SCP-855-JP
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アイテム番号: SCP-855-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: その性質上、SCP-855-JPは移転が不可能であるため、旧・阿天坊邸および道路を挟んで隣接するオフィスビルを財団フロント企業“株式会社SCプロパティーズ”が所有する物件として買い取り、双方を合同暫定サイト81-855に指定することで封じ込めが確立されました。

SCP-855-JPは住宅密集地に存在しているため、近隣住民の不要な注意を惹かないように、実験は厳密に制限されています。実験は原則としてクリアランスレベル2以上1の職員を対象として実施し、結果として得られた物品は異常性の有無を精査した後、問題が無ければ当該職員に改めて返還されます。不測の事態によるSCP-855-JPの非意図的な活性化に備えて、暫定サイト-81-855には直近10日以内に誕生日を迎える財団職員10名を近隣のサイトから一時的に配属させた状態を保ちます。

阿天坊氏は、2018/04/23に予定されている実験まで、サイト-81██併設事務所にて暫定レベル0職員として雇用されます。氏の今後の処遇に関してはサイト-81██人事部に一任されます。

説明: SCP-855-JPは、██県██市、旧・阿天坊邸の裏庭にある倉庫の入口として使われていた高さ1.8mの両開き木造扉です。本来この扉は1974年の倉庫改装に伴って取り付けられたものでしたが、事案855-JPを以て異常性を発現して以降は倉庫内への立ち入りが不可能になりました。SCP-855-JPの表面は明るい青色に塗り上げられていますが、地所の所有者である阿天坊大吉(51)へのインタビューにより、事案発生前の扉は黒であり、その塗装も大幅に劣化していたことが明らかになっています。

SCP-855-JPは、扉の上部に設置されている照明の人感センサー2範囲内に何らかの生物が侵入するか、侵入防止のために施錠や障壁設置の試みが行われるか、その他の外的要因によって僅かでも開放されると即座に活性化状態に入ります。この際、SCP-855-JPはおよそ900N相当の力を伴って内側から完全に開け放たれ、活性化事象の終了まで閉鎖が不可能になります。内部空間は後述するSCP-855-JP-A個体群によって埋め尽くされていますが、敷居部分には強い反発力を持つ不可視の障壁が存在しており、外部からの侵入の試みは成果を上げていません。この空間内からはイギリスのダンス音楽“Pop Goes the Weasel”のピアノ演奏音がおよそ30dbの音量で流れ続けています。

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実験中のSCP-855-JP-A個体群

SCP-855-JP-A個体は、身長2.35mの着ぐるみのようなヒト型実体です。全てのSCP-855-JP-A個体は一様に中世ヨーロッパの宮廷道化師を模した衣装に身を包み、常に笑顔の表情を浮かべている極端に大きな頭部を有しています。SCP-855-JP-A個体の頭部は誇張された眼球を除き、可動部位を有していません。SCP-855-JP-A個体の外部構成要素は継ぎ目が存在しない点以外はごく一般的な着ぐるみと変わりませんが、頭部は完全な空洞であり、胴体内部には以下に挙げるような雑多な物品が詰まっています。

  • 様々な色合いに染色した綿
  • 製造マークの無い非異常性のスーパーボール
  • 装飾用のスパンコール
  • 清涼飲料水3を満たした半透明のビニール袋
  • イチゴジャム
  • ハート形の風船(各個体に1個ずつ)

SCP-855-JP-A個体の身体能力は着ぐるみを着用した一般人のそれとほぼ同じですが、疲労を示すことなく一定の速度で走り続けることが可能です。SCP-855-JP-A個体が不可視障壁や戸口のサイズを無視して外部に出現するメカニズムにはSCP-████やSCP-████-██との類似点が指摘されていますが、現時点では相互に関連性を持つとは考えられていません。

活性化したSCP-855-JP-A個体群はおよそ5秒間に1体のペースで内部空間を退出しつつ、SCP-855-JPが開放された時点で最も近くにいた、当日に誕生日を迎えている人間(以下、“対象者”)を走って追跡し始めます。活性化事象中に日付が変わった、または活性化後に誕生日を迎えている別な人物がより近くに現れた場合でも、SCP-855-JP-A個体群が一度指定した対象者を変更した例はありません4

