SCP-CN-666
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アイテム番号: SCP-CN-666

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: エージェント・程██が食についての禁忌をそれ以上に破るのを防ぐために、毎日、特別に手配された警備担当の同伴の下、サイト-CN-23の二階にある女性Dクラス職員宿舎のトイレで食事を取らせなければなりません。食事の内容は、いかなる形式の改造も施されていない新鮮なブロッコリー(Brassica oleracea var. italica)でなければなりません。食事中、特別に手配された医療スタッフによる静脈栄養の投与と医療看護を行ってください。エージェント・程の非協力的な態度とうつ病の兆候を鑑みて、その日常的な行動全てが厳しい監視体制の下に置かれます。必要であれば、強制的手段を用いて、特につまみ食いや自殺の試みなどは全力で阻止してください。

女性Dクラス職員宿舎のトイレは、トイレとしての機能を維持しなければならないため、SCP-CN-666プロジェクトに参加している女性職員は、特にエージェント・程の食事中に、当トイレを利用することが許可されています。非財団職員やDクラス職員にエージェント・程の存在を知られてはなりません。エージェント・程の家族は記憶処理を施され、退職手当を支払われました。

SCP-CN-666による異常な影響は、既知の手段で取り除くことはできません。あらゆる研究の試みは、大きな成果を上げませんでした。記憶処理により、影響された人物の注意を一時的に引き離すことはできますが、継続的な免疫効果は現れませんでした。エージェント・程本人に対しては、全く無効でした。

SCP-CN-666プロジェクトに所属する職員は、全力でアシャの脚が世界的に消失した原因を突き止め、SCP-CN-666との関連を調査してください。人工的に合成されたアシャの脚を代用品としてエージェント・程に提供する提案がありましたが、コストの問題で取り下げられました。

説明: SCP-CN-666は、元財団中国支部レベル2フィールドエージェント・程を中心とした認識災害と情報災害の特性をもつ心的な異常現象です。オブジェクトに影響された人物は、エージェント・程本人を含め、エージェント・程が遵守すべき食に関する戒律を破らせるような行動を取り始めます。エージェント・程にブロッコリーとアシャの脚以外の食物を摂取させる、またはサイト-CN-23二階の女性Dクラス職員宿舎トイレ以外の区画で食事をさせるなど、異常な行動をとる対象は、自分の行動になんら倫理的な問題もないように思い始めます。

エージェント・程に生理的な異常が認められませんでした。確認され得る唯一の異常は、遵守すべき食に関する戒律を心理的に受け入れられないということだけです。心理テスト及び各種検査において、エージェント・程は高評価を受け、対象の倫理観・道徳観ともに他の異常は確認されなかったものの、通常のモラルに反しているにも関わらず、「別の食べ物がほしい」「食事をする場所を変えたい」と強く希望しています。戒律に対する反発は、本人の観念と明らかな相違があると指摘された際に、対象はひどく困惑し、理解できないと訴えました。

SCP-CN-666の伝染は、非財団職員により程██および対象が遵守すべき食に関する戒律の存在を認識された際に起こります。影響される人物はエージェント・程██本人と同じく、明らかに通常の倫理観に反しているにも関わらず、戒律に反発します。伝染は、程██本人に対してある程度の理解がなければ起こらないため、オブジェクトに情報災害の特性があると推測されています。

具体的に、エージェント・程がトイレで食事をとる光景を目撃する、アシャの脚の意味を知らされる、または対象の財団内におけるポストや名前を認知するだけで、オブジェクトの伝染が起こります(これらは財団という組織を知ることを要件としているため、通常の機密保持条件の下、大規模な伝染が発生するリスクは極めて低いと考えられます)。オブジェクトに影響された人物は、エージェント・程が守るべき規範を、ある種の非人道的な虐待であると判断し、非道徳的行為に対する心的マイナスフィードバックを引き起こされます。対象は、自分の認知に存在する論理的な破綻を知覚することはできません。

特筆すべきは、この異常現象が発生した時点で既に財団に正規雇用された職員は影響を受けない点です。この免疫効果の原理は未だに不明です。これを受けて、異常現象自体がなんらかの敵対団体による工作であるとの仮説が立てられています。

