SCP-723-JP
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アイテム番号: SCP-723-JP
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夜のSCP-723-JP。

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-723-JPに指定される範囲は封鎖され、一般人の立ち入りは防止されます。SCP-723-JP自身が人気の多い土地に存在しており、また立地条件的にカバーストーリーの流布が行き届いていない人間がSCP-723-JPに立ち入ってしまうリスクを考慮し、SCP-723-JP指定区域周辺にプロトコル・ディクラインが行われ、また日本政府によるSCP-723-JP周辺地域への介入が行われました。

SCP-723-JP-2の現在の所在が特定され次第、財団による確保工作が開始されます。確保の手順については、真名博士の提言を参考に、複数の機動部隊により合同で行われます。

説明: SCP-723-JPは、██県██市に存在する███商店街(通称:「██街」)を、██駅前██口から████側方面に歩き抜けた際に発生する異常現象です。SCP-723-JPをこの方向に歩き抜けた人間(以下、SCP-723-JP-1)は、その人物が平均的な人間、特に日本人と比した場合に有している身体的、技術的、精神的特徴を一つ喪失します。どの程度・範囲の特徴がSCP-723-JPの影響下に置かれるかは不明です。

SCP-723-JPは、偶然SCP-723-JPの異常性の影響を受けたエージェント・新城の報告によって最初に確認されました。エージェント・新城はSCP-723-JPを歩き抜けた際に、自身が数十年来保有していた特徴のうち、「貧乏揺すり」を喪失し、またそれ以降数回に渡り財団指定された別のオブジェクトの調査のためSCP-723-JPを歩き抜けていました。エージェント・新城は4回目にSCP-723-JPを歩き抜けた後、彼の恋人に自身の「コーヒーの好み」が喪失していることを指摘され、財団に報告しました。

補遺-イ: SCP-723-JP実験記録

実験記録001 - 日付 2012/11/19

対象: SCP-723-JP

実施方法: Dクラス職員にSCP-723-JPを可能な限り往復させる。一往復ごとにDクラス職員をチェックし、どのような行動パターンが消失しているか、可能な限り確認する。

結果: 24回の往復の後、日が沈み実験の続行には目立つため実験を中断。確認されただけで以下の喪失が確認された。

分析:SCP-723-JPによって解消される特徴の選別…ランダム傾向。解消された特徴の確認…極めて困難。__東郷博士

実験記録002 - 日付 2012/11/23

対象: SCP-723-JP

実施方法: 5人のDクラス職員にSCP-723-JPを可能な限り往復させる。商店街の商店をカバーストーリー“不発弾”によって全員退避させ、10日間に渡り休憩を挟みながら往復させ続ける。

結果: インタビュー記録を参照のこと

補遺-ロ:インタビュー記録-723-JP-1-D-4

対象: SCP-723-JP-1-D-4

インタビュアー:東郷博士

付記: SCP-723-JP-1-D-4はすべての実験対象の中で最大の、184回の往復を行った。

<録音開始>

東郷博士: では記録を始めます。調子は良好ですか。

723-JP-1-D-4: はい、大丈夫です。よろしくお願い致します。

東郷博士: ……実験前と後で、どれくらい変わったと実感がある?

723-JP-1-D-4: 大きく変わりました。自分の嫌だったところ、気に食わなかったところが一通り消えて、格好だけでも真人間になれたような気がします。

東郷博士: そうか。ではちょっとしたチェックだ。ここに用意した紅茶に、レモンでもミルクでも、好きなように入れてくれ。

723-JP-1-D-4: わかりました。[対象は紅茶に何も入れず、そのまま飲む。]

東郷博士: ……ふむ。以前の好みと変わっているようだが……。

723-JP-1-D-4: そうでしたっけ。多分僕がこんなことになっているのは……今回の実験のせいだと思います。

東郷博士: そこが疑問なんだ。

723-JP-1-D-4: はい?

東郷博士: 我々はあれを「特徴を消す」道であると考えている。君に起きている異常は、概ね我々の予想通りのものだ。

723-JP-1-D-4: ……はあ。

東郷博士: 君にインタビューを行ったのは他でもない。君は……元々は女性だろう。なぜ「僕」を名乗る。

723-JP-1-D-4: 僕は正常ですよ。僕こそが何の癖もない、一般的な人間のはずです。

東郷博士: そうか。インタビューは以上だ。

<録音終了>

終了報告書: さらなる実験を要求する。SCP-723-JPの判断基準では、“女性であること”は特筆すべき身体的特徴であると考えられているようだ。__東郷博士

実験記録003 - 日付2012/12/03

対象: 723-JP-1-D-4
実施方法: 周辺地域を再封鎖。実施内容は実験002と同様。
結果: 前回実験と合わせ、移動回数が278回を数えた所で特筆すべき変化あり。以下に記述。