SCP-855-JP-A個体は例外なく、対象者の所在と、そこに辿り着くための最短ルートを正確に把握しています。SCP-855-JP-A個体は対象者以外の人間には基本的に関心を払わず、危害を加えるような振舞いにも及びません。しかしながら、SCP-855-JP-A個体には自己防衛行動が欠如しているため、車両が走行中の道路を横切る、ルートの短縮を意図して歩道橋から飛び降りるなどして、結果的に物損事故の類を引き起こす可能性が大いにあります。SCP-855-JP-A個体は進路を継続的に遮られるなどの妨害行動を取られた場合、大袈裟なハンドジェスチャーに加え、様々な動物の鳴き声・機関車の汽笛・口語的に“パフパフ”の名称で知られる自転車用の警笛ラッパといった雑多な音声を鼻腔から発して、穏便に道を譲ってもらえるように意思疎通を試み、不可能である場合は迂回して対象者の下を目指します。SCP-855-JP-A個体は頭部を除く身体のおよそ60%が破壊されるまでは問題なく活動を継続します。

対象者の下へと辿りついた場合、SCP-855-JP-A個体群は常に以下のような行動を取ります。

1. SCP-855-JP-A個体群は対象者を取り巻きます。包囲が成功すると、全ての個体はその場で動きを停止します。

2. 最初に対象者の下に辿り着いた無傷の個体(以下、“代表個体”)が、“Birthday Surprise!”という、やや音割れした中年男性の声を鼻腔から放出します。これに続き、対象者から見える範囲の全ての個体が“Birthday Surprise!”と唱和し、一斉に拍手します。

3. 代表個体の頭部が中心線から横2つに分割5して脱落し、内部に未知の原理で宙に浮かぶプレゼント用包装を施された箱が出現します。分割から10秒経過しても対象者が箱を手に取らない場合、代表個体は箱を自ら首の上から除去し、対象者に半ば押し付けるようにして手渡します。

4. SCP-855-JP-A個体群は再び一斉に拍手した後、頭部を喪失した代表個体も含め、SCP-855-JPの内部へと退却を開始します。全ての活動可能な個体が内部空間へ退却した後、SCP-855-JPは自動的にゆっくり閉まっていきます。

5. SCP-855-JPが完全に閉鎖された時点で、活動不能状態となったSCP-855-JP-A個体のあらゆる痕跡は、SCP-855-JP外部から消失します6

SCP-855-JP-A代表個体によって贈与される物品7の傾向には一貫性が見られませんが、常に活性化当時の対象者の趣味やニーズに正確に沿っています。贈与品には製造マークが存在せず、書籍の場合は記載されている作者や出版社の実在が特定されていません。

閉鎖後のSCP-855-JPは条件が満たされ次第、直ちに再活性化します。活性化事象が立て続けに発生した場合、同一の対象者が選択されることはありません。財団がオブジェクトを確保してからまだ1年間が経過していないため、1年前の活性化の対象者が再び選択されるか否かは現時点では不明です。

事案855-JP: SCP-855-JPは2017/05/06のAM 02:30前後に唐突に活性化したと推定されています。出現したSCP-855-JP-A個体群は200m離れたコンビニエンス・ストアのパート従業員、寒河江██を対象者に定めて追跡を開始し、AM 02:408に目的を達成するまでに、現地警察本部に潜入していた財団エージェントの注意を惹くのに十分な騒ぎを引き起こしました。財団が現場を確保する前に、民間人の不用意な接近によってSCP-855-JPは閉鎖直後に直ちに活性化し、[編集済]。

幸いにも、財団は寒河江女史への簡易インタビューを介して特性を把握し、移動ルートの分析によって比較的早期に対象者の特定に成功しました。AM 03:30、SCP-855-JP-A個体群9は、財団エージェントに拘留され現場に急行させられた民間人の野村██にプレゼント贈与を行って再び不活性状態に入りました。広範に騒擾が広がりつつあることからクラスC記憶処理薬の空中散布が承認され、後日、カバーストーリー“化学薬品テロ未遂による幻覚騒ぎ”が一帯に流布されました。インターネット上に流出した既知の映像はWeb走査Bot-88(“シャムロック・ジョーンズ”)によって全て特定・削除されたと見做されています。

事案855-JP以降、当時の██市で多発していた空き巣被害の報告が途絶えたことから、倉庫に侵入を試みた犯人がSCP-855-JPの活性化に何らかの形で関与した可能性が指摘されています。しかしながら、十分な調査が行われる前に記憶処理薬が散布されたため、仮に活性化の要因が空き巣であり現在も無事に生存している場合であっても、既に当時の状況を覚えてはいないと考えられます。

インタビューログ855-JP-014抜粋 2017/05/07 :

実験記録855-JP-06 2017/06/16 :


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