SCP-951-JP
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発見初期のSCP-951-JPの子実体

アイテム番号: SCP-951-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-951-JPの自生区域は自然保護区に指定し、監視所を設置します。自生区域は高さ2.5mのフェンスで囲み、定点観測カメラによって監視を行ってください。侵入者を発見した場合、監視所に駐留している警備員によって取り押さえ、尋問を行った後にクラスA記憶処理を施した上で解放してください。もし尋問において侵入者がSCP-951-JPの子実体を摂食したことが判明した場合は、サイト-81██の標準収容房に移送して監視を行ってください。SCP-951-JPの子実体を摂食した上で1年以上生存することに成功した人物の遺体は、可能な限り速やかに焼却処分を行ってください。

6ヶ月に1度、財団エージェント2名に自生区域内に発生しているSCP-951-JPの子実体を回収させてください。回収した子実体は10%をサイト-81██にて保管し、残りは焼却処分を行います。SCP-951-JPの子実体を摂食させる実験は現在禁止されています。

説明: SCP-951-JPは、ドクササコ(Paralepistopsis acromelalga)に類似した特徴を持つ菌類です。胞子を採取して培養を行う試みは今のところ成功しておらず、詳しいDNA構造などは判明していません。現在██県旧██集落の森林部においてのみ自生が確認されています。

SCP-951-JPのつくる子実体は人間の腕部に酷似しており、主に樹木を抱え込むような形態で発生します。SCP-951-JPの胞子は爪に当たる部分で生成されていることが判明していますが、胞子が成長し子実体を生成する過程は今まで確認できていません。子実体を切断すると人間の組織に似た構造が観察できました。また、樹木と接している面は非常に強力に接着しているため、自然界に自生している子実体に存在すると考えられる、指紋や手相などの要素は子実体の回収の際に破壊されてしまい判別が困難になります。

SCP-951-JPの子実体を摂食した場合、摂食者はおよそ1ヶ月後に身体の痛みを訴えます。この時、摂食者が痛むと訴えるのは、本来は存在しないはずの肢体であり、摂食者は中腕、第三腕、分岐肢などといった言葉でその部分を表現します。これらの存在しない肢体は、摂食者の証言をまとめたところ上半身に集中しており、財団が把握している範囲内では下半身に出現したことはありません。また、この現象は非致死性のものですが、痛みは1年間継続します。そのため、自己終了を試みたり、終了を願い出る被験者も数多く居り、10人の被験者のうち1年間生き延びることに成功したのは1人のみでした。この子実体を分析したところ、人体を構成する成分に加え、不明な成分が含まれていることが判明しており、これが存在しない肢体の幻肢痛を誘発していると考えられています。

また、事案951-JP-1により、SCP-951-JPを摂食したことにより生じる痛みに1年間耐えきった後に死亡した場合、摂食者の死体は新たなSCP-951-JPの菌床となることが判明しました。これにより特別収容プロトコルは改正され、現在の形のものが確立されました。詳細は事案記録を参照してください。

SCP-951-JPは山野の散策を趣味としているエージェント・浅津によって██県旧██集落の森林部において偶然発見され、財団が調査を行った上で収容を行いました。かつてSCP-951-JPは旧██集落において「シガミツキ」と呼ばれており、森林部に立ち寄ることは独自の習慣の際を除いてタブー視されていました。旧██集落でただ1人生活していた栗田氏にはクラスB記憶処理を施しています。

補遺: 以下のインタビューは、SCP-951-JPの発見時に行われたものです。

対象: 栗田 ██氏(84歳男性、旧██集落にてただ1人生活していた)

インタビュアー: エージェント・浅津

<記録開始>

栗田氏: よくこんな何もない山奥までおいでなさった。ささ、上がってください。

A.浅津: いえ、ここで大丈夫です。栗田さん……でしたよね?ここの森林に生えているモノについて何かご存じですか?

栗田氏: [沈黙]

A.浅津: 栗田さん?

栗田氏: あんた、森の方に行っちまったのかい。そりゃあ縁起が悪いぞ。山を降りてからでもいい、寺か神社でお払いしてもらいなさい。

A.浅津: はい、ご忠告感謝いたします。しかし私の質問には答えて頂けては……

栗田氏: 今から話すから待ってくださいな。あの森はな、昔この██集落のモンが死んだときにその死体を埋めるしきたりがあったんですわ。

A.浅津: それは死体遺棄では……

栗田氏: もちろん今はやっとりませんよ。みんな麓に用意された墓に入っとりますがな。……少し話が逸れましたがね、そんな風に昔は墓にされてたからか、あの森には幽霊がでるという話になりまして。江戸時代ごろの話と聞いとりますが……それを確認するためにあるとき集落のモン全員で森に入っていったと。

A.浅津: するとどうなったのですか?

栗田氏: そこら中の木に腕が巻きついとったそうですわ。もうすごいことだったと。気を失うモンもいたと。まあそりゃあそうですわな、人間の手だけが木に巻き付いてれば。でもその内の肝のある1人が気付いた訳ですな。「こりゃあ幽霊でない、触れる」と。

A.浅津: その後、彼らは幽霊でないことに気付いてどうしたんですか?

栗田氏: それでも怖いことに変わりはなかろうて。ならばそれはなんだ、腕には変わりない、幽霊でないならなんなんだと、みんな森からは逃げたそうで。それからその腕は死んだモンがここから離れたくなくて必死にしがみついてるんじゃなかろうかと「シガミツキ」と呼ばれるようになり、その後死体を埋めるとき以外には森には立ち寄らんことにしたそうですわ。

A.浅津: そうでしたか、ありがとうございます。

栗田氏: あ、そうそう。

A.浅津: はい?

栗田氏: 飢饉の時には食べとったという話もありますよ。まあ、後々になっていろんなところが痛むということで、やはり死人の怨念がどうとかいう話になったみたいですがな……

A.浅津: ……そうですか、ありがとうございます。

<記録終了>

事案記録951-JP-1: 20██/██/██、SCP-951-JPの子実体を摂食し1年間痛みを耐えきることに成功していたD-951-06(48歳男性、殺人罪)が不慮の事故により死亡した際、遺体安置所に一時的に放置したところ、遺体安置所がSCP-951-JPの子実体に覆われるという事案が発生しました。子実体は以前D-951-06が痛むと訴えていた部分から生えて広がっていました。また、ガラスに張り付いていた子実体の指紋を分析したところ、D-951-06本人の指紋を持っているものの他に、D-951-06に殺害された被害者のものが混じっていることも判明しています。

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