SCP-CN-666の発生と並行して、アシャの脚が世界的に消失する異常現象が観測されました。調査の結果、財団職員が保持している記憶を除いて、地球上にはアシャの脚の実物、記録と記憶は一切残ってはおらず、またそれが存在した痕跡も一切認められませんでした。なお、SCP-CN-666に影響された人物は、アシャの脚に対して異常な認知障害を起こすとの現象も確認されています。対象は関連情報を告知されているにも関わらず、アシャの脚とは何かをまるで理解できないように振る舞います。この現象がCK-クラス:再構築シナリオの兆候であるかはまだ判然としておらず、またSCP-CN-666との関連性もまだ不明です。

上記の状況を受けて、当面ではエージェント・程が摂取することが可能な食物はブロッコリーだけであり、対象は栄養不良と水分不足の危険にさらされています。倫理委員会により、エージェント・程の食事中に静脈栄養を投与し、ブロッコリーで供給できない栄養分を補給することが許可されました。

エージェント・程██が異常現象の中心ですが、異常の原因である確証はありません。事態の重大性を鑑みて、エージェント・程██を異常そのものではなく、異常現象であるSCP-CN-666の被害者として扱うことが倫理委員会により可決されました。対象のレベル2フィールドエージェントとして職務は一時停止されましたが、待遇は保留され、Eクラス職員に編入されました。

発見の経緯: エージェント・程██の異常は2012年10月██に発現しました。当日の朝6時頃、程██がサイトの食堂で広東腸粉1を食しているところを同僚に目撃されました。驚愕する同僚に対して、程██はただ困惑するだけでした。そして食事を阻止された際に、対象はひどく憤り、非協力的な態度を見せました。

対象は警備スタッフに拘束され、隔離された状態で調査を受けました。事態の異常性を受け、倫理委員会サイト代表により、対象が異常性についての調査が終わるまで一時的に二階女子トイレ外で食事を取ることを批准されました。徹底的な調査の結果、この心的な異常は程██個人の精神疾患として診断され、CN-██フィールドエージェント指揮本部による状況確認の末、対象には強制的な心理セラピーが施されました。

隔離が解除された当日の夕食時間に、エージェント・程は食事のため、警備スタッフにより女性Dクラス職員宿舎トイレまで連行されましたが、その場にいたDクラス職員は困惑と不満を見せ、警備スタッフの行動を理解できないと訴え、エージェント・程の所定の場所での食事行為を拒否しました。この一件で、SCP-CN-666の持つ潜在的な認識災害・情報災害的効果が察知され、サイト職員による迅速な対応の後、事件にかかわったDクラス職員に対する事情聴取が行われました。異常性が確認された後、この異常現象はSCPとして認定され、アイテム番号を振り分けられました。

補遺: エージェント・程██の異常状態に対する初期インタビュー記録

下記のインタビューは201█年、エージェント・程に異常が確認された直後に、対象の精神状態がどれだけ影響されているかを調査するために行われました。

回答者: エージェント・程、元財団中国支部レベル2フィールドエージェント
質問者: サイト-CN-23臨床心理士・洪博士

[記録開始]
洪博士: こんにちは、エージェント・程██。今朝の件についていくつか質問をさせてください。なぜ、貴方は急に食堂で腸粉を食べるなんてことをしようと思ったのですか?

エージェント・程: お前ら全員頭がおかしくなってやがる。お願いだ、洪さん。本部かシー・ノー・イーヴルか、何でもいいからミームか認識災害かを対策してくれる部署に救援要請を出してくれ!これは冗談じゃない、頼む!

洪博士: 落ち着いてください。精神疾患者が往々にして自分が正常だと思い込むのと同じように、認識災害に影響された人物は、自力でそれを察知できないことが多いです。財団のエージェントとして、少なくとも異常に立ち向かえるだけの素養を持ち合わせているはずです。どうか冷静になってください。

エージェント・程: 俺は…くそ、落ち着いていればいいだろう?

洪博士: はい。では、さきほどの質問に戻りますが…

エージェント・程: [割り込む]洪博士,まず事情を教えてくれないか?このまま人格破綻者として扱われそうってのに、なんで俺に食事をさせてくれないのかさっぱりわからないぞ。

洪博士: 何も感じていないのですか?Dクラス職員用トイレの外で、ブロッコリーとアシャの脚以外のものを食べて、何も問題に思っていないのですか?

エージェント・程: アシャの脚はなんなのかはともかく、俺は問題に思うべきだったっけ?

洪博士: [1秒の沈黙]アシャの脚がなんなのか知らないですって?

