アイテム番号: SCP-805-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-805-JPはサイト-81██の収容ロッカー内へと保管されます。一日に二回、担当の職員は専用の白色の防護服を着用し、決められた時間にSCP-805-JP-1およびSCP-805-JP-2の状態を観察します。この際に必要が見受けられた場合はSCP-805-JP-1と会話を行ってください。会話を行う場合、10分以内に済ませます。その後、ロッカー内へと再度保管され、施錠されます。担当となる職員は観察ごとに交代し、同職員が長期間SCP-805-JP-1およびSCP-805-JP-2と触れ合うことがないようにしてください。
説明: SCP-805-JPは、一般的なA5サイズの無地のダブルリングノートです。ノートは発見した時点で67枚の用紙が綴られていました。SCP-805-JPは一般的なノートとしての機能を有していますが、筆記することと用紙を破りとること以外の影響を受けることはありません。
SCP-805-JPに綴られている用紙には、用紙内に描かれた鉛筆(以下、SCP-805-JP-1)と、同様に描かれている消しゴム(以下、SCP-805-JP-2)が存在します。これらは未知の染料によって描かれており、SCP-805-JP-1およびSCP-805-JP-2は、用紙内をすべるようにして移動します。また、その際にページ間の移動を行うことも可能です。これらの存在は知性および自我を持っていることが確認されており、特にSCP-805-JP-1はページ内に文字を書き起こすことで積極的に会話を試みようとします。また、SCP-805-JP-2は、油性ペンやボールペンで書かれた文字であっても消すことができるようです。SCP-805-JP-1およびSCP-805-JP-2は、SCP-805-JP外部の用紙へと移動することはできません。
SCP-805-JP-1もしくはSCP-805-JP-2が描かれているページを破りとった場合、破りとったページからは異常性が失われます。また、破れたページ内のSCP-805-JP-1およびSCP-805-JP-2は消失し、SCP-805-JPの一番端の用紙内にそれぞれ再出現します。この際、SCP-805-JP-1およびSCP-805-JP-2は強い苦痛を訴えます。SCP-805-JPの用紙数には限りがあるという点と、SCPオブジェクト保護の観点から、これ以上のページ数減少をもたらす実験は現在停止されています。
SCP-805-JPは、███県の███高校に潜入していたエージェントが「相手のいない交換日記」という噂話に着目し、当時SCP-805-JPを利用していた女子生徒数人からの証言を得た結果発見されました。SCP-805-JPが回収された後、所有していた女子生徒たち、及びその周辺の人物には記憶処理が施されました。
以下は、SCP-805-JP-1およびSCP-805-JP-2の両方、もしくは片方の存在するページに文字を書き込むことで行ったインタビュー記録です。
インタビュー記録-805-1
対象: SCP-805-JP-1
インタビュアー: ██博士
付記: ██博士はボールペンを使ってSCP-805-JP内へ文章を書き込んだ。
<記録開始>
██博士: おはよう、SCP-805-JP-1。
SCP-805-JP-1: おう おはよう 誰かさん。
██博士: 今日は質問があるのですが、よろしいでしょうか?
SCP-805-JP-1: いいよいいよ 話したくて仕方なかったんだ。
██博士: あなたはいつごろからそのように活動できるようになったのですか?
SCP-805-JP-1: あぁ うーん いつかは分かんねぇけど 随分前のことだよ。
██博士: ありがとう。 では、あなたはどの程度まで周辺の様子を認識しているのですか?
SCP-805-JP-1: 俺から見えるとこまで。
██博士: もっと具体的にお願いします
SCP-805-JP-1: んー このノートを開いてるときなら あんたの顔も見えるよ。
██博士: そうですか。 ではコレは見えますか?[ノートの前でボールペンを振る]
SCP-805-JP-1: 見えてるよ。 こんな感じだろ?[ページ内に棒を振っている手の絵を描く]
██博士: ありがとうございます。それで……
SCP-805-JP-1: だけど関心しないなぁ……。
██博士: ……何がです?
SCP-805-JP-1: 俺の目の前で 俺の家族をブンブン振ってることだよ。
██博士: 家族とは、このボールペンのことですか?
SCP-805-JP-1: そう、ボールペン。 俺もそいつも文字が書けるんだ つまり家族だろ。
██博士: なるほど、今後控えることにします。
SCP-805-JP-1: そうしてくれ。 あ、そうだ
██博士: なんでしょう?
SCP-805-JP-1: 今後も俺とは話してくれよ。 話せるやつがいないとつまらないからさ。
██博士: SCP-805-JP-2は話し相手にはならないのですか?