278回目のSCP-723-JP-1-D-4のSCP-723-JPの往復が完了した時点で、SCP-723-JP-1-D-4に特筆すべき変化がありました(以下、この段階まで進行したSCP-723-JP-1をSCP-723-JP-2と呼称)。
SCP-723-JP-2は移動が完了した時点で、同席していた研究員に間に挟まっていたDクラス職員着を溶かした状態で腕と腹部が癒着していることを指摘されました。この時点でSCP-723-JP-2は必要最低限の会話しか出来なくなっており、またその言語選択は限りなく単純かつ変化に乏しいものに変わっていました。

歩行、行動のパターンは完全にランダムに変化しており、250回を超えたころには自身の好みや意思などが徐々に薄れ、自我を失いつつあることが確認されています。同席していた██研究員により、実験は続行され、以降の往復において、SCP-723-JP-2は往復ごとに

  • 自らの口蓋
  • 両耳
  • 鼻腔
  • 臀部
  • 胸部

の、肉体的な特徴を一つずつ喪失していきました。これは、SCP-723-JP-2の特徴のうち、精神面、あるいは行動面での特徴が完全に喪失したことによるものと推測されています。

この時点でSCP-723-JP-2はこちらからの質問に一切反応しなくなり、職員の制止を振り切って往復を続けました。

実験記録003-2 - 日付2012/12/03

対象: 723-JP-2
実施方法: 上記同様。

結果:移動回数が295回を数えた所で、特筆すべき変化あり。

SCP-723-JP-2の295回目の移動が終了した瞬間、SCP-723-JP-2はSCP-723-JPから突如消失しました。この現象は、SCP-723-JP-2の、「日本に存在する」という特徴が喪失したためと推測されています。1時間後、メキシコの財団サイトより、SCP-723-JP-2がグアナファトの町を歩行していることが報告されました。8分後、SCP-723-JP-2はグアナファトの町外れまで歩行したのち、再び消失しました。その後幾つかの財団サイト、エージェントから、街中を歩行するSCP-723-JP-2が確認されました。SCP-723-JP-2の「日本に存在する」という特徴のみが喪失した結果、SCP-723-JP-2の位置については「地球上のどこかに存在する」という特徴に変化したと推測されます。

事件記録-723-JP-1:

対象:SCP-723-JP-2
数分〜数十分ごとランダムに変移を続けるSCP-723-JP-2の捕捉に財団は苦慮しました。2時間後、日本支部から公式に声明が発表され、実験の即時中断とSCP-723-JP-2の捕捉が命令されました。
SCP-723-JP-2がSCP-723-JPから消失してから3時間後、SCP-723-JP-2は日本の長野県塩尻に現れました。出現から14分後、SCP-723-JP-2は移動を完了し、再び消失しました。この際、付近に居た財団エージェントにより、一部始終の報告が行われました。

エージェント・田中の報告:

私が現場に到着した時には、ちょうどSCP-723-JP-2が国道を松本空港に向けて歩いているころでした。それの周囲に人影はなく、一般人がそれを見る可能性は低かったと思います。それはもう、Dクラス職員用着も来ておらず、また両足も癒着して、肉でできたボールのようにのようになっていました。
私はそれに追いつき、取り敢えず財団に報告したのち、動きを止めるため発砲しました。しかし弾は、SCP-723-JP-2には当たらず、すり抜けたようでした。
私は次に、バイクに入っていた網でSCP-723-JP-2を捕捉しようと試みました。しかしSCP-723-JP-2は網もすり抜けてしまいました。最後の手段として、私は手袋とライダースーツでSCP-723-JP-2が衣服につかないように気をつけながら、無理やりSCP-723-JP-2を押さえつけようと試みました。
私はSCP-723-JP-2に触れることができませんでした。何かに触ったような感触もありませんでした。単純にそれは私をすり抜けて、移動を続けました。
その時に、私は急に、おそろしい虚無感を感じました。私の行う全てが、私の何もかもが歯が立たないなんてことは、この仕事をしているとよく感じることではありますが、その時感じた虚無感は普段感じるようなそれとは比べものにならないほどでした。
おそらくそれが、あれの持っていた異常性であり、また私はあれに触れたせいでその影響を受けたのだと思います。
私は何かを考えることも、何をすることも出来なくなって、その場にうずくまりました。吐き気も何もありません。ただ単純に、無駄だという気持ちだけがありました。俺は何でもなく、何か特別な存在なわけでもなく、何一つ出来ないでくの坊だという気持ちだけがありました。うぬぼれていたわけではありません。ただ自分には何事も為すことができないのだというアイデンティティの破壊と、虚無感だけがありました。

SCP-723-JP-2はさらに1時間後、別の街にて移動を行ったのち、地球上から消失しました。この現象は、SCP-723-JP-2の「地球に存在する」という特徴がさらに消失したか、あるいは「我々の次元に存在する」あるいは「視覚的に認知出来る存在である」などの特徴のいずれかを喪失した結果でであると推測されています。以降、その存在は確認できていません。

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