SCP-CN-510
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アイテム番号: SCP-CN-510

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: 財団は携行武器を持たせたエージェントを、3ヶ月毎に総入れ替えする形でSCP-CN-510へ派遣し、SCP-CN-510が月の裏側に留まり、月と同一の公転運動を続けるよう、SCP-CN-510内部住民の協調を手助けしなければなりません。SCP-CN-510に派遣されたエージェントは、SCP-CN-510内の安全と秩序を維持し、持続的に収容できるよう務めてください。収容違反を招くような非常時を除き、エージェントがSCP-CN-510内部の制度や運営に干渉することは許可されません。

説明: SCP-CN-510は起源不明の、未知の動力機関を備えた1隻の超大型宇宙船です。未知の材質で建造されており、外観は高さ約50km、長さ約120kmで、底面を縦にした正三角柱の形をしています。SCP-CN-510は財団による暫定措置として、月の裏側に留まり、月と同一の公転運動をとるように制御されています。SCP-CN-510の表面構造は非常に複雑であり、長期に渡る航行の中で、度重なる補修を受けたことに因むものと推測されています。船体外部には常識的な科学の範疇を超える武装が認められないことと、明確に5層に別れた通路および、ハッチと思しきアプローチが存在することが、観察を通して判明しています。潜入エージェントの報告によると、SCP-CN-510の内部には生活設備が備わっており、自立した生態系が存在します。SCP-CN-510は5つの階層に大別され、最下層から上の階層に行くほど、生活環境や居住空間、基礎設備、物資供給、技術水準及び教育インフラ等の質は次第に高まっていきます。

SCP-CN-510内部には、種族を異とする5つの知的生物が居住しています。現時点では正確な人口統計データはとれていません。どの種族も自種族のことを”ココカラド”と自称しますが、それぞれ形質が異なっていることから、財団では暫定的にCN-510-1﹑CN-510-2﹑CN-510-3﹑CN-510-4﹑CN-510-5と呼称しています。推測では、これらの種族は同一の種族が長い時間をかけ、種分化したものだと考えられています。一連の情報から判断すると、SCP-CN-510は難民船であり、5種族の先祖の母星は不明な時期に、不明な原因で、生存に適さない環境になったものと考えられます。初期観察を基にした推測では、SCP-CN-510を建造した文明は、人類の技術水準を優に超えていたと考えられます。しかし、SCP-CN-510内部に保存されているデータは、多くが経年劣化しているため、解読できた情報は極僅かに限られます。財団によって発見された後、1体のCN-510-3が財団との接触と連携を図ってきました。財団はこのCN-510-3個体を介することで、CN-510-5との交信と協議に成功。SCP-CN-510が月の裏側に隠れ、同一の公転運動をとり続けること、また、住民に対する”受容”と”救済”について配慮することを条件に、SCP-CN-510の内部観察の為に財団が人員を派遣することが許可されました。以下は派遣されたエージェントが報告した情報です。

CN-510-1 CN-510-1は人型脊椎動物に似た姿をしており、柔軟性・可塑性のある組織と、黒くて堅固な皮膚を持ちます。胴体の胸元と思しき部分には、身体と比べて非常に矮小な頭部が嵌っています。6本の発達した腕のような肢体と、歩行や爬行に用いる4本の触手を有しており、いかなる肉体労働にも適した身体となっています。CN-510-1は生まれつき忍耐強い代わりに、愚鈍な性格をしており、彼らは比較的簡単な作業にしか従事できず、教育を受ける権利もありません。しかし、噂によると、CN-510-1はかつて、非常に聡明な種族であったと言われています。CN-510-1は極めて酷い生活環境にあり、物資供給の少なさから、一部は共食いを行うこともあります。設備も粗末な作りであり、更にはCN-510-1に処理させるため、上層からの廃棄物や汚物が集積しています。長い歳月の中で、CN-510-1はこうした劣悪な環境に適応したかのように見えますが、死亡率については高止まりしており、CN-510-1の腐乱死体が随所に散見されています。CN-510-1が依然として絶滅しない原因は、彼らの驚くべき成長速度と、人間倫理に反した養育観念にあると見られています。留意したいのは、SCP-CN-510内部の資源は有限であるため、構成パーツの損壊や、スペアパーツが無くなった時には、適したCN-510-1が”有機パーツ”として用いられることになるという点です。
CN-510-2 CN-510-2は猿人と思しき人型脊椎動物に似た姿をしています。彼らはSCP-CN-510の下から2番目の階層で暮らしており、内部の生産活動を担当しています。CN-510-2は人工耕地や工場において、およそ12時間おきに2時間ほどの休憩をとり、およそ60時間おきに7時間ほど、上層にて生産技能に関する教育を受けます。CN-510-2の生活環境は、CN-510-1よりは遥かに快適なものですが、依然として不自由な生活であるため、上層の種族に対する不満の声が多く聞かれます。CN-510-2に関しては、以下の2点に留意してください:1. 一部のCN-510-2が、自主的にCN-510-1に対する喜捨を行っていること。 2.CN-510-2の社会の一部については、武装したCN-510-4が担っていること。
CN-510-3 CN-510-3は5種族の中で、最も高いIQを持つ種族です1。彼らは普段、多数のマニピュレーターが取り付けられた、パワースーツの中に自身を格納しており、間近で見ても、その外見を知ることはできません。CN-510-3はSCP-CN-510全体の保全を担当しています。農工業の生産指導、設備設計・管理・維持計画、科学研究及び発明……等といった、高い知的水準を要する一連の作業を統括しており、関係上、CN-510-3はCN-510-1とCN-510-2の“上司”にあたります。CN-510-3の居住区はCN-510-2の居住区と大きく隔てられており、通常は、CN-510-2群の中にいるCN-510-4との連絡を通して、下達指示を行います。CN-510-3には、下層の住民に接触する権利がありません。財団がSCP-CN-510を発見した際、すぐに1体のCN-510-3が上層のCN-510-5へ連絡したことで、2者間の協議が可能となりました。CN-510-3は未知の言葉を短時間で翻訳できるほどの言語能力を備えているため、通訳や外交官の役割も果たすことができます。CN-510-3の生活環境は下層と比べ、見違えるほど良好であり、その上、多大な貢献をしたCN-510-3には、1層上の区域で生活する権利が与えられます。2
CN-510-4 CN-510-4はSCP-CN-510の上層で生活しており、物資と設備の多くはこの区域に集中し、使用されています。彼らの外見は人型脊椎動物に類似し、壮健な身体と、寸胴な四肢、及び細長い頭部を有します。CN-510-4は5種族の中で唯一、武器を擁する種族です。彼らはCN-510-5に対し、絶対的忠誠を誓うばかりか、救世主として崇拝しており、下層の安全と秩序を維持する使命を負っています。SCP-CN-510内部で生産された、あらゆる武器は、CN-510-4の三叉の手指にのみ適合します3
CN-510-5 CN-510-5はSCP-CN-510を制御している種族です。肥大化した頭部と矮小な四肢を持ち、車椅子に似た装置を通じて活動しています。脊椎部分は著しく退化していますが、辛うじて人型脊椎動物の外見が見てとれます。CN-510-5は極めて少人数ながら、SCP-CN-510全体を掌握しており、いかなる資源も利用できる特権を有しています。他の種族は決して入ることのできない最上層に、彼らの居住区が存在します。CN-510-5はかつて、5種族の中で最も賢い種族でしたが、長い歳月を経て、脳が徐々に退化していき、今では自分達が何故退化したかについても正しく説明できないほどに、知能が低下しています。CN-510-5が肉体・頭脳労働に従事する様子は全く見られないため、彼らは最上層にて娯楽の享受を担当していると考えられています。

