SCP-777-JP
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事象777-JP開始から5分後に顕現した鳥居。

アイテム番号: SCP-777-JP

オブジェクトクラス: Keter

特別収容プロトコル: SCP-777-JPは財団の特別医療房に収容されます。常にSCP-777-JP専任の心臓血管外科医6名及び医療エージェント12名、秘儀エージェント8名がSCP-777-JPの治療と看護、特異性を安全に消失させる研究を行います。SCP-777-JPの延命は最優先研究対象とされます。SCP-777-JPが財団の収容に対して非常に従順であること及びその特異性のため、SCP-777-JPの生命に関して悪影響を与えるであろうあらゆる行動をSCP-777-JPに対して行う場合、常にレベル5クリアランスを保持する職員3名の許可を必要とします。

SCP-777-JPの拍動障害によって起こる事象777-JPへの対抗のため、拍動障害が起こった時点で儀式手順777(道反)を行います。儀式手順777は以下の様に行います。

  1. 儀式に参加する収容スペシャリスト8名は全員男性であり、かつ正階位以上を持つ神職でなければなりません。また、必ず明階位を持つ収容スペシャリスト2名が参加する必要があります。拍動障害が起こった時刻から、収容スペシャリストは24時間の間潔斎し、また神道の定めるケガレにけして接触しないようにします。その後収容スペシャリストは水垢離を行います。そして、無紋の白狩衣・無紋の白差袴・烏帽子を着、儀式に臨みます。
  2. 収容スペシャリストは以下の物品を用意します。鶴の面、大岩の面、葡萄、筍、桃の実3つ、和太鼓、笙、鉦。
  3. 収容スペシャリストのうち明階位を持つもの1名はプロトコル62に従い、SCP-777-JP-A-2群の前で、鶴の面を付け、舞い、文言5を唱えます。(この鶴の面を付けたメンバーをこれ以降『"鶴"』と表記します)。正階位を持つ収容スペシャリストはプロトコルに従い、上陸したSCP-777-JP-A-2群に聞こえるよう、正確に和太鼓、笙、鉦の楽器を演奏してください。
  4. "鶴"は、文言8を伝え、SCP-777-JP-A-2群の前から、SCP-777-JP-A-1群の上を通り逃走します。そして、SCP-777-JP-A-2群に対して、葡萄、筍、桃の実を正確に7分の間隔で投擲する必要があります。この時、SCP-777-JP-A-2群に"鶴"が捕まえられた場合、儀式手順777は失敗となり、手順を最初からやり直さなければなりません。この逃走の間、明階位を持つもう1名の収容スペシャリストはプロトコル63に従い、大岩の面を付け、舞、文言12を唱えます。(この大岩の面を付けたメンバーをこれ以降『"大岩”』と表記します)。
  5. "大岩"は”鶴”とSCP-777-JP-A-2群の間に立ちふさがり、文言16を唱えます。
  6. SCP-777-JP-A群が消失したのを確認した上で、”鶴””大岩”は面を付けたままで、全ての儀式手順777に参加したメンバーは水垢離を行います。

これらの儀式手順が正しく行われないままSCP-777-JP-A群が事象777-JPを完了させたか、SCP-777-JPが何らかの理由で死亡した場合、即座にSCP-777-JPを日本海へと遺棄し、海域777-JPから半径250km以内に存在する全ての財団施設は閉鎖され、手順777("水面の月は真の月なり")が執行されます。

説明: SCP-777-JPは、極端に高齢である人間とタンチョウヅル(Grus japonensis)が入り交じっているように見える存在です。皮膚はケラチンの変化した鱗状のものに変化し、全身の体毛は羽毛へと置換されています。唇は嘴状に変形・硬化しています。両腕は小指が極端に延長され、翼へと変化していますが、筋力不足により飛行は困難であり、数十メートルの滑空程度しか行えません。SCP-777-JPのその特性ゆえ、SCP-777-JPは発声や複雑な道具の使用が極めて困難になっています。SCP-777-JPはまた、198█年以降慢性的な心不全を患っています。

SCP-777-JPはその重篤な奇形にもかかわらず、高い身体能力及び野外活動に関する知識を有しており、野外、特に日本国内の山岳地帯において非常に高い生存能力を持っていたようです。蒐集院による収容の際、自身の肉体の変化に合わせて設計・製作された、複数の道具を所持していました。しかしながら現在では慢性心不全及び加齢の進行によって激しく衰弱しており、病室からほとんど移動することができません。

