SCP-720-JP
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アイテム番号: SCP-720-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-720-JP該当区域とその周辺は現在法的に財団私有地です。加えて、標準的カバーストーリー「危険海洋生物生息」を施行して近隣住民からは一切封鎖されます。また警察組織他の協力を得て、あらゆる航空機は該当区域をはっきり視認できるようなルートを通らないようになっています。万一付近半径1000m圏内の上空に航空機が入り込んだ場合、フロント企業並びに警察組織からの打診をもって速やかに退避させてください。

海洋調査事業者の施設に偽装されたサイト-8127には常にレベル3以上の職員1名を含む職員4名以上が駐在するようにし、交代制で24時間、監視用定点カメラを観測してください。封鎖区域への侵入者が確認された場合、異常行動が見られない者は直ちに退去させ、状況に応じて記憶処理を行ってください。何らかの明らかな異常行動や、オブジェクトの特性の発揮と見られる現象が認められた場合、レベル3以上の職員1名の許可を得て、隠伏しつつ侵入者に接近、観察する必要があります。但しその際、侵入者を拘束・無力化する必要が生じる状況も想定しなければなりません。

SCP-720-JP-1-1の捜索は依然続けられています。全世界の不審な漂着物の情報は検められ、SCP-720-JP-1-1や他のSCP-720-JP-1個体と思しきものの発見に際しては、発見場所直近の機動部隊と生物学に精通した財団職員が派遣され、財団施設にて精査されます。また、新たなSCP-720-JP-1個体の出現の際に備え、海岸沖合100m地点には財団規格の海洋生物捕獲用ネットが張られています。これは1ヶ月周期で点検してください。

web上に掲載される当該区域を撮影した写真・映像は、発見され次第直ちに削除および編集が為されます。財団のweb検索アルゴリズムを用いた関連語句検索は最低でも日に一度行ってください。なお、「敢えて掲載させ続け、被験者となり得る者を炙り出す」案は過去に一度日本支部理事によって否決されています。

当オブジェクトの収容・研究担当職員には、精神鑑定の結果、海や水辺への特別な執着がないと診断された者のみが割り当てられます。

説明: SCP-720-JPは、██県██市北西部に位置する██海岸の大部分の区画です。現在は岩礁、砂浜、浅瀬、海面を含む約[編集済]平方メートルがSCP-720-JPとして指定されています。また、報告書の以下の文章においてはSCP-720-JPに含まれるものとしてしばしば省略されますが、SCP-720-JP一帯から見える海の風景もSCP-720-JP-αとして指定されています。研究の進行によってはSCP-720-JP該当区域が縮小、SCP-720-JP-αの収容対象指定解除などといった定義縮小が想定されています。これは特性が発現したと見られる過去の案件の数が非常に少なく、実験も現状困難であるので、特性を持つ核となるものの正確な絞り込みが未だ完了していないためです。██海岸周辺の水質、土壌、空気中の含有物質、及び生息生物には、他の水辺や海岸のそれらと比して特筆すべき異常は無いとの検査の結果が出ています。

