アイテム番号:SCP-861-JP
オブジェクトクラス:Euclid
特別収容プロトコル:SCP-861-JPの予想異常性発生範囲3300㎡は現在財団フロント企業により自動車部品製造工場、及び製品の保管場として管理されています。予想異常発生範囲において飲み会・打ち上げといった飲食を伴った祝い事は全て禁止されます。また、予想異常性発生範囲の周囲300mを潜在的異常性発生範囲に指定し、人民住宅・ホテル・公民館・各種娯楽施設などの何らかの祝い事で使用される可能性がある建造物の建設は可能な限り妨害してください。もし潜在的異常性発生範囲内でSCP-861-JPの発生が確認された場合、直ちに予想異常性発生範囲、及び潜在的異常性発生範囲の再設定を行ってください。
SCP-861-JPに関する研究を行う場合は現担当者である巣鴨博士の許可を得た上で行ってください。一般人を用いたSCP-861-JPに関する研究は、現在財団倫理委員会の承認待ちです。
説明:SCP-861-JPは大分県██市に存在する約3300m²の土地に現れる異常現象です。SCP-861-JPはその土地内に存在する建物の屋内(以下会場と表記)で大学に在籍している学生が飲み会・打ち上げといった飲食を伴う祝い事を集団で行った際に現れます。SCP-861-JPは会場内の人間を一定の基準でSCP-861-JP-AとSCP-861-JP-Bにより分け、それぞれ異なる異常性を発生させます。
SCP-861-JP-Aはアルコール類の摂取を行っている、または会場内で開催されている祝い事をある程度楽しんでいる人々です。会場内にいる大学生以外の人々もこのグループへと分けられます。SCP-861-JP-Bはアルコール類を飲まず、かつ会場内で開催されている祝い事を楽しんでいない人々です。主に以前から集団での行動を嫌いSCP-861-JP-Aに当たる人物を煩わしく思うような考えを持っていた人物がSCP-861-JP-Bとなる傾向がある事が確認されています。
SCP-861-JP内部でアルコールと食料が振舞われ約60分が経過した時点で外部へとつながる出入り口が未知の手段により施錠されます。同時に扉・窓・SCP-861-JP-Aの肉体から未知の液体が漏れ出し始めます。この液体は高温であり、常に沸騰したかのように気泡を噴き上げています。この熱で会場内にある機材が傷つくことは一切ありません。この異常にSCP-861-JP-Aは反応を行わずより激しく祝い事を楽しみ続けます。一方SCP-861-JP-Bは会場に起きている異常を認識し混乱した様子を見せます。この段階でSCP-861-JP-AはSCP-861-JP-Bからのあらゆる干渉を受け付けなくなります。時間と共にSCP-861-JP-Aの身体が完全に液状化し、室内の液体の水位も上がり続けます。SCP-861-JP-Aの身体が完全に溶け切った後でも液体からはSCP-861-JP-Aの笑い声や会話が聞こえ続けます。最終的に液体の水位は天井まで達し室内にいるSCP-861-JP-Bは窒息および熱による火傷で死亡します。
水位が天井まで達して一定時間経過した後、徐々に水位が下がりSCP-861-JP-Aの身体が元の形へと戻り始めます。液体が完全に消失し、全てのSCP-861-JP-Aの肉体が元の形に戻った時点で全ての異常性が消失します。その後は会場にSCP-861-JP-Bの死体が残されSCP-861-JP-Aは周囲に対する正常な反応を行えるようになります。全てのSCP-861-JP-AはSCP-861-JPの異常性が発生している間、アルコールを飲み友人らと会話をしていた、もしくは自身の仕事に従事していたと証言します。会場に液体が満ちていた痕跡は一切存在しませんがビデオカメラなどの記録機器により液体の存在を記録することが可能です。
SCP-861-JPは19██年に初めて異常性が確認されたものの、当時は監視カメラなどの記録機器が十分に普及していなかったこと、財団の調査では異常性を再現することが出来なかったこと等を理由に超常現象として記録されていました。事件の発生地となったホテルが事件後すぐに廃業し、それに伴い近隣の大学生が飲み会やコンパなどのイベントに利用する会場が別の場所へと変更された点もSCP-861-JPの異常性が見逃され続けた要因です。
SCP-861-JPがオブジェクトとして正式に記録されるきっかけとなった20██年の事件は、新たにSCP-861-JPの異常発生範囲内に設立されたホテルを、██大学の生徒が文化系サークル全体の追い出しコンパの会場として毎年利用していた会場の代理として利用したことが原因で発生しました。この事件により21名の死亡が確認されています。会場内に監視カメラはなくSCP-861-JPに対する調査は前回同様難航しましたが、会場内に学生が撮影用に持ち込んでいたハンディカメラの映像によりSCP-861-JPの異常性の詳細が判明しました。
SCP-861-JPに関する実験は異常性の発生対象が極めて限定的であるため困難を極めています。財団管轄下の私立大学・通信制大学に入学させたDクラス職員を用いた実験では異常性は発生しませんでした。SCP-861-JPの異常性が発生する対象として何らかの不足があったと考えられていますが、その要因は不明です。
インタビュー対象:文化サークル広告担当者 ██ █
インタビュアー:██博士
目標:SCP-861-JP-AにSCP-861-JP異常下の正確な記憶を思い出させる。
対象者は事件当日、記録係としてハンディカメラによる撮影を行っていました。対象者には前もってSCP-861-JPの異常性を撮影した映像の一部を視聴させています。
インタビュー開始
巣鴨博士:さて、少しショッキングな映像を見てもらいましたが。気分とかは大丈夫かい?
