SCP-820-JP
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アイテム番号: SCP-820-JP
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収容中のSCP-820-JP。

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-820-JPは、常に移動を続ける無人潜水艦内部に作られた特別収容室内に収容されます。SCP-820-JPは定期的に地上に返され、状態を検査されます。地上にある間、SCP-820-JPは2時間おきに必ずその場所を移され、検査員及び収容担当職員はそれに付いて移動します。SCP-820-JPが3時間以上同じ場所にとどまっている場合、付属の発信機より信号が出され、即座に機動部隊が回収に向かいます。

説明: SCP-820-JPは、柄から刃の部分にかけて柄を囲むように這い上がっていく蛇が施された、アステカ文明下の意匠が施された石造りのナイフです。柄の部分には漢字で「如来観光 観光促進課 謹製」との文字が彫り込まれており、財団はこの企業について調査を続けています。SCP-820-JPは同一の材料で作成されたものに比べてはるかに高い破壊への耐性を有しており、現在まで傷をつける試みは失敗しています。

SCP-820-JPを██分以上直接視認した人間は、それを用いて「なるべく目立つ形で」人を傷つけてみたい、という衝動に襲われます。
SCP-820-JPを用いての殺人、ないし重傷を負わせる事件が発生した際に、SCP-820-JPはその事件に自らの異常性を分け与えます。(以下、この事件をSCP-820-JP-Aと呼称)
SCP-820-JP-Aは、前述の特性によりほとんどの場合白昼に、また人通りの多い場所で行われます。この性質から、発生したSCP-820-JP-Aは現在までその殆どが現行犯逮捕という形で警察に記録されています。SCP-820-JP-Aの「逮捕」が行われた直後から、その異常性が発現します。財団による隠蔽工作、記憶処理によって事件自体が秘匿された場合、後述の異常性は発生しません。

SCP-820-JP、またSCP-820-JP-Aについてのあらゆる情報は、それを認識したものに微弱な精神汚染を引き起こします。SCP-820-JP/-Aについての情報を認識した人間は、SCP-820-JP/-Aについて、「興味を惹かれる」「魅力的だ」などといった印象を持ち、自己の倫理的判断力をやや喪失し、機会を作ってその付近へと向かおうとします。

SCP-820-JP-Aの現場へと人が集まるにつれ、その周囲にダーク・ツーリズム1的観光空間が形成されます。通常のダーク・ツーリズムと異なっている所は、本来のダーク・ツーリズムに見られる「反省」「畏敬」などの性質がほとんど喪失し、単純に娯楽、物見遊山目的での観光がメインとなる点です。結果としてSCP-820-JP-A現場周辺には食事施設や、SCP-820-JP-Aをモチーフとしたイメージキャラクター、お土産屋などが形成されます。これらに関連する情報もまた、同様の精神汚染効果を持ち、結果としてSCP-820-JP-Aを中心とした観光空間は際限なく増大します。SCP-820-JP-Aの放置は、周囲の経済活動に多大な影響を及ぼし、無計画に私財を投げ打ってのSCP-820-JP-A周辺への出店や参入が発生します。

補遺-ア: 資料-SCP-820-A記録

事例 事件内容 結果
-1 ██県の観光地である████付近にて13歳の少年が警備員の男性を刺殺。少年は現行犯逮捕。 後述
-2 白昼に首都圏の路上で発生。死者3名、重軽傷者16名。犯人は即座に現行犯逮捕。 事件現場が歩行者天国であったことから、現場付近の商工会が慰霊パレードを計画。ブラジル人ダンサーを呼びカーニバル形式でパレードを行おうとした為、南米にSCP-820-JPの情報が流出。財団による鎮静後もブラジル料理店が██件、50m2の空間に乱立した。
-3 村祭りの最中、のど自慢大会を開催していた舞台上で名古屋から呼ばれた芸人が女子中学生に刺殺された。 犯人の母親が手記を出版。観光資源の少ない村であった為、村はSCP-820-JPに対して総力をあげて協力。「わくわく██さん(犯人)会館」が建てられ、犯人の自室が会館の一部にそのまま移植される計画が持ち上がった。計画段階で財団工作により鎮静。
-4 住宅街にて独居老人を殺害。自己顕示の為犯人は死体を細切れにし路上にばらまく。数日後に逮捕。 偶然、被害者に看護師としての従軍経験があり、 自宅倉庫に当時の資料が数多く存在していた為それらを用いて被害者自宅が展示室に改造される。生前の被害者の声をサンプリングして用い、資料の数々を被害者の肉声で解説するソフトの開発依頼が出された。計画段階で阻止。この際、SCP-820-JPが犯人の自宅から発見された。
-5 後述 後述

補遺-イ: 事例-820-JP-A-1

事例-820-JP-1は、SCP-820-JPの存在が初めて確認された、また最大の被害を及ぼした事例です。影響を受けた人間は重軽度合わせて█万人に上り、財団フロントのメディア各社をあげてのサブリミナル記憶処理が行われました。

対象: SCP-820-JP-A-1現場

潜入エージェント: エージェント・黒津土

付記: エージェント・黒津土が付近に到着後、SCP-820-JP-A-1まで徒歩で向かった際の記録音声となる。


エージェント・黒津土: …到着しました。情報通り、明らかに異常な状況です。当該の事件についての情報に情報汚染効果があることは確かなようです。

サイト職員: 了解。感覚の防護装備は万全ですか?

