SCP-907-JP
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SCP-907-JP

アイテム番号: SCP-907-JP

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル: SCP-907-JPはサイト-81██の耐火性収容チャンバーで保管されます。収容チャンバーには独立した電源から成る自動消火装置と緊急排気システムが備えられ、内部への火気を帯びる物品の持ち込みは如何なる理由があっても禁じられます。またSCP-907-JPの管理に関わる照明を除いたすべての設備は発光機能が除去されたものが使用されなければなりません。SCP-907-JPを用いた実験を行うにはサイト-81██管理者による事前の承認を必要とします。

説明: SCP-907-JPは20世紀初頭に制作されたと思しきアンティークのオイルランプです。SCP-907-JPに火が灯された場合、その火は不燃性液体への浸漬や無酸素空間への曝露など外的要因によって鎮火されない限り燃え続けます。このときSCP-907-JP内に充填された燃料は燃焼によっては消費されないか、もしくは不明な原理によって継ぎ足され続けることで減じる様子を見せません。

点火したSCP-907-JPから最低でも1.2km以内に存在する発光体は負の影響を受けます。それらは電気系統の故障、急速な消耗や劣化、物理的な崩壊、化学組成の変化、エネルギーの散逸など、様々な要因をともなってただちに発光能力を喪失します。これは光を発しているものであれば照明を目的としたものに限らず、映像機器や携帯機器といった電子機器、ルミノールやアルミン酸ストロンチウムなどの化学発光体、ホタル科や発光性キノコなどに見られる生物発光、そして炎、何であろうと影響を受けます。財団が把握する限り、この影響への耐性を有する光源はSCP-907-JP内部で燃焼する炎だけです。SCP-907-JP内の炎が消し止められない限り、時間の経過とともにSCP-907-JPはその効果範囲をおよそ1.2m/sの速度で拡大させていきます。現時点でこの拡大現象の限界は認められていません。

財団がSCP-907-JPが起こす現象を最初に知覚したのは、夜半の██市繁華街で発生した奇妙な停電に関する通報でした。調査のため付近の財団施設から先遣されたプロペラ機のパイロットは、市街から離れた高空域からSCP-907-JPによる影響が街明かりを消し去りつつ円状に拡大していく様子を視認しました。このとき現地では発光機能の喪失にともなう機器の不全を原因とした致命的な交通事故が複数発生していましたが、それを除けばあらゆる光源を駆逐するというSCP-907-JPの特性上、大規模停電で見られがちな治安の悪化やパニックは最小限に留められていました。行動するための十分な明かりを確保できない住民らはその場で身を寄せ合いながら留まり、停電からの復旧、もしくは夜明けを待つことを選択していました。最初の通報からおよそ█時間後、暗視装置を備えた収容部隊が停電の中心地と目されるテナントビルへと到達しました。屋上で発見されたSCP-907-JPはその場で消し止められ、さらなる被害の拡大は食い止められました。最終的なSCP-907-JPの影響は██kmに及び、後に変電所での作業トラブルによる都市停電に偽装されました。

SCP-907-JPの回収時、同テナントビル階下の飲食店に勤める男性がオブジェクトとともに居たところを保護されています。SCP-907-JPの所有者であった男性はその入手経路について、現在は疎遠となっている知人から数年前に送り付けられたものであると証言しました。男性は聴取の後に記憶処理を受け解放され、男性宅からは言及された人物から男性へと宛てられたいくつかの手紙が押収されました。

文書907-JP-41

19██年██月██日

こうしてあなたに宛てた手紙を綴るのも、随分と久しぶりな気がします。そちらも、もしかしたら手紙を書く暇もないほどお仕事が忙しくなっているのでしょうか。そうだとしたら嬉しいですが寂しいです。そして少し心配です。どうか体だけは壊さないよう労わってください。

こんなよく晴れた夜に一人机に向かっていると、あなたと二人星空を見上げた日々のことを思い出します。あなたはいつも自分の夢について熱心に語って聞かせてくれましたね。それに応えられるような志など当時の私は持ち合わせていませんでしたが、それでもあの時間は私にとってかけがえのないものでした。こんな時間がいつまでも続けばいいと……そんな思いが、やがて私の目指す夢となりました。
夜空には手を伸ばせば届きそうなほど星で溢れ、あの頃は私たちが宇宙の中心なのだと信じていました。叶えられない夢など何もないのだと……そう信じて、私たちは各々あの場所から飛び出しました。その判断が正しかったのかは、もはや言っても詮無いことですね。
ただ、日が落ちて、夜が来て、それでも星たちが現れない都会の夜は寂しいです。ここでは誰もが明るすぎるほど照らされた街道を足早に過ぎていくばかりで、立ち止まって空を見上げようとする人などどこにもいません。空の光は残らず街明かりにかき消され、私があの日掴んだ輝きすらもこの掌から零れ落ちていきました。ここでは道に迷ってしまったとき、進むべき方角を知ることすらできません。

だから、もしもあなたがそちらであの日々を恋しく思うことがあったなら、このランプに火を灯しあの頃と同じように空を見上げてください。宇宙は常に光の速度で膨張し、すべての星は一様に私たちから遠ざかります。私たちは皆孤独で、どうしようもなくちっぽけな存在ですが、それでも星空を見上げているとき私たちは変わらずこの宇宙の中心にいます。

どうかあなたがその気持ちを忘れてしまいませんように。あなたが、進むべき道を見失ってしまいませんように。

返信不要

財団による調査では、この人物は高校卒業後に地元を離れ██大学で環境科学を専攻した後、同大学を中退してからは自身の故郷を含むいくつかの市町村で光害対策を求める請願に失敗していたことが判明しています。しかしその足取りは男性へSCP-907-JPを送付したとされる時期を最後に途絶えており、現在その所在を特定する試みが続行中です。また彼女が大学時代に在籍していた天文観測サークルは、ニューエイジの神秘主義に基づくカルト宗教の偽装サークルであった疑いが持たれており、並行してSCP-907-JPとの関連が調査されています。

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