██ █:ええ、まぁ・・・知ってる顔の奴もいたしビックリはしましたけど。
██ █:あんな死に方、俺だったら死んでも嫌ですね。(笑い声を上げる)
巣鴨博士:えー・・・まぁ映像を見てもらったわけだけど、何か思い出すようなことはありませんか?
██ █:んー・・・いえ特には。あの日は途中までめちゃくちゃ楽しくコンパしてたんですけどね。正直今まで生きていた中で一番楽しかった気がします。
██ █:でもまさか最後の最後にあんなキモイ死体を見るなんて思いもしませんでしたし、ましてや自分の体が水になっていたなんて、全く気が付きませんでしたね。
巣鴨博士:・・・随分冷静だね、もう少しぐらい取り乱すものだと思っていたが。
██ █:え、そうですかね?
██ █:まぁ、あんまり内容がぶっ飛んでいたから逆に平気!みたいな?
巣鴨博士:しかし、亡くなった人間の中には君の友人もいたのだろう?
██ █:ええ、まぁ確かにいましけど。
██ █:まぁ・・・アレはアイツが勝手に絡んできていただけって言うか。アイツ本当に空気とか全然読まないうっとうしい奴で。
██ █:あの時も少し見かけたけど1人で黙々と携帯弄ってて、かなりキショかったし・・・。普通ああいう時に根暗みたいに携帯電話とか弄りませんよね?
巣鴨博士:まぁ・・・そうかもしれないね。それはともかく、新しく何かを思い出したり気が付いたりした点はない、ということで良いんだね?
██ █:はい、特にないですね。
巣鴨博士:なるほど・・・では念のため少し時間を置いてから再度インタビューを行うからしばらく別室で待機しておいてくれないかい?職員と一緒なら時間まで好きに出歩いてもらっても構いません。
██ █:はい、分かりました。それじゃあ失礼します。
インタビュー対象者が退出する
巣鴨博士:・・・・・・。
インタビュー終了
死亡したSCP-861-JP-Bの中には██ █が大学へ入学した時から一緒に行動を共にしていた親友がいることが確認されている。・・・・・・何かがおかしい、恐らくSCP-861-JPの効果は被害者の死亡だけで終わっていない。その他の生存者及び、被害者の家族に対する調査を引き続き行うように。
巣鴨博士
巣鴨博士及びSCP-861-JPの研究に携わる複数人の研究者・エージェントによる非常に強い要望により、以下の内容がSCP-861-JPのさらなる特性の仮説として記録されることが決定されました。巣鴨博士らのSCP-861-JP担当終了までの期間内で正式に以下の内容の異常性の存在が確認、立証されなかった場合、これらの付録文書の削除が行われる予定です。
SCP-861-JPの異常性で死亡したSCP-861-JP-Bは、生前何らかの関係を持っていた全ての人間から「どうでもいい人間」「嫌いな人間」として認識されるようになります。この認識はおよそ7日間かけて徐々に発症します。発症の初期段階にこの影響に不信感を抱いた場合は影響から逃れることが可能です。しかし一度影響の最終段階へ至った場合、第三者の指摘があったとしてもSCP-861-JPの影響を認識できず、その影響の存在に対して非常に否定的な考えを示します。7日以降に新たにSCP-861-JP及びSCP-861-JP-Bに関する情報を得た人間は即座に影響の最終段階と同様の反応を示します。19██年の事件でSCP-861-JP-Bの死後の影響について気が付かれなかった原因はこれらの異常性によるものだと推測されます。
SCP-861-JPの影響はSCP-861-JP-Bとの関係性によって性質がわずかに異なります。主にSCP-861-JP-Bと家族・親友・恋人未満の人間はSCP-861-JP-Bの死を晒しあげ嘲笑の的にする傾向が見られます。その行動に伴いSCP-861-JP-Bの死体の写真や悪評・陰口をSNS等に書きこむといった行動をとるため、結果として新たにSCP-861-JP-Bの存在を知った人間がそれらの行為に加担し始めます。反対に家族・親友・恋人といったSCP-861-JP-Bと深い関係を持っている人物の場合、SCP-861-JP-Bとの関係を持っていた事実を深く後悔し、その事実の隠ぺいを図る傾向にあります。主にその行動はSCP-861-JP-Bに関する物品の廃棄、違法な手段を用いての戸籍の改変、SCP-861-JP-Bが関連しない土地への移動などが挙げられます。
この影響によりSCP-861-JP-Bが死亡したという事実に対し、あらゆる人物も悲しみや憐みといった感情を引き起こしません。そのため被害者の死を悔やむ儀式や行動、学校の休校・通夜・葬式・仏壇の設置などといったものが行われない、もしくは非常に質素なものとなります。多くの場合SCP-861-JP-Bの遺体は可燃ゴミとして処分される、山や海に遺棄されるなどの非常に雑な扱いがされます。また、SCP-861-JP-Bの遺体の引き取りを拒否した遺族も多く、それらの遺体はSCP-861-JPの影響を受けた財団職員の手により実験用動物やSCP-███-JPの食料・SCP-███-JPへの被露実験などに使用されていましたが、それらの行為に対して何の処罰も行われていない事が確認されています。
現在SCP-861-JPの影響を除去するためのあらゆる試みは失敗しています。しかし記憶処理によりSCP-861-JP-Bの記憶を除去することで間接的にSCP-861-JPの影響から脱することが可能です。この場合、影響者が再びSCP-861-JP-Bの存在を認知した場合、影響が再発することに留意して下さい。