説明: SCP-775-JP-Aは、SCP-775-JPの服用者の子供が変容することで発生する異常実体であり、実験記録775-JP-8にて確認された症状を維持したまま、衰弱せずに生存し続けます。変容のメカニズムは、発生事例の少なさから解明されていません。SCP-775-JP-Aへは、これまでに異常性を回復させる試みをはじめとした、様々な実験が行われましたが、いずれも新たな成果を得るに至っていません。
SCP-775-JP-Aは現在までに、大木隊員と、その妻との間に産れた子供がSCP-775-JP-Aに変容した事例1件のみで存在が確認されています。詳しくは下記、観察実験報告を参照して下さい。
付記: 大木隊員の妻である大木 真由子(旧姓:秦 真由子)は、財団フロント企業に勤めていた一般女性である。SCP-775-JPの服用者と健康な成人女性の間に産まれた子供を観察し、子供の先天的な異常性の有無を観察する。この観察実験に実施に際し、大木 真由子氏をセキュリティクリアランスレベル1の職員として雇用した上で、大木夫妻に観察実験の実施を宣告し、趣旨を説明した。大木隊員は理解を示し、最大限の協力を約束をした。
観察記録775-JP-19██年3月5日
対象: 真由子氏が妊娠している胎児(大木 彰良)
対象の年齢: 妊娠4か月
報告: 一般的な胎児の成長速度を大きく超えている、妊娠4か月の時点で真由子氏は激しい胎動を訴えている。
分析: 出産後より観察を開始する予定でしたが、既に異常な事象が発生しています。このペースだと妊娠6か月にして出産を迎えると思われます。胎児は男性であり、大木隊員は子供に「彰良」と命名する予定です、当報告書でも観察対象を「大木 彰良」と記名します。
追記(5/11): 妊娠6か月にして出産。観察対象は体重3,112gの健康な状態で産まれた。経過観察では、母子ともに健康な状態である事が確認されている。
観察記録775-JP-19██年11月18日
対象: 大木 彰良
対象の年齢: 0歳(生後6か月)
報告: 生後6か月で歩行に成功した。
分析: 同年代の0歳児であれば四つ這い歩きをしている頃ですが、観察対象は凄まじい成長を見せています。現在、顔面の器官に関する異常は発現していないため、大木隊員はポジティブに捉えているようです。今後も長期的な観察が必要です。
観察記録775-JP-19██年11月2日
対象: 大木 彰良
対象の年齢: 1歳
報告: 言語を習得し始めた。
分析: これに関しては一般的な1歳児と大差ありません。知能面での異常は無さそうです。
観察記録775-JP-19██年5月19日
対象: 大木 彰良
対象の年齢: 3歳
報告: 重い荷物が運べる、鉄棒で大車輪を行うなど、既に同年代の児童に比べ高い身体能力を持つ事が確認された。また、大木隊員より、観察対象の食欲が凄まじいと報告があった。
分析: 既に無視できないレベルの身体能力の上昇と、それに伴う代謝の上昇が見られます。顔面の器官に関する異常は未だ確認できませんが、現状の放置は危険と判断し、観察対象をセクター-81██へ移送しました。以降観察対象の行動範囲はセクター-81██内広域収容区画に限られます。この処置に対し、大木隊員は酌量を求めましたが、棄却されました。
観察記録775-JP-19██年7月1日
対象: 大木 彰良
対象の年齢: 5歳
報告: 観察対象が大木隊員にじゃれついた際、大木隊員が肋骨を骨折する怪我を負った。
分析: 観察対象は子供ですので、今後も不慮の事故が発生する可能性があります。今後、観察対象に接触する際は、防護アーマーを装備する事が義務付けられます。幸い、苦しむ大木隊員の様子を見て、観察対象が暴力に対しトラウマを負った様ですので、同様の事故が発生するリスクは多少低いと予想されます。
観察記録775-JP-19██年6月18日
対象: 大木 彰良
対象の年齢: 7歳
報告: 観察対象へ赤田式身体能力検査テストを受験させた所、460点を記録した。
