アイテム番号: SCP-928
オブジェクトクラス: Euclid-exsequi
特別収容プロトコル: SCP-928は、サイト-80に存在する3m×5mの収容室の遠い端に位置しているガラス製のショーケースで保管されます。ケースは、2つの鍵を併用することによって解錠することができます。これらの鍵は、現在ショート研究員とカプラン研究員によって管理されています。SCP-928が相互作用を起こす時は、少なくとも2人の職員が立ち会っている必要があります。
SCP-928は、音声と視覚の面で常に監視されていなければなりません。記録はサイト-80の職員によって分析されます。
SCP-928によって口述されるチェスの動きは、文書928-3に記録されなければなりません。SCP-928が行っているゲームを再現する試みは、現在進行中です。
説明: SCP-928は、主に陶器と布で構成されている人形です。人形の目は動くことが可能で、通常は周囲に近付いた人間を目で追います。SCP-928はそれ以外に身体的な異常性は持ち合わせていません。
SCP-928は口を動かすことはできませんが、発声することが可能です。これらの発声は人間の中年男性のものと似ており、現在まで未確認のアクセントを持ち、一般的におしゃべりまたは何らかの説明の要請によって構成されています。背景のノイズを抽出して得られたデータの解析に基づき、SCP-928は十把一絡げの音を出しているというよりは、何らかの記録を再生しているのではないかと考えられています。注目されている背景のノイズは以下の通りです。
- おそらく遠くからのものと思われる爆発音や、重機あるいは地質学的なもの、気象現象と一致する鈍い音。
- 未確認の、おそらく若い女性のものだろうと思われる声。通常警報音と共に聞こえる。
- 高品質な変更を加えられたピアノと思われる楽器によって演奏される様々な音楽。人間の歌との類似点も指摘されたが、従来の楽器の音とは完全に一致しなかった。
- 紙に走り書きをしているような音。
SCP-928は定期的に、カパブランカ・チェスのゲームの駒の動きと一致する命令を出します。ほとんどの場合、命令は数週間から数ヶ月に渡って出されますが、命令から命令の間隔は3時間から8年に渡ります。命令は正式なチェスの表記法に必ずしも一致しませんが、理解をすることは可能です。
SCP-928が行っている対戦の状況と、口にする内容との関係ははっきりとは確立されていません。また、現在財団職員と会話しているとは考えられていません。重要であると考えられていない発声については、文書928-6で見ることができます。SCP-928を支配している実体およびその情報を確認することはできませんでした。
被験者がSCP-928の周囲3m以内に近付くと、SCP-928は消失し、数秒後に被験者の隣に再出現します。しかし、その範囲に少なくとももう1人いた場合、SCP-928はこの振る舞いを見せません。この振る舞いに曝露した被験者のおよそ65%は、曝露より4日のうちに様々な手段を用いて財団の監視下より脱し、戻ってくることはありません。財団の監視下に留まった残りの35%は、誰一人として死亡せず、またいかなる種類の降格も受けませんでした。
確認することは技術的に不可能ですが、SCP-928の行動のタイミングと[編集済]の配置より、SCP-928の命令が現実世界で発生した出来事と対応していることがおおよその点で認められています。
セキュリティ・ミーム: 情報が盗まれ、隠されています。状況は改竄を示しています。競合状態にあります。
補遺: 以下のリストは、SCP-928が行った発言を部分的にまとめたものです。
日付 |
発言 |
1947/9/13 |
私の最初の試みがここで行われるのではないことが嬉しい。 |
1958/3/19 |
私たちはいかなる場合も来訪者を望んではいない。 |
1968/3/30 |
このような性質の制御。それは飼い慣らされるべきだ。 |
1977/11/19 |
このコード、暗号文は破壊することができる。 |
1985/9/11 |
粉々に砕け散った、にもかかわらず姫は不屈だ。 |
1992/1/8 |
