SCP-831-JP
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SCP-831-JPの個体。

アイテム番号: SCP-831-JP
オブジェクトクラス: Extranormal Euclid 

特別収容プロトコル: 現在研究用として、生物サイト-8102に20個体のSCP-831-JPが保管されています。SCP-831-JPの収容チーム及び研究者は、常に規定の素肌の露出しない服装が義務付けられています。万一SCP-831-JPと直接接触した場合、直ちにAクラス記憶処理を受けてください。未確認のSCP-831-JP-1発見のため、████県内の医療機関のうち、耳鼻咽喉科・精神科の診療記録、及び財団のサーチアルゴリズムによりインターネット上の疾病、幻覚を常に監視対象としています。SCP-831-JP-1として疑われる症状が発見された場合、症状確認のエージェントを派遣し、SCP-831-JP-1の初期段階の罹患者だった場合は、症状の発生時期に応じて、基本的にAからCクラス記憶処理を施した上、7年後の11月まで観察対象となります。特に最終年度には注意が必要です。Dクラス記憶処理はレベル3セキュリティクリアランスを持つ職員の許可を得た場合のみ行ってください。記憶処理を行っていない状況で症状発生から20日以上が経過していた場合、他の第二段階の対象者と同じ処置が適応されます。この場合、処置は第二段階への移行前に行われます。

SCP-831-JP-1の第二段階に移行した罹患者は、倫理委員会の監査に基づくプロトコル831-JP-09[夏季補修]により、翌年1月から6年後の12月までの間に、不自然でない形での疾病、事故、行方不明の犠牲者として処理されます。密閉された屋内での措置が理想的です。詳細な手順は別紙資料[対遊離831-JP-1採集処理]を参照してください。対象者のリストの閲覧はレベル3セキュリティクリアランスが必要です。突発的な不測の事態がない限り、順序の変更は禁止されています。その際、発生したSCP-831-JPはすべて回収し、研究に必要な場合を除き、処理手順に沿って焼却してください。

説明: SCP-831-JPは、日本では一般的にミンミンゼミとして知られている、セミ科のHyalessa maculaticollisに酷似した存在です。通常の寿命は他のセミと同程度と考えられ、9月から10月頃、SCP-831-JP-1の影響者から発生します。SCP-831-JPの生死を問わず、SCP-831-JPに素手及び素肌で接触を行うとSCP-831-JPは幾何学的に展開し、内側に向かい収縮、崩壊し、30秒後には完全に消滅します。この現象は接触者がSCP-831-JPを認識しているときのみ発生します。その約30分後、接触者は約70%の確率でSCP-831-JP-1に罹患します。SCP-831-JPはすべて雄で、20██年現在まで雌は発見されていません。SCP-831-JP-1を介して、7年ごとに通常のセミに交じって発生していると考えられていますが、197█年以前の生態は不明です。

SCP-831-JP-1はSCP-831-JPに触れた対象者へ大きく3段階の症状を与える幻覚症状です。

初期段階:接触から約30分が経過すると、罹患者は昼夜を問わず1匹のセミの声の幻聴を聞くようになります。また、周囲の気温・湿度に関わらず、体感気温を27~30℃に感じるようになります。この症状は不快なものですが耐えきれないほどではなく、2割程度の罹患者は単に疲れによる耳鳴りや体調不良の症状として、医療機関の診療を受けないケースもあります。症状は1ヵ月から1ヵ月半で終息します。この時点で、SCP-831-JPと接触した期間に対して記憶処理が成功した場合、第二段階への移行は起こりません。

第二段階:SCP-831-JP-1に影響されて何の処置も行われなかった罹患者は、7年後のほぼ同時期、以前に増した音量のセミの幻聴と体感気温の上昇を訴えます。幻聴は「何十匹もの数のセミが頭の中で鳴いている」と表現され、会話や睡眠も困難なレベルです。感じる音量はおよそ150デシベルと推定されており、社会生活に支障をきたします。体感気温は40℃前後と推定されています。第二段階に移行した罹患者が死亡した場合、頭部から数十体のSCP-831-JPが発生します。一般的なセミの幼虫のかたちで顔面の目鼻の穴、もしくは不明な方法で内側から1.5cm程度の円錐状に開けられた穴から発生し、外部に出ると即座に羽化し、罹患者の頭部に抜け殻を残して飛び立ちます。穴の内部には物理的な物体の痕跡は残りません。罹患者が生存した場合、症状は依然と同じく1ヵ月から1ヵ月半で終息しますが、3割程度は回復後もPTSDを発症し、耐えきれず自殺を図る罹患者も現れます。
第三段階:第三段階まで移行した症状は過去に1例のみ1です。第二段階を超え更に7年が経過した場合、第三段階の症状が発生します。第二段階を超える音量の脳内の幻聴が発生していると思われますが、罹患者との意思疎通ができなかったため詳細は不明です。対象となったDクラスは数時間で死亡し、326体のSCP-831-JPを発生させました。

