SCP-918-JP
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918-JP

SCP-918-JP

アイテム番号: SCP-918-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-918-JPはサイト-8137の5×5×5mの収容室内に設置した20×20×20cmのショーケース内に収容されています。 SCP-918-JP内の情報の増減を確認するため、最後のページの情報のみを定期的に記録してください。 SCP-918-JPは常に1つの監視カメラで観察され、新たなSCP-918-JP-Aが確認された場合、即座に担当職員に報告し、保護するようにしてください。

出現したSCP-918-JP-Aに関してはその生態に適した収容室にそれぞれ収容され、レベル2以上の職員によって実験等が行われます。SCP-918-JP-Aの脱走及び再度抱く事による消失を防ぐためにSCP-918-JP-Aは定期的に薬を投与し恒常的な軽度の鬱状態を保つようにしてください。

説明: SCP-918-JPは、"それは誰かが見た見果てた夢"と表紙に刻印された計測不能な枚数のページで構成された書籍です。

SCP-918-JPは、個人の情報と、その個人が過去実現を諦めた願望の情報が自動的に書き込まれる異常性を保有しています。書き込まれている人物には特に共通点などは見られず、中には既に亡くなっている人物の情報も確認されています。SCP-918-JPに記述されている人物に対してSCP-918-JPについて質問したところ全員が「そんな情報、記入した記憶はない」と回答しました。後述する事例を除けば、SCP-918-JP内に記述された情報が消滅する事はありません。

SCP-918-JPのもう一つの異常性として、不定期に1体の生物実体がSCP-918-JPから半径2m以内に出現します(以下、SCP-918-JP-A)。現在、SCP-918-JP-A-13、-15、-16の計3体のSCP-918-JP-Aを収容しています。また、同時に存在できるSCP-918-JP-Aの限界数は未判明です1。SCP-918-JP-Aは自らを一度放棄されてから1年以上経過した"願望"または"夢"2であると主張しています。また、SCP-918-JP-Aは自らの願望または夢に相応する特技を1つ所持しています。何らかの願望を抱いている人物がSCP-918-JP-Aの言語を理解する事やSCP-918-JP-Aに接触する事は不可能です。対して、願望または夢を抱いていない人物はSCP-918-JPの言語を知覚することや接触する事が可能であり、SCP-918-JP-Aはこのような人物に対して非常に友好的であるため、SCP-918-JP-Aに対する実験やインタビューは上記の条件に該当する人物でのみ行われます。

SCP-918-JP-Aに対して行われたインタビュー記録によりSCP-918-JP-Aは"自分という願望または夢を誰かに抱いてもらう"という目的を持っている事が明らかになりました。SCP-918-JP-Aの目的が達成された場合、SCP-918-JP-Aは消滅します。SCP-918-JP-Aが消滅した後、SCP-918-JPに記述されていた該当する情報は消滅します。これを受けてSCP-918-JP-Aの収容手順が変更され現在の特別収容プロトコルが構成されました。

以下は現在収容されているSCP-918-JP-Aの一覧です。
収容されているSCP-918-JP-Aナンバー 姿 願望または夢 特技
SCP-918-JP-A-13 白色のウサギ 生まれ変わったらウサギになる夢 特に特技は存在しない3
SCP-918-JP-A-15 大空に羽ばたく夢 最長で████mの飛翔が確認されました。
SCP-918-JP-A-16 盲導犬 仲間を率いる夢 SCP-918-JP-A-16の半径30cm以内に近づいた人物はSCP-918-JP-A-16が歩いた道と5分間同じ道を歩く。

補遺918-JP: SCP-918-JPは、██県の███図書館の倉庫に保管されており、廃棄処分が予定されていました。発見当日、SCP-918-JPの廃棄処分を行う為図書館管理者が倉庫に訪れた所、SCP-918-JPからSCP-918-JP-A-1が出現し財団の興味を引きました。1ヵ月の調査の後、SCP-918-JPの異常性が確認され、正式に収容されました。この時に出現したSCP-918-JP-A-1はその3ヵ月後消滅しました。

補遺918-JP-2: 人型のSCP-918-JP-AであるSCP-918-JP-A-11との会話を数人で試みた所、藤光研究員のみ会話が可能な事実が判明しました。藤光研究員は過去に足を骨折し挫折した事で夢を放棄した事実が判明しました。以下は藤光研究員が行ったSCP-918-JP-A-11に対するインタビュー記録です。

対象: SCP-918-JP-A-11

インタビュアー: 藤光研究員

付記: 藤光研究員以外の職員にはSCP-918-JP-A-11の発言が理解できないため、インタビュー終了後藤光研究員に録音記録を翻訳する形でSCP-918-JP-A-11の発言は記録されます。

<録音開始>

藤光研究員: こんにちは。SCP-918-JP-A-11。

SCP-918-JP-A-11: えす? なんですか、それは。

藤光研究員: ここでのあなたの呼び名と思っていただければいいですよ。

SCP-918-JP-A-11: わかりました。

藤光研究員: でも一応聞いておきますが、あなたの名前はなんでしょうか。

SCP-918-JP-A-11: 見果てた夢に名前などありません。ついでに感情もありません。覚えている事はあの子の記憶だけです。でも強いて言うなら、"笑顔の夢"にしましょうか。

