物も実験でしたか。では、その装備にも何か意味があるのですか?

SCP-696-JP-B-65: この身にとって、現実は余りにも濃すぎます。私自身もこの防護服がなければ、即座に現実性で押し潰され消えてしまうでしょう。しかし、犠牲になろうとも、私には目的がありました。無論、私の手で直接女王を目覚めさせることが成功できぬだろうとは考えておりました。そのため、私の主張を聞いていただきたいのです。

阿久津博士: お聞かせください。

SCP-696-JP-B-65: あの女を目覚めさせてください。ほんの少し、数秒でも構いません。その時間で、私たちは女王の夢から抜け出すことができる。私は、私たちはただ、目覚めたいだけなのです。愛する家族たちが待つ、唯一の現実へと。

阿久津博士: 善処しましょう。ところでこちらからも、もう1つよろしいでしょうか?

SCP-696-JP-B-65: 何でしょう。

阿久津博士: 現実の貴方について、いくつか情報をいただきたいのです。名前、年齢、住んでいる場所、家族構成、その他諸々を。貴方の証言が全て事実である、その裏付けを取りたいですので。

SCP-696-JP-B-65: 分かりました、私が王国に閉じ込められる前までの情報で良ければ、全てお話しします。私の名前、仕事、家族についてを。

[以下、重要性の低い内容のために省略]

<記録終了, 20██/05/06>

終了報告書: 更に30分程度のインタビューが行われた後、各種検査・調査のためにSCP-696-JP-B-65の了承の下で装備が取り外されました。その20分後、SCP-696-JP-B-65及びその装備は他のSCP-696-JP-B群同様、その場から霧散するようにして消失しました。


追記: SCP-696-JP-B-65が上記インタビュー中に証言した情報を基に、「██ ██」と称される人物に関する調査が実施されました。その結果、██ ██氏が実在する人物であり、その人物像や経歴、家族構成等もSCP-696-JP-65が証言した情報と完全に一致していることが確認されました。しかし、同氏は約1年前に交通事故で死亡しており、それまでの間も長期的な昏睡状態へと陥った事実は存在していませんでした。

その一方で、██夫人に対して実施された生前の██氏に関しての聴取では、同氏が数年前に一時的な熟眠障害の症状に悩まされており、その際に「寝つきが悪く、夢が見られなくなった」と主張していた、との証言が得られています。しかし、上記症状は1年程度で解消されており、それ以降も目立った異常は確認されていませんでした。それに加え、SCP-696-JP-Aが昏睡状態下へと置かれた20██/01/16から数日以内の期間において、約千人規模の集団昏睡事案が発生した記録も一切確認できていません。

現段階において、SCP-696-JP-Aを昏睡状態より覚醒させる試みは計画されていません。

特に指定がない限り、このサイトのすべてのコンテンツはクリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承3.0ライセンス の元で利用可能です。