SCP-777-JPの最大の特異性はその心臓部分にあります。左心室の内部に、直径█.█cmの翡翠の球体が癒着しています。このような位置に異物があることは循環器に絶大な影響を与えるにもかかわらず、この球体は血液の流れを阻害していません。SCP-777-JPの心臓が正常に拍動している間、それを除いてSCP-777-JPに特筆すべき異常は存在しません。

ですが、SCP-777-JPの心臓の拍動に障害が起こった時にその異常性は発揮されます。SCP-777-JPの心臓の拍動障害に合わせ、北緯[編集済]、東経[編集済]の海域(以下、海域777と表記)に海底地震及び、海底の盛り上がり、それに合わせた海水面の上昇が起こります。これはSCP-777-JPの拍動障害の重篤さに比例して激しくなります。それと同時に、海域777内に、多数のエリファスモデル型霊素生命体(以下、SCP-777-JP-Aと表記)及び物質化した霊素が出現し、SCP-777-JPの元に向かって移動しながら事象777-JPを発生させます。SCP-777-JP-Aは既存の海棲生物に似た外見(これ以降SCP-777-JP-A-1群と表記)か、あるいは既存の海棲生物を霊長類に似せた後直立させ、神道における婚姻の儀式に用いられる服装を着せ、また婚姻の儀式に用いられる道具を持たせたような姿(これ以降SCP-777-JP-A-2群と表記)をしています。これらの個体は全て、儀式手順777-JPが終了するか死亡すると消失します。対霊素効果のある呪術攻撃及びnPDN作動による強制顕現後の物理的攻撃はSCP-777-JP-Aに有効ですが、新たなSCP-777-JP-Aが次々と出現するため効果は比較的薄いものとなっています。加えて、SCP-777-JP-Aに対する攻撃に対してのリスクが大きいことからSCP-777-JP-Aに対しての攻撃は禁じられており、儀式手順777による収容を行う必要があります。以下は時間経過による事象777-JPの移り変わりを表記したものです。より詳細なものを知りたい場合は、セキュリティクリアランス3以上の権限が必要となります。

事象777-JP開始からの経過時間 結果
約5分 海域777内の海底に物質化した霊素によって作られた鳥居が出現する。
約15分 鳥居の向こうから大量のSCP-777-JP-A-1が出現する。
約2時間40分 海域777内の海底にSCP-777-JP-A-1で出来た"道"が作られる。
約3時間 鳥居の向こうからSCP-777-JP-A-2が行列を作り出現する。SCP-777-JP-A-2群はSCP-777-JP-A-1によって作られた"道"の上を歩行して移動する。
約16時間後 SCP-777-JP-A-1群による"道"が上陸する。
約26時間後 SCP-777-JP-A-2群が上陸する。
約45時間後 鳥居型の物質化霊素から、複数体のSCP-777-JP-A-2群によって運ばれ護衛される、物質化霊素によって作られた駕籠が出現する。
約104時間後 SCP-777-JP-A-1群による"道"がSCP-777-JPの元に到達する。

現在これ以降に起こる事象777-JPの内容を予測したものはセキュリティクリアランス4/777-JPのみに開示されます。

現在の財団のシミュレーションでは、事象777-JPが完遂した場合、以下のXK-クラスシナリオが起こると予測されています。

  • 約7時間の間、制御不能な神格が完全顕現し活動を行う。対象神格を信奉しない存在のうち、特に対象神格に対しての涜神行為とみなされる行動を行ったものは、その血縁者を含め全員が神格による攻撃的改変の対象となる。
  • 海域を中心とした約250km内の陸地は全て沈下し、海底となる。
  • 全人類は神格の姿を知覚したことにより致命的な精神的・ミーム的影響を被る。
  • 残存した全人類のうちおよそ16%はミーム汚染され、出現した神格の信奉者となり、既存の超常組織に対して積極的抵抗を試み始める。

手順777により最小限に影響を抑えられた場合、陸地の沈下範囲は6%、神格による攻撃的改変の被害は14%減少すると考えられています。

補遺1: 以下は、蒐集院による初期収容時に、SCP-777-JPが所持していた物品の記録です。原文は漢文で書かれていましたが、プロトコル作成にあたり書き下しています。

  • 長弓。樫、膠、鹿の腱が具材。くちばしを用いて射ることが可能なり。
  • 鹿革の箙。矢は6本。矢の先には骨の鏃が付けらるる。
  • 鉈。翼に合わせ、握りに工夫あり。
  • 渋染の頭巾。
  • 鹿皮の着物、腰巻。
  • 干した猪と鹿の肉わずか。
  • 干し魚2匹。
  • 塩。
  • 鉄の鍋。いずこよりか盗み出せるものやも。
  • 火口。
  • いずこかの土地の風土記か、あるいは古事記のうつしか。古い紙に筆で「海幸と山幸」の一部分があり。