助けが必要か?私は役に立つぞ。 |
1998/10/15 |
お前と私は後々再び遊ぶべきだ。 |
残りの記録は、追って通知があるまで秘匿されます。
補遺: SCP-928の口にした駒の動きと現実に起きた出来事の仮定的な関係を示した部分的なリストです。
日付 |
駒の動き |
関係があると仮定された出来事 |
メモ |
1946/6/8 |
キングとルークの位置の入れ替え |
SCP-928が財団により確保、収容 |
なし |
1951/9/28 |
アークビショップを1BからC3へ |
国連の委任による世界オカルト連合の設立 |
動きは白側の拠点を固めるためのものだった。 防御の陣地は[データ削除済]の終わりに割譲された。 |
1989/11/9 |
チャンセラーをD3からD6へ |
ソビエト当局によるベルリンの壁の開放 |
白のチャンセラーの直前の動きに関する調査は進行中です有益な情報を得られませんでした。 |
1999/11/7 |
ポーンをF3からE4へ動かしポーンを取る |
インシデント████-███ |
[データ破損] |
2004/10/27 |
ビショップをI7からJ8へ動かしビショップを取る |
ボストン・レッドソックスがワールド・シリーズで優勝 |
駒の動きは、黒のビショップを取る為と推測される白のビショップの3回の動きに続いた。 |
2007/12/9 |
ポーンをC7からC8へ動かし、クイーンに成らせる |
記録はO5-13O5-1の指示により秘匿 |
記録はO5-13O5-1の指示により秘匿 |
2007/12/13 |
ビショップをC8に動かしクイーンを取る |
記録はO5-1の指示により秘匿 |
ポーンから成ったクイーンが12/10に黒のクイーンによって取られたと推測される。追加の資源は、問題のビショップの考えうる正体を研究するために割り当てられた。 |
残りの記録は、追って通知があるまで秘匿されます。
補遺: SCP-928のプレーしたゲームの分析からの抜粋です。
文書は、チェスの戦術と戦略をよく知らない研究員や管理者のために、読みやすさを向上させるための修正が入っています。
……存在するはずのゲームの状況と敵側の駒の動きについての情報が非常に不完全なためにSCP-928の戦略の確認が困難である間、私は、SCP-928が高度なスキルを持ち合わせていない場合、少なくとも非常に良い印象を与えるプレイをしているという結論に思い至りました。私はその案をカプラン研究員とおおまかな共有を行いました。それは中央のマスを占拠しているようには見えませんが、外側からそれらを制御しているように私は思えます。その戦術はかなり現代的な流派から影響を受けていると提唱します……
概ね、私が強いて評価を行うならば、このプレイスタイルはアレヒンのものを特に思い出させますが、アレヒンは生涯カパブランカ・チェスをプレイしなかった上、私がその形式の戦法の使い手を熟知している訳ではないので、断言することはできません。私が研究を行うに当たって必要な情報の欠如があるのならば、これ以上の成果は期待できないでしょう……
……私は黒側の人物について、SCP-928よりも技術が上であるということを除けば言及することができません。SCP-928がとても戦術的に正確なプレイをしている間、敵側はプロフィラキシスを取るようで、大部分の白側の戦術を邪魔します。黒側は白側よりもいくらか多くの空間を制御しており、主導権を握っているようです……
……要するに、黒側が白側よりもいくらか多くの駒を持つ間、それらをより効果的に利用して白側に勝る戦略的な利点を得ます。そして私はそれを、結果として敵側の知識が白側の理解よりも優れているということになるのではないかと考えます。我々がゲームの状況をかなり取り違えているか、白側が少しばかり予想外の技術を示さない限り、白側はおそらく30手以内に敗北するでしょう。私はそのことが人形自体、あるいは我々が所持していることを考慮すれば財団に対して何をもたらすことになるか、はっきりと言うことはできません……
署名
レスター・ショート研究員
ページリビジョン: 4, 最終更新: 10 Jul 2022 11:46