補遺:

エージェント・華との通信ログ:

エージェント・華:SCP-CN-510の中にいる。私が班を代表して、SKiP内部について現時点で知り得た情報の一部を報告する。我々は上層にて好待遇を受け、CN-510-3及び、CN-510-5との交流にも成功したが、今日まで下層に進入する権利は得られなかった。しかしつい先程、彼らとの話し合いにより、条件付きで3日間の視察期間を貰うことができた。

司令部: 目的地には着きましたか?——5.8

エージェント・華: 既に、CN-510-2の居住区にいる。我々が着いてから、もう7時間ほどが経った。得られた情報について報告したいと思う:我々はCN-510-2がCN-510-3から与えられた設計図を基に、CN-510-4が使用する武器を製造していることを把握していた。しかし今日、私は彼らの宿舎(CN-510-4がCN-510-2を全員追い出してくれたので、中を調べやすくなった)において、5本指でコッキングするタイプの“銃”(我々向けではない)を発見した。これは厄介な代物だ。特別な協力でも無い限り、CN-510-2がこれを作ることは不可能なはずだ。——5.8

指挥部: 続けて報告してください。——5.8

エージェント・華: 任務遂行を鑑みて、我々はいかなる住人にも“銃”のことは漏らしていない。——5.8

司令部: 大変結構。視察を続けてください。——5.8

エージェント・華: 現在、我が班は5人全員が、SCiPの最下層に到達した。ここの状況は最悪だ。後ほど、もっと詳細なレポートで説明すると思うが、今すぐに伝えなければならないことがある。……視察の中で、偶然ながら発見した事実が、いくつかある。一つは、最下層へ投棄される物の中に、金属製品といった、武器として十分に使える物品が増えつつあること。もう一つは、CN-510-2とCN-510-1の居住区間における人員の通行が、最近、非常に活発化していることだ。——5.9

司令部: 更に踏み込んだ調査をすることは可能ですか?——5.10

エージェント・華: 申し訳ないが、それは無理そうだ。我々は今日、止むを得ず上層に帰還した。……1人のCN-510-4が、CN-510-2と揉み合っていた所、鈍器で頭部を殴打され、殺害された。CN-510-2の反抗心は、以前からずっと存在していたが、それでも今日の群衆が見せた組織力・行動力は、前とは明らかに異なるものだった。報告終わり。——5.10

司令部: お疲れ様でした。——5.10

 
CN-510内部通信班からのメッセージ:

司令部へ。指示に基づき、我々はここ3日間、通信を監視し、CN-510-3からCN-510-2居住区へ送られた12件の通信と、CN-510-2からCN-510-3へ送られた2件の通信を遮断した。だが、相手の技術水準を考えるに、少なくとも15件の通信が、我々の監視網を突破している。我々はこの数日で、ようやくこの事実に気付いた。誠に遺憾ながら、我々の技術では、彼らの通信を解読することは困難だ。

 
発信元不明のメッセージ:

我々は願う。邪魔をしないでくれ。これは君達とは関係の無いことだ。

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