SCP-831-JP-1は、197█/09/10の初の発生事例から198█/09/██の再発生事例までの間、超常現象として記録されていました。以下は当時の記録です。

概要紹介:████県の████████町の住民9名がセミの声がする幻聴に悩まされ、耳鼻科、精神科への診療を受けました。詳しい症状を確認したところ、体感気温も30℃前後となっている事が判明しましたが、徐々にどちらの症状も薄れていき、10月中旬には症状を訴える住民はいなくなりました。
発生日時:197█年9月10日
場所:████████町
追跡調査措置:住民には猛暑によるストレス障害というカバーストーリーが用意され、必要な住民及び医師にはAからBクラスの記憶処理を行いました。事件から4年が経過していますが、その後住民に異常は発生していません。
―夏が長くなるのと一緒に、休暇も長くなれば文句もないんだがね。―████博士

補遺831-1 オブジェクトクラス再分類経緯:
198█/09/05、実質的な2回目の発生周期。7年前の197█年に症状を訴えた住民7名、及び更に24名の住民(後の調査による197█年当時████████町住民だった████県住民3名を含む)に再度症状が現れました。197█年にも症状を訴えた住民(及び当時医師の診察を受けなかった住民7名を含む)14名は、以前に増して耐えがたい音量のセミの幻聴と体感気温の上昇を訴えました。
第二段階に移行した患者への記憶処理は何の効果ももたらさず、投薬による強制的な睡眠がかろうじて有効でした。10月中旬にはまた以前と同様に鎮静化しましたが、それまでに2名の自殺未遂、3名の精神障害、6名にPTSDが残りました。
近隣の科学工場で発生した事故による、有害物質の漏出による精神疾患としてカバーストーリーが挿入され、一部の住民に補償金が支払われました。

198█/11/██に████████町のアパートに住む独居男性(██████)の孤独死体が発見されました。死後14日が経過しており、手帳にはSCP-831-JP-1の第二段階の症状が出ていることが記載されていました。
男性の顔面及び頭部は多くの穴と42匹のSCP-831-JPの幼虫の抜殻で覆われており、室内には外へ逃げられなかった31匹のSCP-831-JPの死骸が残されていました。室内に入った警察官がSCP-831-JPに触れ、SCP-831-JP-1の第一段階の症状が現れました。警察内部のエージェントの報告により、以後の処理は財団へ引き継がれました。

197█年にAクラス記憶処理を行った住民2名には198█年の症状が発生していないことが判明しました。記憶処理を行わなかったSCP-831-JP-1罹患者に改めて症状が発生した前後の出来事を回想してもらったところ、多くの対象者がセミにぶつかった、サンダルでセミの死骸を蹴ったなど、SCP-831-JPらしき物体との接触事例が確認できました。

SCP-831-JP及びSCP-831-JP-1間で密接な因果関係がある事がほぼ確実とされたため、超常現象からEuclidへ再分類されました。

補遺831-2:プロトコル831-JP-09[夏季補修]制定案での経緯、及び以後の経過事例
198█/04/██、初期段階のSCP-831-JP-1罹患者記憶処理手順及び、以後の第二段階のSCP-831-JP-1罹患者へのプロトコル831-JP-09[夏季補修]が提案されました。記憶処理手順は承認されましたが、プロトコル831-09[夏季補修]は意図的にSCP-831-JP-1に罹患させたDクラス職員(D-225641)による長期経過実験が完了するまでは保留とされました。

199█/04/██、精神障害を患った198█年度の罹患者が自室内で自死、その際300体を超えると思われるSCP-831-JPが発生。また約200体を残し屋外に逃亡し、以後の1ヵ月で同居していた家族2名を含む36名が初期症状のSCP-831-JP-1に罹患しました。密閉環境でない屋内外での第二段階罹患者の偶発的な死亡事故によって、隠蔽し切れないレベルでの大規模収容違反が起こる可能性が否定しきれないという観点から、プロトコル831-JP-09[夏季補修]はDクラスの実験終了を待たずに承認され、198█年度の第二段階罹患者が対象となりました。

199█/09/██、3回目の発生周期。新たに25名のSCP-831-JP-1の初期症状の罹患者と、16名の第二段階罹患者が発生しました。記憶処理を行った198█年度の罹患者からの発生はありませんでした。D-225641は第二段階に移行しましたがその後回復しました。

199█/09/██、4回目の発生周期。新たに15件のSCP-831-JP-1の初期症状の罹患者と、4件の第二段階の罹患者が発生しましたが、記憶処理を行った前年度の罹患者からの発生はありませんでした。D-225641は第三段階に移行し、その数時間後に死亡、頭部から326体のSCP-831-JPが発生しましたが、全て確保されました。

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