SCP-920-JP
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アイテム番号: SCP-920-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-920-JPの全実体は、財団標準収容ロッカーに、一般的な書籍保存処理を施したうえで施錠して保管してください。収容ロッカーの鍵は担当職員によって管理されます。SCP-920-JPの本文を参照を希望する職員は、複写のみ閲覧することができます。

現在未収容のSCP-920-JPが複数あるとみられています。海岸周辺の変死事件や医療施設の診療記録などからSCP-920-JPの影響を受けていると推測される事例があった場合、ただちに調査とSCP-920-JPの捜索・回収を行います。SCP-920-JPの影響を受けた人物は財団医療施設に搬送し、記憶処理を施した上で症状の進度によって適切なリハビリテーションを受けさせます。関係者については記憶処理を施し、カバーストーリーを適用してください。特異性を消失させたSCP-920-JPは焼却処分を行ってください。

説明: SCP-920-JPは20██年現在、公的には出版が確認されていないA6変型判の国語辞典です。表紙とボール紙製のケースに「大辞海」とタイトルが記されており、全███ページでケースを合わせて███gあります。奥付がなく、編著者や出版社の名前が表記されていないほかはおおむね一般的な辞典と変わった点は見られません。現時点で██冊のSCP-920-JPが収容されています。

SCP-920-JPには2つの特異性が存在し、特異性は日本語を母語とする人間がSCP-920-JPを「使用」することで発現します(以下、SCP-920-JPを使用した人間を被験者とします)。11つ目の特異性は被験者が幻覚的存在のクジラ(このクジラをSCP-920-JP-aと指定します)を認識するようになること、2つ目の特異性は被験者がSCP-920-JPを使用することによって被験者に記憶障害が生じることです。複写や書き写し、写真などを使用した実験では特異性は発現しませんでしたが、破りとったり切り抜いたりしたページの一部では通常通り特異性が発現しました。

1つ目の特異性であるSCP-920-JP-aの出現は、被験者がSCP-920-JPを初めて使用したとき、被験者自身の頭上空中に確認されます。被験者へのインタビューで得られた情報によると、SCP-920-JP-aの出現時の体長はおよそ20cm~30cmと極めて小さいスケールであり、形態などからヒゲクジラ亜目ナガスクジラ科に属することが類推されるものの、既知の種のクジラではないことがわかっています。SCP-920-JP-aには実体がなく、被験者が物理的に接触することは不可能です。

出現当時SCP-920-JP-aは生まれたばかりの幼体の姿をしていますが、被験者がSCP-920-JPを使用する都度成長を遂げ、使用を続ける限り老化や衰弱の兆候を見せることはありません。使用する頻度や度合いによって多少異なりますが、1日に2~3回程度の頻度で約12ヶ月使用を続けるとSCP-920-JP-aは完全に成熟し、体長1m~1.2mほどの大人のクジラとなります。

SCP-920-JPの2つ目の特異性である記憶障害は、被験者がSCP-920-JPを使用することで生じます。記憶障害は失語症、特に失名詞の症状に似た特徴があり、日常生活の会話や文章を書く場面において、回りくどい説明や意味の似た単語の混同をするようになります。これは単なる物忘れの類ではなく、完全に単語の概念を喪失しているものとみられますが、失った語彙は学習によって再度習得することが可能です。ただし、記憶処理ではこの症状を取り除くことはできません。失われる語彙と、被験者がSCP-920-JPで検索した単語には規則性や関連性は見られず、ほとんどの場合1度の使用につき1つ、まれに2つ以上の語彙が失われます。

被験者がSCP-920-JPを使用した直後、SCP-920-JP-aが口を開けて被験者の頭めがけて空中を泳ぎ、頭を通過していきます。2その後SCP-920-JP-aは上昇し、閉じた口のひげ板の隙間から海水を吐き出すような行動をとります。この直後から語彙の喪失が発生しているようです。また、語彙の喪失後SCP-920-JPを確認すると失われた語彙に該当する見出し語および説明文の記述が抜け落ちて空白になっています。3

SCP-920-JPを使用した際のSCP-920-JP-aの動向や、SCP-920-JPの記述の改竄から、SCP-920-JP-aは被験者の語彙を「餌」として捕食し、自身の栄養とすることで成長しているものと見られます。日に何度も「餌」をやると数日間食事を受け付けなくなったり、逆に何日も「餌」をやらないでいると被験者の周囲をしつこく泳ぎ周り、「餌」を催促するような様子を見せます。

記憶障害の進行度合いによって被験者は進度1~6に分類されます。進度6に達したとき、SCP-920-JP-aは未知の手段によって初めて実体化します(実体化したSCP-920-JP-aをSCP-920-JP-bと指定します)。4分類は以下の表のとおりです。


20██年現在、進度6に達した被験者の終了案件は財団が把握している限り██件、うち実験によって発生したものは4件です。過去に、2度のSCP-920-JP-b生態観察実験を行いました。以下はその記録です。

実験記録920-01 - 日付20██/2/28

対象: Dクラス職員のSCP-920-JP被験者(D920-01と指定)
実施方法: 進度5に達したD920-01をサイト-81██最寄の海岸付近へ誘導。出現したSCP-920-JP-b(SCP-920-JP-b-1と指定)をサイト-81██の生簀へと搬送し、飼育と生態観察を試みた。
結果: SCP-920-JP-b-1は与えられた餌を食べながら5日間生存したが徐々に衰弱し6日目に死亡。死体は陸上で死亡した場合よりも早く1時間ほどで腐敗した。
分析: 6日間の観察で得られたSCP-920-JP-bの生態を鑑みるに、死体の腐敗が異常に早い点を除けば一般的なクジラと変わらない性質を持っているようだ。やはり回遊性の大型鯨類を生簀で飼育することは個体に多大なストレスをもたらすらしい。腐敗が早かったのは水中にあったためか。これより海洋での生態観察実験を計画する。 -██博士

実験記録920-02 - 日付20██/10/1

対象: Dクラス職員のSCP-920-JP被験者(D920-02と指定)
実施方法: SCP-920-JP-bを出現に導く手順は実験記録920-01と同様。出現したSCP-920-JP-b(SCP-920-JP-b-2と指定)に各種計測装置を取り付けたうえで海に入水させ、その後の生態を観察する。
結果: SCP-920-JP-b-2は太平洋から赤道方面へ南下した。██日後、約1000kmの南下が観測されたのを最後に、装置からの発信が途絶えたため追跡不能となった。
分析: 一般的なヒゲクジラと同様に、冬の間は暖かい赤道付近で過ごすのだろうか。回遊ルートや他のSCP-920-JP-b個体の生息の有無の特定は不可能か。 -██博士

補遺1: 実験920-02において追跡不能となったSCP-920-JP-b-2個体については現在も捜索が続けられていますが、有用な手掛かりは得られていません。

補遺2: 実験920-02において特異性を消失させたSCP-920-JPを保管し、経過観察をしたところ、被験者の死亡から██か月後に奥付ページが新たに付加され、以下のような記述が加えられていることが確認されました。

大辞海

[判読不能]年4月25日 初版発行
200█年██月██日8 初版第██刷発行
編者 ██ ██

以降、実験の完遂にかかる期間の長さと、新たに有用な情報を得られる期待ができないことから、SCP-920-JPを用いた実験は停止されています。

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