SCP-718-JP
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投擲に用いられる予定のSCP-718-JP-1。

アイテム番号: SCP-718-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-718-JPは、プロトコル[どぜふすくひ]により、鰻より泥鰌に投擲物を置き換え、「泥鰌飛ばし」としました。SCP-718-JP自体は発見区域においてはほぼ無力化されていると見られますが、SCP-718-JP-2は現在も██体存在しており、財団によって確保されています。SCP-718-JP-2は、標準人型オブジェクト管理プロトコルにより管理されています。新たなSCP-718-JP-2が発見された場合、その健康上に問題が起こり得ないと判断された時に限り、Cクラス以上の記憶処理を行い治療して下さい。また、現在も周辺地域にてSCP-718-JPが執り行われている可能性は否めない為、同区域への監視を徹底して下さい。回収されている、及び回収された全てのSCP-718-JP-1はサイト-8117の特異性影響物保管ロッカーへ保管してください。地球外に存在するSCP-718-JP-1に対する処理は現在検討中です。

説明: SCP-718-JPは、主に山形県、██市を中心に、東北地方のごく一部地域で年始に執り行われている祭事の一種、「鰻飛ばし」です。SCP-718-JPは、20代~30代を中心とした年齢層の男性によって儀式が進められます。男性らは褌一枚になった姿で海際へと集まり、海へと突進します。掛け声を上げながら全身へ水を浴び、その後、用意された鰻を海上へ向けて投擲し、その飛距離を競うことで、その年における一番の年男1を決定します。

SCP-718-JPがいつその異常性を獲得したかは全く不明であり、加えて祭事そのものの発祥、起こりが何であるのかもわかっていませんが、最初にその異常性が発覚したのは、NASAにおける人工衛星の破損事案であると見られています。20██年1月3日、NASAにおいて利用されていた、一般に開示されていない秘匿衛星████の破損事故が発生。全く由来の分からない不明な破損により、財団へ調査の依頼が入りました。財団が██████により衛星を回収し、原因を直接調査したところ、「内部を超高速の物体が貫通したことによる破損が原因」と判明。「同衛星軌道上に対して地球から発射された何らかの物体がその要因である」と結論づけられました。更なる調査により、同日、山形県、██市、██海岸より何らかの物体が超高速で射出されていた事実が明らかとなり、衛星内部に残留していた粘性の液体より検出されたムチンと、SCP-718-JPに使用されていたニホンウナギ(Anguilla japonica)の分泌する粘液から採取されたムチンとが同一種のものであると判明した為、同祭事がSCP-718-JPであると決定づけられました。この際、投擲に用いられた鰻をSCP-718-JP-1とします。

SCP-718-JP-1は、投擲時に猛烈な加速が生じるにも関わらず、本来SCP-718-JP-1(鰻)が持つ質量分の物体が投擲された際と同様のエネルギーしか発散しません。このため、投擲者に対しての影響は無く、仮に何かしらの物体へ衝突しても大抵の場合そこで停止します。しかし、一度地球大気圏外に脱出すると、投擲時にSCP-718-JP-1が取得した運動エネルギーを、進行上に存在する物体に対しそのまま伝達することが判明しています。

SCP-718-JPにより投げられた中で分かっている内、木星の衛星であるガニメデに突き刺さっていると見られる鰻(以後、SCP-718-JP-1と表記)、及び金星に突き刺さっていると思われるSCP-718-JP-1が█体あります。SCP-718-JP-1は、投擲されたその瞬間からその形状を直線的に変化させ、多量の粘液2を放出するようになります。加えて一切の外的損傷や阻害を受け付けず、劣化や腐敗を生じなくなるため、宇宙空間においても複数のSCP-718-JP-1が存在していると見られますが、その回収に掛かるコストや、現在も維持し続けているとみられる速度3から鑑みるに、これらに対する回収作業は目処が立たないままです。なお、回収されたSCP-718-JP-1を検査した結果、生物学的には完全に死亡していることが判明しています。

