SCP-835-JP
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この報告書はプロトコル・アイドル-835の実施に伴い大幅な改稿が行われました。

アイテム番号: SCP-835-JP

オブジェクトクラス: Keter Safe

特別収容プロトコル: その性質上、SCP-835-JPを収容することは不可能です。当オブジェクトの関与が疑われる財団職員の不審死が発生した場合、機動部隊く-3"篝火"により現場の封鎖と調査が行われます。周囲の職員が受ける士気への影響に配慮し、可能な限り別件による死亡事件に偽装して処理してください。
SCP-835-JP"消照闇子"は後述のプロトコル・アイドル-835によって無力化されています。現在、財団内での大規模な認識災害の発生等によって起こり得る収容違反のリスクに備え、プロトコルの適用範囲を財団外部まで拡大することによる封じ込め強化が検討されています。

説明: SCP-835-JPは消照闇子(けてる やみこ)と呼称される主に黒の学生服を着用した黒の長髪を持つ10代後半の少女とされています。外見年齢が10歳ほど上下する場合や学生服以外の衣服を着用している場合もありますが、非常に優れた容姿を持つとされる点はほぼ共通しています。無口で感情の起伏も少ないためその性格は陰気と評されることが多く、他者に自身の姿が見られることを強く嫌うようです。
"消照闇子"は暗所から暗所へ距離や遮蔽物を無視してテレポートを行うことができ、標的を殺害する際はその能力で接近し所持する大型の包丁を用い素早く攻撃を行います。また闇を意のままに操り物体を包み込んで消滅させられる能力を有しているともされていますがその原理は不明です。その能力ゆえに財団と敵対する要注意団体に誘拐され暗殺者として育て上げられたという過去を持っており、現在の人格はこうした経緯から形成されたものだとされています。
"消照闇子"に関するより詳細な情報は専用アーカイブが設置されているためそちらを参照してください。

SCP-835-JP"消照闇子"は、かつて19██年に初めて確認された研究員、エージェント、機動部隊員といった財団職員に対してのみ発生する異常な現象でした。この異常現象はおよそ1ヶ月から3ヶ月の周期で発生し、それに遭遇した対象は数秒から十数秒ほどで大量の血痕を残しその場から消失します。その生死を問わず、行方不明となった対象が発見された例はありません。現場に残された血液は対象のものであることが調査によって確かめられており、その出血量は対象が消失前に致命傷を負わされた可能性を示唆しています。この現象の発生条件は被害者が財団職員であることと現場が視界不良な暗所1であることを除き、対象、時刻、場所に目立った共通項は見当たりません。
その法則性の無さと突発性、そして遭遇した対象は例外なく消失することから、この現象の実験的観測は成功しておらず詳細は現在に至るまで不明です。現場付近に居合わせた人物の証言や監視カメラの映像といった僅かな情報から、対象は認知できない何らかの存在から攻撃を受けるかのような言動、振る舞いをしていたことが分かっていますが、その攻撃者の存在が裏付けられたことはありません。

事案835: 20██/██/██、██研究助手のデスクにて"SCP-835-JPの想像図"と題された漫画調の少女が手書きで描画された冊子が同研究助手の同僚職員らによって発見されました。その場で中身の確認を行ったところ、そのキャラクターには"消照闇子"なる名前や性格、出自、能力などといった設定付けが成されており、冊子はその日のうちに担当の███博士に提出されました。後日██研究助手が自分のものだと認めたため、数日の謹慎ののち異動処分となる旨が発表されました。
しかし事案835以降、これまで最低でも3ヶ月周期で発生していた異常現象がおよそ5ヶ月間にわたり非活性状態を維持したことから、本案件との関連性を疑った██博士によりプロトコル・アイドル-835が制定されました。

補遺835-1: プロトコル・アイドル-835
事案835以降のSCP-835-JP"消照闇子"の長期にわたる活動休止から、当オブジェクトは財団職員の認識に影響を受けていると推測されました。その仮説に基づき、財団職員にSCP-835-JPに対する共通した認識を埋め込むことを目的としてプロトコル・アイドル-835の実施が██博士から提言され承認を受けました。拡散される共通設定にはすでに一定の効果を上げていた実績の考慮、そして情報伝達の円滑性と即効性が重視され、事案835で一定数の職員に認知されていた"消照闇子"の設定がそのまま採用されました。
20██/██/██、本プロトコルは実行に移され、まず当該オブジェクトが言及されているすべての書類や情報に"消照闇子"の詳細な設定の表記やオブジェクトの呼称を固有名に差し替えるなどといった、閲覧者がこれらを関連付けやすい形式へと改稿が行われました。また職員に対する広報活動の一環として、財団のイラストレーターがデフォルメデザインした"消照闇子"のキャラクタービジュアルがプリントされた広報誌、支給品、共用物などが施設で大量に普及された他、"消照闇子"をメインキャラクターに据えた創作小説、漫画、アニメーション等が順次制作されその閲覧が推奨されました。こうした財団の努力により数か月ほどでほぼすべての職員にSCP-835-JP"消照闇子"の認識を共有させることに成功し、これ以降オブジェクトの活性化は確認されていません。
現在これらの広報活動の規模は縮小されていますが、一定以上の認知度を維持するため現在も"消照闇子"が描かれた物品が施設各所に残されている他、定期的に対象をモチーフにした創作会が財団主導で開催されています。

SCP-835-JPとはおそらく、暗闇に己を脅かす何かが潜んでいるのではないかという本能的な恐怖の具現なのだろう。だが我々がかつて恐れた想像上の怪物は、プロトコル・アイドル-835によって今や陳腐な一キャラクターへ成り下がった。 - ██博士

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