SCP-930-JP
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アイテム番号: SCP-930-JP

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル: SCP-930-JPは現在紙に書かれた状態でサイト-8107内の低脅威物品保管ロッカーにて保管されています。SCP-930-JP-1の作成のためにSCP-930-JPを使用する際は、指定された用紙にレベル2以上の職員がSCP-930-JPを書き写し、実験終了後その写しを速やかに焼却処分してください。SCP-930-JP-1の作成は財団フロント企業を通じて購入された材料を使用した上で密閉機構付きの実験室内で作成し、Dクラス職員を用いて消費してください。SCP-930-JPに接触した職員は、食品管理を伴う作業を行うべきではありません。またSCP-930-JP-1を消費した者についてはBクラス記憶処理ののち、収容チームによる継続的な監視を行います。

説明: SCP-930-JPは岐阜県███地区の山間部に伝わる魚の調理法です。SCP-930-JPは保存食の一種である「なれずし」の調理手順に酷似していますが、使用する魚を鯛に限定しています。また作成材料に塩分を含む調味料を用いないこと・1時間ごとに███と人の手で20分の攪拌を行い、これを14日間続けるなど類似する調理法よりも煩雑な手順を経るため、このSCP-930-JPが偶然再現される危険性は低いと考えられています。

SCP-930-JPの手順に従って材料を調理した場合、SCP-930-JP-1を作成することができます。SCP-930-JP-1は一般的な「なれずし」と同じ形状を持ちますが、通常の調理法で作成された場合の数倍の刺激臭を発生させ、周囲の人間から一様に不快な反応を引き出します。これらの反応は調理に鯛以外の魚類を使用した場合でも同様であり、ほかの魚類を使用した場合において、SCP-930-JP-1は特異性を表さず、調査を行った研究者によって「腐敗が進行した」状態であると称されました。SCP-930-JP-1も一見腐敗しているように見えますが、摂取した人物はたいていの場合SCP-930-JP-1の味について好意的な反応を示します。なかでも摂食者のコメントに「ほどよい塩加減」など、使用していないはずの塩分についての言及が多くみられることに留意してください。一度SCP-930-JP-1を摂取した人物は前述の刺激臭について好意的な感覚を覚えるようになります。

SCP-930-JP-1の特異性は、摂取者消化器官に対して現れます。食品の腐敗によって発生する細菌や成分の変質などによって生成される毒素、寄生虫、自然毒を経口摂取した場合、摂食者はそれらの要因による身体的ダメージを受けなくなります。例をあげると

  • O-157への汚染が確認された生肉
  • アニサキスに寄生されたイカ
  • ボツリヌス毒素が確認されたはちみつ
  • ソラニンを含むジャガイモ

などを摂取した際に通常発現すると考えられる症状(下痢・嘔吐・発熱・血便・幻覚)などといった症状が発現することなく、摂取物が消化された状態で体外に排出されます。摂食者に対する検査において体内から摂食した物質に由来する毒素は検出されず、寄生虫やアメーバについては体内に侵入してから排出されるまで、活動レベルが低下し休眠状態を保ちました。ただし排泄物には前述の要素が残留しているため、人体に悪影響を及ぼす要因を無効化するというよりも、消化器官中において、これらの要因を阻害する選定機構や分泌物を生成し、免疫機構への反応が発生しないようになんらかの調整が行われていると考えられます。味覚に対しても、腐敗が確認された食品の味への異常な鈍性を付与し、摂取者はこのことについて尋ねられると「まったく気にならない」「食品は発酵しているほうが体にいいし、味も良い」などといった返答を返します。

これらの肉体的変化によるものなのかは不明ですが、摂取者は食品の鮮度や保管方法について無関心になります。例としては「異臭のする牛乳を飲用する」「変色した野菜類を塩漬けにして提供する」「[削除済み]が発生した牛肉を[削除済み]」など社会通念的に異常なレベルに達します。さらにこれらの食品管理について他者から指摘されると論点がかみ合わない会話を行うなどしてまったく取り合おうとせず、食品管理を改善させようとする行動(冷蔵庫に入れる・傷んだ食品を捨てる)に対しては執拗な罵倒や涙を流しながらの抗議と言った激しい感情表出を行い、周辺の他者への致命的な暴力を伴う可能性があります。

以上の点からSCP-930-JP-1の摂取者は社会的・衛生的に甚大な悪影響を及ぼすことが懸念されています。

経緯 SCP-930-JP-1が財団に認知されたのは19██年の、███地区のキャンプ場で提供された川魚の刺身によって緊急搬送4名、死亡者█名を出した集団食中毒事件で、提供された生魚が寄生虫の危険性から生食向きでないとされていることや、利用客の「料理を残したら、キッチンからコックが包丁を持って追いかけてきた」といった証言などから財団エージェントが調査に乗り出し、郷土料理として食べられていたSCP-930-JP-1の発見に至りました。材料の一般性と、調理手順が煩雑ではあるものの誰でも作成できるといった特性により、SCP-930-JP-1の調理法を収容することが決定され、

  • ███地区の住民に対する記憶処理
  • SCP-930-JPの記載が確認された書物の破棄

を行い、代わりに特異性が発現しないようアレンジされたレシピを配布しました。
幸い███地区が日本アルプスの山々に囲まれた僻地であり、定期的な往来が行われるようになったのが19██年代からであったことや、住人の減少による人手不足からSCP-930-JP-1の調理が困難になっていたこともあり収容は比較的容易に行われました。この処置については地元住民の「以前と味が変わった気がする」という証言以外に何の痕跡も残していません。███地区においてSCP-930-JP-1は「食べ物に苦労することがなくなる」縁起物とされており、事実███地区における飢饉による死者の記録がほとんど確認されないのはSCP-930-JP-1の特異性によるものだと考えられます。

収容違反記録-0157
20██年、インターネット上のレシピ投稿サイトにSCP-930-JPとみられるレシピが投稿されました。収容チームの対応により、投稿されてから12時間でこのレシピは削除されましたが、削除時点で██件の作成レポートが投稿されており、SCP-930-JP-1が作成された恐れがあります。このレシピにおいてSCP-930-JP-1は市販の鯛の握りずしを材料として用いており、調理法においてボタン電池とベーキングパウダーを用いた[削除済み]によって、本来煩雑な手順を要するSCP-930-JP-1の作成の単純化に成功していました。この事案に対して財団はカバーストーリー「行き過ぎた自然食志向」を流布し、エージェントによる当該レシピに向けての低評価の集団投票や、実食レポートの作成、特異性を持たなくするアレンジレシピの投稿などの情報工作を行いました。

幸い、収容に向かった先の家では買ってきた鯛の握りがティラピアを使用した偽装品だったこともあって、SCP-930-JP-1の作成は認められなかった。まだ臭いがとれない。 エージェント-魚住

アレンジレシピのネタが間に合わなくなってきたというのはわかりますが、鬼食料理長への応援要請は却下します。 ███ 博士

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