エージェント・程: 俺は…そうだよ、知らないんだよ。もしかしたら俺の方に頭のネジが何本外れてるかもな。

洪博士: いいでしょう。では質問を変えます。女子トイレの外で食事をとることを、非道徳的な行為だと思いますか?先に「はい」か「いいえ」で答えてください。

エージェント・程: いいえ。非道徳的なんかはなから思っていないよ。

洪博士: では、ブロッコリーやアシャの脚以外のものを食べたいとは思いますか?

エージェント・程: はい。ブロッコリーは嫌いだ。アシャの脚は何なのか知らないし、好きな料理も別に腸粉だけじゃないぞ。

洪博士: ほかの食物を…食べているとき、道徳的な罪悪感、もしくは嫌悪感を感じたりしますか?

エージェント・程: いいえ。

洪博士: もし、貴方が女子トイレでブロッコリーとアシャの脚を食べるべきだ、といわれましたら、貴方はそれを受け入れますか?

エージェント・程: どうしてもって言うんだったら別に構わないぜ。食ったら死ぬようなどこぞのモンスターの肉でさえなきゃ、人間の肉だって食ってやるよ。

洪博士: では、貴方にそうするべき道徳的義務があるとは思いますか?

エージェント・程: いいえ。

洪博士: [沈黙]エージェント・程,何の理由もなく罪のない少女を強姦したのち殺害するという行為に対して、貴方はどう思いますか?

エージェント・程: ひとでなしだとは思うよ。

洪博士: 財団に処置110-モントークを実施する絶対的な必要性がない場合、貴方はそれを実施することを選びますか?

エージェント・程: いや、断固として反対だ。

洪博士: ならなぜ、貴方が守るべき食に関する戒律を破ることを許容できるのですか?これらの行為は、倫理的には同等であると分からないのですか?

エージェント・程: [3秒の沈黙]…洪さん,お前はどう思う?

洪博士: 私は、貴方の倫理観に深刻な倒錯があるように思えます。戒律にそむくことはどれだけ唾棄すべき悪行であるかは、貴方は完全にわかっていません。

エージェント・程: ならお前はどうだ?毎日ブロッコリーを食うと?しかも女子トイレで?

洪博士: いいえ。貴方だけです、財団レベル2エージェント程██。全人類の中で、このような規律を守らなければならないのは貴方だけです。これは極めて普通なことです。全ての道徳的義務を全人類が守るべきというわけではありませんから。

エージェント・程: 俺が守るべきという規律なんて決めたのは誰だ?我が親愛なるO5の連中なのか?

洪博士: いいえ、エージェント・程。これは人を殺してはいけないというのと同じく、特定の誰かに決められたルールではなく、通常の人間なら誰も知っている根本的な原則です。強いていうなら、それを決めるのは社会全体、ということになりますね。

エージェント・程: だから社会全体が俺一人のために道徳原則を作ったと?こんなピンポイントなルールが存在するんだと?対ミーム訓練は一体どうなってやがるんだ?!こんなわかりきったことをどうしてわからないんだ!

洪博士: 落ち着いてください、エージェント…

エージェント・程: 洪博士,さっき俺にエージェントとしての素養を持ち合わせているとおっしゃったな。なら俺にもお前の心理士としての素養を見せてくれ。俺なんかよりずっと認識災害との付き合いが長いお前が、本気で「人を殺しちゃならん」と「エージェント・程が女子トイレで便所飯をしなきゃならん」が一緒だと思ってるってのか?何か違うなってこれっぽちも気づいていないのか?

洪博士: [割り込む]勿論、そうですが…エージェント・程、今日のインタビューはここまでにしておきます。心配はいりません、今の貴方はどんな…行為をしても、それは貴方のせいではないですから。

エージェント・程: なら最後に一つ、質問をさせてくれ。アシャの脚は一体なんなのだ?それがわかれば、失くしたかもしれない記憶が戻るかもな。

洪博士: アシャの脚とは世界の無尽領域に射影せし有止の舞、完全なる我と共に八千六百四十五万の世界を行かん。かつて月下の図書館より玫瑰の乳香を漂わせ、聞けば四つ足の終末の魚が福音窺い知れたり。聖なりし偉大なる少女なる母なる老婆はその蜘蛛の如き接吻の洗礼を讃え、貴方こと程██にブロッコリーに含まれない栄養分、特に水分をすべて与えていました。思い出しましたか?

エージェント・程: [ため息]いいや。俺はきっと狂ってる、救いようがないほどにな。
[記録終了]

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