分析: 検査テストは長澤博士の提案により、現状の身体能力を数値で記録する目的で実施されました。大人と同等、或いはそれ以上の身体能力を有していると言えるでしょう。知能面は一般的な7歳児と同等レベルを有していますし、このまま現状の異常性以外の異常性が確認されなければ、最終的に機動部隊員への雇用を検討できると思います。また、SCP-775-JPに関してもThaumiel化を目指した研究の提案が可能だと思います。
観察記録775-JP-19██年3月1日
対象: 大木 彰良
対象の年齢: 9歳
報告: 観察対象の右目の位置が、僅かではあるが変動している。
分析: 財団の医療センターで再度検査を行いましたが、確かに右目の位置が外側に変動しています。SCP-775-JPの異常性を発現している親から生まれた子供は、SCP-775-JPの症状をそのまま引き継いでしまうようです。また、当該事象を受け、大木隊員の精神状態も大きく悪化したため、臨時のカウンセリングを行いました。
観察記録775-JP-19██年12月5日
対象: 大木 彰良
対象の年齢: 11歳
報告: 観察対象の右目の歪みが激しくなりつつある。観察対象の精神状態に悪影響を与えており、セクターの設備を破壊するなど、暴力的な行為が報告されている。
分析: 観察対象を隔離区画へ移送し行動を制限します。隔離に伴い、大木隊員と大木真由子と長澤博士のみ面談が許可されています。大木隊員が、同じ症状を持つ者として観察対象へのメンタルケアを行っていますが、成果は確認できていません。
追記(4/1): 大木隊員が19██年4月1日付けで副隊長に昇進。以降の報告書においても、大木 敦を大木副隊長と呼称する。
観察記録775-JP-19██年1月5日
対象: 大木 彰良
対象の年齢: 13歳
報告: 観察対象の、顔面の器官の位置全てが大きく歪み始めた。観察対象が自傷行為を始めたため、財団によって拘束された。
分析: 身体能力が大人を遥かに超えていても、精神状態はまだ中学生です、落ち着くまでは拘束を続ける必要があります。観察対象に対し大木副隊長によるメンタルケアが行われています。
追記(1/19): 観察対象の精神状態が安定した為、施された拘束を解放した。経過も安定している。
観察記録775-JP-19██年2月22日
対象: 大木 彰良
対象の年齢: 15歳
報告: 観察対象の容態が急変、意思の疎通が不可能になり、セクター-81██の外壁を粉砕し脱走した。この事案を受け、財団は機動部隊い-13("チェイサー")に対し出撃命令を発令、およそ30分後に鎮圧され確保された。また、顔面の器官に関する異常において、顔面の器官の位置が常に、顔面上を変動し続けているのが確認された。
分析: 観察対象の症状は、実験記録775-JP-8におけるD-852の状態に酷似している様に感じます。あの時と違うのは観察対象が衰弱死しない事です。異常な身体能力を長年運用してきた事により、肉体が異常性に耐えれるほど強靭になっている、と考えられます。明日、この状態の観察対象の処遇決める協議を行う予定です。
観察記録775-JP-19██年2月23日
対象: 大木 彰良
対象の年齢: 15歳
報告: 観察対象をSCP-775-JP-Aに指定、以後SCP-775-JP-Aをセクターー81██の人型収容室へ収容する。
付記: この決定について、大木副隊長と真由子氏は納得しています。両名に対し、記憶処理が薦められ、真由子氏は記憶処理を希望しましたが、大木副隊長はこれを拒否しました。
財団は研究チームに対し実験の終了を勧告、以降同様の観察実験、並びにSCP-775ーJPを利用した実験は許可されません。
追記(2/24): 上記処置に伴い、特殊収容プロトコルにSCP-775-JP-Aに関する記述を追加し、更に経過観察報告に関する文書をセキュリティクリアランスレベル3相当の文書として、閲覧制限を設定した。