藤光研究員: "笑顔の夢"ですか。あと、見果てた夢というのは。

SCP-918-JP-A-11: 見果てた夢とはそのままの意味です。もう見られない夢、誰も見てくれない夢、見飽きた夢……。だから見果てた夢です。"笑顔の夢"は、あの子の夢を省略した名前ですね。

藤光研究員: そうですか。次にSCP-918-JPについて何かご存知でしょうか。あなたが出てきたあの本なんですが……。

SCP-918-JP-A-11: あの本は貴方達も知っているかもしれませんが、捨てられたり諦めたりされた夢達が溜まるゴミ箱みたいな物です。それでもまだ長い間再度抱かれたいと願う夢達は外へ逃げていきます。私もあの子にまた抱かれたいと願いここに逃げてきました。他の夢達は誰でもいいと言ってますけど、私はあの子じゃないとなんか……。すいません。自分勝手な事言ってしまいましたね。

藤光研究員: いえ、大丈夫ですよ。それより、あの子とはあなたを抱いていた人物の事でしょうか?

SCP-918-JP-A-11: はい。あの子は幼稚園に入ったばかりの女の子です。あの子の父親は常に遺憾の表情で母親に何か言われれば逆ギレ。あの子が何か言えば逆ギレ。そんな毎日です。そんな時、あの子はある絵本を読んだんです。そこにはいつも笑顔な家族の絵が描かれていました。その絵を見たあの子はこの家族を理想としたのです。

藤光研究員: そうですか。それで、その子はどうしてその夢を? 成長の過程で諦めたのでしょうか?

[30秒間の沈黙]

藤光研究員: SCP-918-JP-A-11? 大丈夫ですか?

SCP-918-JP-A-11: いえ、大丈夫です。結構率直に聞くんだな、と思っただけです。あの子は……その、父親の執拗な虐待を受けていたんです。ですがあの子はその夢を糧に必死に生きて耐えていきました。しかし、最終的にあの父親が無理やり別居を切り出して……出ていったんですよ。それで夢を捨て、いえ諦めたんです。

藤光研究員: なるほど。ありがとうございます。参考になりました。

SCP-918-JP-A-11: それならよかったです。

<録音終了>

終了報告書: SCP-918-JP-A-11を含む、他のSCP-918-JP-Aが藤光研究員に対してのみ友好的に接する事が可能だった事を受け、藤光研究員をSCP-918-JPの担当職員に任命されました。

事案918-JP-1: 1993/12/26、収容下に置いていた馬の姿をしたSCP-918-JP-A-2が収容所から消失しているのが確認されました。監視カメラを確認した所消失する直前SCP-918-JP-A-2は収容室内を激しい音を立て軽快な足取りで走り回っていました。後の調査によりSCP-918-JP-A-2を抱いていたと思われる競走馬「トウカイテイオー4」が左中臀筋を痛め、約1年間休養していたにも関わらず、当日に催された競馬大会の1つである有馬記念にて優勝等の好成績を残していた事が判明しました。

事案918-JP-2: 20██/█/██、藤光研究員がSCP-918-JP-A-11に薬物投与のため収容所を訪れた所、SCP-918-JP-A-11が突如身体の痛みを訴えましたが、藤光研究員は当初薬物投与を避けるための口実だと推測したため無視し薬物を投与しました。しかし翌日SCP-918-JP-11の身体が薄くなる変化の発生と共に昨日よりも苦痛な表情を示しました。以下は急遽行われたSCP-918-JP-A-11と藤光研究員による対話記録です。また、SCP-918-JP-A-11はこの対話記録の3分後に完全に消失しました。

藤光研究員: 昨日から痛みを患っていたにも関わらず、なぜ我々に言わなかったのですか?

SCP-918-JP-A-11: 言ったじゃないですか。あなたはそれを信じましたか……?

藤光研究員: [沈黙]

SCP-918-JP-A-11: 夢は捨てられたら痛みを伴い消える。人と同じなんだよ。結局。

藤光研究員: 夢は消えた後どこに行くのですか?

SCP-918-JP-A-11: 知らないよ。生きている人間が、天国があるのかないのかわからないのと同じ。でも唯一違うのは、悔しさを抱きながら消えていく事かな……。

藤光研究員: そうですか。

SCP-918-JP-A-11: 痛っ……。はは、痩せ我慢だね。さよなら、藤光さん。あ、そうだ。みんなに伝えたいことがあるんだ。言ってもいい?

藤光研究員: はい、どうぞ。

SCP-918-JP-A-11: 捨てられた夢はこうやって消えていくんだ。だから、抱いた夢は責任を持って叶えてください。……ってね。

藤光研究員: はい、伝えておきますよ。

SCP-918-JP-A-11: なら、よかった。

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