SCP-805-JP-1: なんて? あー、もしかしてあいつのこと? あいつは無口だから会話なんて無理だよ。
██博士: そうですか。 それではそろそろ私は失礼します。
SCP-805-JP-1: もう終わり? またきてくれよ、今度はもっと凄い絵描いてやるからさ。
<記録終了>
終了報告書: SCP-805-JP-1は非常に人間らしい会話を行います。また、この後SCP-805-JP-2によって文章が全て削除されました。
以下のインタビューは、SCP-805-JP-1とSCP-805-JP-2がお互い逆側のページの端にて膠着している様子が確認された際に行われました。
インタビュー記録-805-2
対象: SCP-805-JP-1
インタビュアー: ██博士
<記録開始>
██博士: なにかあったのですか?
SCP-805-JP-1: おう 誰かさん いや なんでもないよ。
██博士: SCP-805-JP-2と上手くいっていないように見えますが
SCP-805-JP-1: ……そうなんだよ 聞いてくれよ なあ。
██博士: どうぞ
SCP-805-JP-1: あいつ、俺があんたらに見せるために描いた絵を消しやがったんだ!
██博士: どのような絵ですか?
SCP-805-JP-1: あんたらの中の誰かさんの似顔絵だよ。
██博士: そう ですか。 それで何故消されたのですか?
SCP-805-JP-1: わかんねぇよ……あいつ何もいわねぇし。 まぁ、あいつがいないとページ中俺の字で埋まっちまうから、いなきゃいけないやつだってのは分かってんだけどよ。その、俺にだって残しておきたいものがあるわけよ。でもあいつはいつも消しちまうんだ。
██博士: 過去にも何度かあったのですか?
SCP-805-JP-1: うん 正直慣れてきてるけどさ。 あんたたちからも あいつに何か言ってやってくれよ。 そしたら仲直りしてやるから。
██博士: 分かりました。 それではそろそろ失礼します。
SCP-805-JP-1: おう。 頼んだぜ。 誰かさん……どこいったのかなぁ。
<記録終了>
終了報告書: SCP-805-JP-1とSCP-805-JP-2は、仲違いを起こすことがあるようです。また、SCP-805-JP-1はこの後しばらくの間、似顔絵の元となった個人の存在を気にしているようでした。
以下のインタビューは、インタビュー記録-805-2の後にSCP-805-JP-2に対して行われたものです。この際、██博士は対象がページ内の染料を消しとることができることに着目し、ページの半分を黒く塗りつぶし、もう半分に文章を書き込むことで会話を試みました。
インタビュー記録-805-3
対象: SCP-805-JP-2
インタビュアー: ██博士
<記録開始>
██博士: 私の言葉がわかりますか?
SCP-805-JP-2: [黒く塗りつぶされたページ周辺を移動している]
██博士: 理解できるなら、そこを使って表現してみてください。
SCP-805-JP-2: なに
██博士: [少し息を整えて筆を持ち直す]あなたは何故、彼の描いた絵を消したのですか?
SCP-805-JP-2: ひとの絵だったから
██博士: どういうことですか?
SCP-805-JP-2: 彼には必要ないの
██博士: 必要ないとは?
SCP-805-JP-2: うるさい
██博士: [十分な黒い面積が無くなったため、再度塗りつぶす] 答えてください
SCP-805-JP-2: お前だってあいつらと同じにしてやりたいくらいよ
██博士: ……あいつら、とは?
SCP-805-JP-2: ここにいたボールペンにマジックペン、修正液にテープ、定規も分度器も、彼の関心を引くやつ全員。
██博士: ……それは、まさか
SCP-805-JP-2: あなたの名前は何?
██博士: [SCP-805-JPから離れ、部屋から退室]
SCP-805-JP-2: 彼が描いたら消してやるから……。
<記録終了>
終了報告書: SCP-805-JP-2の発言は注目すべきものです。もしもSCP-805-JP-2の言ったことが事実だとするのなら、本来SCP-805-JPには、他にもいくつかの筆記用具が描かれていたのだろうと推測されます。
仲違いしているSCP-805-JP-1とSCP-805-JP-2
補遺: 後に███研究員の部屋から、胸部から頭部に当たる部位の"白色部以外"が削りとられた███研究員の遺体と、周囲に散乱した消しゴムの"くず"のようなものが発見されました。また、███研究員の活動履歴を確認した結果、インタビュー記録-805-2の前日にSCP-805-JP-1と会話を行っていたことがわかりました。この出来事によってSCP-805-JP-2はSCP-805-JP内部に描かれた対象を"削除"することができるのだと判明し、同時に、白色部及び描かれていない対象を"削除"することは出来ないということも発覚しました。以降、SCP-805-JPを扱う職員は顔、及び全身を覆う専用の白色の防護服を着用するように義務付けられました。
ページリビジョン: 5, 最終更新: 10 Jan 2021 16:31