SCP-821-JP
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Brain

SCP-821-JPの頭部。

アイテム番号: SCP-821-JP

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル: SCP-821-JPは防音処理を施した標準人型オブジェクト収容室に収容されます。現在のSCP-821-JPは完全に収容されている状態にありますが、SCP-821-JPが自発的な行動を見せた場合は迅速に管理者に連絡してください。SCP-821-JP-1との会話の試みは継続されます。詳しくは補遺3を確認してください。

説明: SCP-821-JPはかつて日本人女性████氏であったと推測される人型実体です。SCP-821-JPに自発的な行動は確認されず、またSCP-821-JPとの意思疎通の試みは今まで成功していません。SCP-821-JPに代謝や加齢の兆候は確認されていません。

SCP-821-JPの頭部は直径40センチメートルのメリーゴーラウンドに置き換えられています。メリーゴーラウンドは常にスケーターズ・ワルツ、美しく青きドナウなどの音楽を流しながら稼働し続けています。その木馬のうち1体には人型実体(以下、SCP-821-JP-1と表記)が搭乗しています。SCP-821-JP-1には観察者に向かって手を振る、観察者の姿を目で追うなどの行動が見られ、外部を認識している可能性が高く、自発的な行動が可能だと考えられます。SCP-821-JP-1に対する物理的干渉は成功しておらず、回収は現時点では不可能です。また、SCP-821-JP-1が木馬から降りる様子は確認されていません。

SCP-821-JPの頭部のメリーゴーラウンドは36秒で時計回りに1周します。SCP-821-JP-1の形態は、メリーゴーラウンドの動きに合わせ形態aから順に形態iへと向かって変化します。1周が完了すると同時に形態iから形態aへと移行し、この変化は常に繰り返されます。以下がその一覧です。
形態a 生後間もない、臍の緒が伸びたままの乳児。布に包まれ木馬の引く馬車に横たえられている。
形態b 幼稚園児と見られる。妖精を模した衣装を着用し、鈴を鳴らしている。
形態c 新品と思われるランドセルを背負っている。シロツメクサで作られた花冠を頭に乗せており、もう1つの花冠を手に持っている。
形態d ██市立██小学校の指定体操服を着用しており、メダルを掲げている。
形態e 風船とポップコーンの容器を手にしている。これらは神奈川県内の遊園地[編集済]にて販売されていたものと確認された。
形態f ██市立██中学校の制服を着用しており、楽譜を手に歌っている。曲目は「大地讃頌」であると確認された。
形態g ██市立██中学校の制服を着用しており、卒業証書を抱えている。
形態h 私立██高等学校の制服を着用しており、██市高校生陸上大会の賞状を手にしている。
形態i 顔色は蒼白であり、全身に打撲痕が見られる。この形態を取った後SCP-821-JP-1は形態aへと移行する。

SCP-821-JPは20██年12月█日、連絡の取れない状態であった████氏の安否を心配した通報に応じ、警察が████氏の自室に立ち入った際に発見されました。カバーストーリー「心労からの自殺」を適用し、事件関係者には記憶処理を施しました。SCP-821-JPの頸部以下の身体的特徴が████氏のものと一致していたことから、SCP-821-JPは████氏が何らかの手段を以って異常性を獲得したもの、或いは████氏の複製と見られます。████氏の捜索は継続されます。

補遺1:通報した██氏へのインタビュー記録

[前略]ひどい旦那さんだったんだって。見せてくれたんです、あの人の体、今も傷が残っていました。子供の存在だけが支えだった、って。それで、とうとう子供さんを連れて家を出て。なのに、その後すぐに子供さんも旦那さんから受けていた暴力が祟って亡くなってしまったって……それでこっちに越してきたって、仰ってました。辛いことだっただろうに、話してくれたんです。[嗚咽]少しでも、あの人の力になりたかった、楽になればって。でも、私じゃ無理だった、助けられなかった、どうして、あんなにいい人だったのに、██さんが、こんな目に会わなきゃいけなかったの。[しばしの号泣]子供さんのことですか。いえ、私は話に聞いていただけで。顔とかは、分からないです。ああ、私、██さんのこと、何も知らなかったんですね。[後略]

補遺2:██氏の自室に残されていた遺書

私は馬鹿な母親でした。
██にずっと支えられ続けてきたのに、最後の最後で██を守ってあげることが出来なかった。
ごめんなさい。
██は私のものだ。あいつなんかに渡したくない。

補遺3: SCP-821-JPの発する音楽の影響により、SCP-821-JP-1の発声を補足するのは困難です。現在、SCP-821-JP-1の言葉は一方的であり観察者との会話は成功していません。以下がこれまでに読唇により得られたSCP-821-JP-1の言葉の一覧です。

「おかあさん」

「もういいでしょ」

「いやだ」

「たすけて」

「おろして」

SCP-821-JP-1はどの形態においても常に苦悶の表情を浮かべていることが確認されました。

補遺4: 現在に至るまで、████氏の実子にあたる人物は確認されていません。

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