SCP-720-JPに、元来海や水辺、液体そのものに対する性的嗜好をもつもの(以下、被験者)が暴露すると、被験者はまずSCP-720-JPに対し強い性的興奮の感情を見せます。これが特性発現といえる現象か、単にこのオブジェクトが彼らにとってとても扇情的な水辺だということなのかははっきりしていませんが、後述の事件 720-2、及びその事後調査の結果から恐らく後者ではないかとの推測が立てられています。以下においては前述のような性的嗜好を、便宜上「水際性愛」と呼称します。
次に、被験者に急激な身体強度の異常上昇が見られます。質量保存法則を明らかに無視した体格巨大化と筋量増、皮膚の非常な硬化、手足の末端の水掻き状の被膜の生成、耳の後ろからうなじにかけての鰓として機能すると思しい器官の生成などがその現象として報告されていますが、これらについてもまだ十分なデータは得られているとは言えません。死亡後には濃い磯の臭いを発しながら溶けた藻のような液状の物体へと変化するため、捕獲し解剖することも絶望視されています。なお、肉体に同様の変化が認められた被験者はSCP-720-JP-1に指定されることになっています。
被験者のSCP-720-JP-1への変化現象が精神に影響することは、少なくとも財団の過去に観測できた限りの変化段階では、殆どないものと思われます。これは機動部隊と交戦中のSCP-720-JP-1-2の振る舞いや言動に明らかに十分な理性を見て取れることから推測されます。詳しくは下記の事件 720-2の報告、及びライブラリの録画記録を参照のこと。
最後に、SCP-720-JP-1は海に向かって直進し、そのまま海中へと姿を消します。SCP-720-JP-1は強化された脚力で水の抵抗もものともせぬ様で走り、戦闘能力も映像記録にもみられるように非常に高いと報告されており、また██海岸の地形上、約50m沖から先が急に深くなっていることもあり、捕獲は容易ではないと思われます。SCP-720-JP-1がその後何処へ向かうのかについては依然全く不明のままです。

SCP-720-JPは19██年、別のAnomalousアイテム収容任務にあたっていたエージェントの██ ██氏が偶然██海岸での小休憩を取っている最中に、突然衣服を脱ぎだし、上述のような肉体変化を見せつつ海へと突進し姿を消した事件(後に事件 720-1とされます)でその異常性が財団に知られることとなりました。同伴していた2名のエージェントらは彼の制止を試みましたが逃げ切られ、後日██海岸沖合5km圏内の海中の捜索と日本海に面した諸海岸の調査が行われましたが、現在に至るまでエージェント██は見つかっていません。親族へは業務中の海難事故により死亡、遺体は捜索されるも不明、との説明がなされました。事件は超常現象の一つとしてファイリングされ、現場周辺には低重要度の要警戒区域として監視カメラが設置されました。
しかしその後、20██年に事件 720-2が発生したことで財団日本支部上層部により重く見られ、事件現場とその近辺にアイテム番号とオブジェクトクラス:Euclidが与えられました。同時に、失踪したエージェント██はSCP-720-JP-1-1、事件 720-2にて確認された個体はSCP-720-JP-1-2に指定されました。
後にエージェント██や事件 720-2の対象の親しかった友人などへの聞き込みや、両名の日記、web上の個人記録の精査などを行ったところ、両名ともに水際性愛の傾向があったらしいことが発覚。特性が暫定的ながら解明され、現在の収容プロトコルが確立されました。

事件記録 720-2  - 日付20██/██/██

深夜02:30頃、定点カメラ監視員より現SCP-720-JP該当区域にて超常現象発現との通報があり、対亜人型オブジェクト戦闘に特化した機動部隊員10名が派遣されました。部隊到着時、体長3mほどの灰色の人型生物(後のSCP-720-JP-1-2)が海の中へとゆっくりと前進しているところでした。部隊は生体のままの捕獲を試みましたが、携行していた火器類や刃物類の多くが異常に硬い皮膚ゆえに無効であること、激しい抵抗に遭ったことを理由に断念。1名の死者、3名の重軽傷者を出しつつ苦闘の末生物を殺害しました。生物は死亡後、磯のような異臭を放ちつつ体組織を液状化させ、その殆どが海へと流出しました。僅かに採取された体組織のDNAは、数日前に失踪届が出されていた、当時東京都██市に在住していた██ █氏のものと一致しました。
事件発生当時の定点カメラの録画には、██氏と思しい女性が現れて海に腹部ほどまで浸かった状態で跪き、自慰らしき動作を行い、その十数分後に衣服が背から破れ、肉体が膨張する様が映っています。
また、戦闘した部隊による撮影では、SCP-720-JP-1-2が主に██海岸の美しい風景についてや、「何故自分と愛しい海とを引き離そうとするのか?」などといった趣旨の発言を繰り返しながら交戦する映像が映っています。これら二つの映像は共に財団のライブラリに保存されており、担当職員の権限があれば閲覧できます。

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