補遺2:1946年、財団による初めてのSCP-777-JPへのインタビュー。当時SCP-777-JPは老化こそしていたものの、慢性心不全を発症してはいませんでした。SCP-777-JPの会話には、SCP-777-JPの発声に激しい訛り及び発語の障害があるため、筆談によって行われました。当初、SCP-777-JPは、加齢の進行が極めて遅い、人と鶴の入り混じったような姿を持つ人型存在であると蒐集院より情報を聞かされていました。

インタビュー記録
担当者: カウフマン博士
対象: SCP-777-JP

カウフマン博士: SCP-777-JP。あなたは我々が新たに管理することになったことは知っているか。

SCP-777-JP: しかり

カウフマン博士: では、これからあなたに対して質問がしたい。あなたはどうして、そんな姿になったのか。

SCP-777-JP: とこよへ ゆきて こちらへ かえりしゆえ

カウフマン博士: とこよとは何か。

SCP-777-JP: うみのそこ ひめのおる ふじのくに

カウフマン博士: そこで何があったのか。

SCP-777-JP: ひめと ちぎりをばむすび わがみと あがみに たまを うめ たがいに えいごうに めをとで あれと われ えいごうを えむ

カウフマン博士: その結果あなたはそうなったのか。

SCP-777-JP: いな わがあにと あにがたみへ こらしめを おこなへり われひめをよばいたまへば うしお わがあにをのみ もどれといへば うしお ひきて わがあに われのもとにぬかずきぬ

カウフマン博士: しかし、あなたは老いているではないか。

SCP-777-JP: われ ちからをもちいて たみをひきい あきつしまの おうとなり ひめを むかえに とこよへと われゆきて ひめが やひろわにでありしこと しり おそれてにげり やひろわに われにかしりをばかけたり なんぢにげようとも なんぢとこよのものなりと あがとこよにきしとき われちのそこよりおきあがりて なんぢをむかえん、わがてのもの なんぢをむかえにゆかんと

カウフマン博士: それで老いるようになったと?

SCP-777-JP: しかり ゆえに われ ちとせにいきるため つるになりぬ しかし かめはよろづのよをいきるとききぬ ましてや やひろのわには いつまでか それよりも はるかに

付記:これ以降SCP-777-JPは疲労を理由に筆談を拒否した。SCP-777-JPによる後半の文字は激しく震えていた。

補遺3: 蒐集院によるSCP-777-JP-Aについての記録です。1944年、日本に対して米軍が無差別爆撃を行った際、SCP-777-JPは負傷し大量に出血、その結果拍動が弱まったことが原因でSCP-777-JP-Aが出現したと考えられています。

常世ノ神、海ヨリ顕ル。荒御魂ナリ、ト神祇官ヨリ報告。
砲撃ス。
サレドモ魚ドモニ、砲ハ効カズ。
火炎用イレド、効力顕サズ。
故ニ、巫蠱、魔道、陰陽道、神道ニヨル攻撃行ヘリ。
咒、式、鬼ニヨリ、魚ドモ死ス。
シカラバ、我ラ、荒神ヲ討滅サントス。
陰陽師、式鬼打チテ、護法童子ノ剣デ、駕籠ヲ突カン。
我ラ皆悉ク死ス。
陰陽師、魔道師、巫蠱師、皆悉ク、神罰受ケ、マタ、ソノ親、子、孫、三代ニ至リテ、ヤハリ悉ク神罰受ケン。
皆、陸ニ有リテ溺レ、生キテ肉腐リ、蛆ト鰻ニ肉貪ラレ、サナガラ九相ノ噉相ガ如シ。
神祇官、神降シテ、何故オ怒リデイラツシヤルカ、ト、問ヘバ、柱応ヘテ曰ク。
我竜宮ノ主ナリ。我、男ト共寝シ、竜宮ヘ迎ヘドモ。
男、我ガ姿見テ、我ヨリ逃ゲン。
男、鶴ニ代リテ、我ヨリ逃ゲン。
我、ソガ心ヲ聞キ、ソガ常世ヘ訪レシ故、再ビ契ラン。
今コソ、ソガ霊、我ガ物トナラン、ト。
我ラ、伊邪那岐ト伊弉冊ニ倣ヒテ、常世トノ境封ズ。
永劫ニ鶴ヲ崩スベカラズ。

これ以降SCP-777-JPは蒐集院により最高待遇を受けています。また、この記録から、財団は儀式手順777-JPを作成しました。

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