アイテム番号: SCP-CN-106
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-CN-106は現在、サイト-CN-34の5号高価値物品保管ロッカーにて収容されています。想定外の損傷を防ぐため、実験は3名以上のセキュリティスタッフによる監視を受けなければなりません。
ロッカー内には全天候型の監視カメラを設置してください。SCP-CN-106がロッカー内から消失した場合、ただちにサイト管理官へと通報しなければなりません。その後は公務員らの日常行動を全国的に監視し、適切なタイミングでオブジェクトを回収してください。
説明: SCP-CN-106は厚さ16.4センチメートルのヒスイで、既知のどのヒスイよりも高い純度を有しています。形状は荒削りな璞玉はくぎょく1となっており、正面には戦国時代の文字が未知の工具によって刻まれています。
SCP-CN-106の背面に刻まれている文字は補遺-106-aに記録しています。
SCP-CN-106の異常性は、政治的欲求を強く抱く人物の元へと瞬間的に出現し、精神影響と思しき手段を用いて、政治目標の達成を支援することにあります。オブジェクトは以前、中華異学会が収容しており、異学会が財団に合流してからは、サイト-CN-71において保管されていました。しかし2000年3月、オブジェクトは突如としてサイト-CN-71の収容ロッカーより消失。20██年7月、中国湖北省の男性・李██の住所において再び収容されました(詳細はインタビューログ-106-5を参照)。
付録-106-a:
背面の戦国文字 | 示唆されていると思しき人物 | 備考 |
---|---|---|
勇 | 卞和 | 刻まれた文字の年代より推定されたもの。以下同様 |
礼 | 商鞅 | 文字を記録した際、オブジェクトは5分間、白く発光した |
忠 | 藺相如4 廉頗5 | 「藺相如」と記載した際、オブジェクトは赤く発光。 「廉頗」に直すと、オブジェクトは5分間、白く発光した |
仁 | [データ削除] | 閲覧はレベル4以上の職員に限定される |
智 | 梅██ | 東京裁判期の日記において、オブジェクトに対応する資料が見つかっている |
孝 | [データ削除] | 閲覧はレベル4以上の職員に限定される |
信 | [データ削除] | [データ削除] |
義 | 李██ | インタビューログ-106-5を参照のこと |
備考:
分類「義」において見られたSCP-CN-106の異常な反応は、同オブジェクトの「国士」に対する定義を示唆しています。有名な『廉頗・藺相如列伝』を挙げますと、誰の目にも明らかなことですが、著者は藺相如の文武知勇に重点を置いています。廉頗に対する描写のほとんどは藺相如を取り巻くようにして展開されており、廉頗を主体とする記述は下記のような短いものに留まっています。
廉頗送りて境に至り、王と訣わかれて曰く、「王の行く道の里りを度はかるに、会遇の礼畢おはりて還るまで、三十日を過ぎざらん。三十日にして還らずんば、則すなはち請ふ太子を立て王と為し、以て秦の望みを絶たん。」と。
オブジェクトにとってみれば、現君主の面前で「貴方が戻って来なければ、私は国家のことを鑑み、貴方を助けには行かず、代わりに太子を王に立てる」などと言ってのける武将は、時の趙王ではなく「君主」という概念に忠実なのかもしれません。今後、オブジェクトが消失した際は、こうした性質を利用することで、より高効率な捜索・収容が望めるでしょう。—サイト-CN-34レベル3研究員ハンナ博士