SCP-718-JPは、参加した人間に対し、SCP-718-JP-1を投擲する瞬間にその膂力を急激かつ爆発的に上昇させる能力を付与します。これによる人体への影響は投擲時を除き一切なく、恒久的な変化も起こしませんが、最も遠方に投擲したと見られる人間に、「投擲されたSCP-718-JP-1周辺を常に観察可能な視野」を獲得する極めて局所的な遠隔透視能力を付与します。これらのの選定基準、及び、何が投擲者を「最も遠くに投げた人間」と判断するかは不明ですが、この能力を得た者をSCP-718-JP-2とします。この透視能力により、SCP-718-JP-2が何らかの害4を受けたとの報告は今の所報告されていません。この能力はCクラス以上の記憶処理によって治療が可能ですが、高齢者に対してCクラス以上の記憶処理は推奨されていない為、平均70代以上の体の弱い、あるいは疾病や衰弱等により死期が近いと見られるSCP-718-JP-2のみを収容しています。

財団では、19██年から20██年に至るまでにSCP-718-JP-2となった者を確保し、治療しています。その内高齢であるために記憶処理対象外に当たる一名へインタビューを行いました。記録は以下の通りです。

SCP-718-JP-2へのインタビュー記録

記録日時: 20██年██月██日
対象: SCP-718-JP-2
インタビュアー: 田辺博士(対象と同地方出身)

注:対象者の方言による訛りが強いため、適宜書き換えて表記しています。

田辺博士: それでは、これからインタビューを行います。よろしいですか?

SCP-718-JP-2: 大丈夫だ。

田辺博士: ではお聞きしていきましょう。SCP-718-JP、あー……ええと。あなた方の住む地域で行われているあの鰻飛ばし。これは一体いつから行われていたのですか?

SCP-718-JP-2: さぁ、自分も物心ついた頃からやってたんで、起こりとかまで詳しくは知らんね。

田辺博士: なるほど。貴方の生まれた頃からずっと?

SCP-718-JP-2: そうだ。俺の爺様の爺様の、そのまた爺様くらいからはやってるんじゃねぇかな。少なくとも、100年くらい前までの資料なら役場にあったはずだ。

田辺博士: ふむ。あの祭りには一体どういう意味が?

SCP-718-JP-2: そこいらの祭りと変わらんよ。一年の無病息災を祈願しながら、ついでに今年一年の年男を決めちまう。俺がこうなった時は割と当たり前だったな、一番凄かった奴には、鰻の幻が見えるってよ。

田辺博士: なるほど。祭事の始まりについての伝承をお聞きしたこと等は?

SCP-718-JP-2: 殆ど無い。ただ、爺様から、随分昔から鰻は投げるもんだ、って聞いたことならある。だからウチでも投げてたわけだ。

田辺博士: ははぁ……ええと、では、貴方が投げた当初はどのような風に?

SCP-718-JP-2: あんまり覚えとらんが、面白かったぞ。周り中皆が信じられん勢いで鰻を投げるんだ。海面を石ころみたいに跳ねたり、時々真上に飛んでって砂浜にまた突き刺さったりとかな。投げた後に戻ってきたもんは、良くないもんの象徴ってんで海に返してた。あとは、大体空の彼方にぶっ飛んでって見えなくなる。俺なんかすっ転んじまって、その拍子に真上にぶん投げちまった。もう周り中から大笑いされてな。

田辺博士: ……なるほど。そして、貴方には投げた鰻の像が見えていると?

SCP-718-JP-2: そうだ。その日の夜くらいから急に見え始めたかな。最初はビビったもんだが、今はそうでもない。それに、今も見えてるからな。真っ暗な中を、鰻が飛んでる。これが見え始めてもう50年くらいか。視界のどこにでもやれるんだが、ずっと見えてっから迷惑っちゃ迷惑だ。

田辺博士: そうなのですか。

SCP-718-JP-2: まあ、慣れると割と面白いもんだ。真っ暗な闇の中を真っ直ぐに、くるくる回りながら飛び続けてる鰻の絵面ってのはな。

田辺博士: ……なるほど。わかりました。インタビューを終了します。ありがとうございました。

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