エージェント・黒津土: 視覚、聴覚、嗅覚全て万全です。とりあえず、真っ直ぐ事件現場に向かいます。

サイト職員: 何か見つけたらすぐに報告してください。

エージェント・黒津土: はい。…今は、なんというか、うーん、市場?のような場所まで来ました。左右に屋台のお土産屋さんが出来てます。すごい人です。この道の先に、事件の現場があると思われます。

エージェント・黒津土: なかなか前に進めません。……肉を焼く…匂いがします。……前方で、「めった切り焼き」…というものを売ってます。スパイシーでいい匂いですね。500円です。買いますか?

サイト職員:いえ。そのまま進んでください。

エージェント・黒津土: あっ、解体ショーです!マグロの解体ショーが道の真ん中で行われてます。職人は事件の容疑者が着ていた格好に身を包んでいます。周りでたくさんの人が記念撮影を。撮りますか?

サイト職員:いえ、そのまま進んでください。

エージェント・黒津土: ……もう事件現場に到着するんですが…事件現場は、テントに覆われて見えません。入口に…変なものが立っています。

サイト職員: 変なもの?オブジェクトですか?

エージェント・黒津土: いえ。着ぐるみです。こちらに手を振っていますよ。事件の容疑者の格好をした豚の着ぐるみです。ゆるキャラですね。かわいいなあ。記念写真撮ってもいいですか?

サイト職員: どうでも良いですから、早くテントに入ってください。

エージェント・黒津土: 了解…テントに入りました。入場料は1800円でした。小学生以下は半額のようです。中では、容疑者のこれまでの人生についてパネル展示が開催されています。等身大の蝋人形や、事件当時を再現したパノラマがあります。内部にもう一つ、事件現場を間近で見られるテントがあるようです。1時間くらいかかりそうですが、並びます。

サイト職員:構いません。

エージェント・黒津土: ……中に入りました。スポットライトで照らされたむき出しの地面に、血の痕が残っています。…後ろのお客さんもいらっしゃるので、とりあえずすぐに出ます。今日は横の町民会館で容疑者の母のトークショーもあるようですが、そちらも行きましょうか?

サイト職員: 結構です。すぐに戻って来てください。

エージェント・黒津土: いえ、せっかくですからもう少し調査してから帰ります。あそこにミュージアムショップが。お土産は何がいいですか?ペナントですか?みんなで食べられる、小分けのお菓子の方かな…「惨殺クッキー」というのが売ってますよ。試食もあります。粉々に砕いたクッキーをラズベリーなどのドライフルーツと一緒にチョコで固めてですね…

サイト職員: いいですからすぐに戻って来てください!

<録音終了>

終了報告書: 最終的に、エージェント・黒津土はSCP-820-JP-A-1現場付近で多数の買い物を行い、多くの手荷物を抱えた状態で18時間後に帰還した。持ち帰った購入品にはなんら異常性は認められなかった。帰還後の検査により、音声で記録を受け取っていたサイト職員は無事であったものの、エージェント・黒津土にはSCP-820-JP-A-1現場潜入当初から認識汚染の兆候が見られたため、途中からサイト職員にエージェントを放置するよう命令が下された。エージェントは帰還後即時治療が行われた。

補遺-ウ: 事例820-JP-A-5(SCP-820-JP-1)

2010/06/██、サイト-81██を一般人男性が訪問。男性はインタビューののち即時記憶処理を施され、自宅へと帰された。

対象: ██氏

インタビュアー: エージェント・木村

エージェント・木村 では質問を開始します。まず…なぜここに来たのですか?

██氏: いんや、ここにな、あんだろ。あれだよ、あれ。ナイフ。あれが見たくてな。

エージェント・木村 ナイフ?そりゃ…ナイフくらいあるかもしれませんが2…なんでまた。

██氏: 物珍しさだよ。なんかあるって噂を聞きつけてさ、いっぺん見て見たいなあ、と。観光ってそういうもんだろ。なんで見に行くのって言われても、なあ。

エージェント・木村 …どなたかから、その噂を聞いたのですか?

██氏: うーん、覚えてねえなあ。たまたま近くまで来てよ、そういえばそんなもんがあったなーって、来て見たんだけどここはいいとこだね。██駅から車で██くらいのとこにこんなとこがあるんだね。

エージェント・木村 …えっと、車で…来たんですか?

██氏: タクシーで来たよ。運転手にこれこれこういうやつがーって伝えたら、ありゃー珍しいとこ行くんですねって言って連れて来てくれたよ。

エージェント・木村 …もう結構です。ありがとうございました。

██氏: ところで、そのナイフってどこにあんの?

<録音終了>

終了報告書: 記録から、彼を連れてきたタクシー運転手にも尋問を行ったが、SCP-820-JP、またサイト-81██の場所をどうやって知り得たのかは覚えていなかった。タクシー運転手もまた、「風の噂」でそれらの情報を知ったと証言した。

未知の手段によってSCP-820-JPの場所を特定し、観光目的で訪れる人間の数は収容以来増加を続け、最終的にサイトへの取材が申し込まれるまでに発展したことから、財団サイトの特定を防ぐ目的で、SCP-820-JPは現在の収容室に移動されました。

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