アイテム番号: SCP-CN-689
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: 影響を受けたDクラス職員はサイト-CN-71のD区画 D3ブロック Dクラス職員宿舎内で収容・監視されます。監視員およびセキュリティスタッフはアクセス権のない機密情報の獲得を防ぐために、任務の終了後、Aクラス記憶処理を受けてください。Dクラス職員はインタビュー後、Cクラス記憶処理を受けていれば、通常通り実験に投入できます。影響を受けたDクラス職員との接触には、クリアランスレベル4/689を持つ担当主任(現在はラム博士)の許可が必要です。インタビューを受けたDクラス職員は標準プロトコルに基づき、月末に解雇されます。インタビューログはラム博士の承認を得た職員が分析にあたっています。
説明: SCP-CN-689は今の所1、サイト-CN-71のDクラス職員2において発生する認識災害です。影響を受けたDクラス職員(SCP-CN-689-1)の意識と人格は、架空のレベル2以上の職員3の認知に置換されます。対象が保有する専門知識は本人が受けた教育を逸脱しており、財団の運営や職員、オブジェクトに対しても一定の知識を有しています4。
認識災害が形成される原因については、今もなお分かっていません。監視員の観察によると、SCP-CN-689-1個体の大部分は攻撃性を失っており、財団に対する反抗の意思もみられませんが、一部の個体は自身がDクラス職員であることを受け入れられず、情緒が不安定となっています。研究担当者は対象が提供する背景資料に基づいた調査を行いましたが、対象の経歴や学歴に関するデータは全くの架空であることが確認されています。
発見: 2018年█月█日 AM1:00、サイト-CN-71 セクター10に駐在していたセキュリティスタッフが、サイト管理官へ緊急報告を行い、Dクラス職員宿舎において異常な騒動が発生していることを伝えました。全てのDクラス職員が自身を財団の一般職員であると表明し、サイト管理官との対話を要求しました。サイト-CN-71の保安委員会は敵対的な要注意団体によるアノマリーを用いた襲撃事件であると推定しました。認識災害がミーム性や伝染性を有していないか不明瞭だったこと、Dクラス職員が不足していたこともあり、サイト管理官は検討を重ねたのち、機動部隊-丙申-01(”年始め”First day)の隊員、エージェント・ワンライを派遣し、SCP-CN-689-1へインタビューを実施しました。
インタビューログCN-689:
以下の機密記録はクリアランスレベル4/689以上の職員のみが閲覧できます。
以下はD-9413に対するインタビューで、エージェント・ワンライ(レベル3/689)が記録したものである。
日時: 2018年█月█日 PM2:04
インタビュアー: エージェント・ワンライ
インタビュー対象: D-94135
エージェント・ワンライ: 私はエージェント・ワンライ、サイト-CN-71管理委員会より、諸君との交渉に派遣された。
D-9413: 私はiflwlou、博士だ。クリアランスは4/290、職員番号は████-████-████-████6、セキュリティコードは██████。
エージェント・ワンライ: いいや、君はiflwlou博士ではない。財団にそのような人間は在籍していない。君の本名は███、強姦罪で無期懲役が下され、Dクラス職員の募集プロトコルに基づき、財団に加入した。君の番号はD-9413だ。
D-9413: なんだと?そんなわけがない。 [暫し沈黙] 私は君が誰なのか知らない。私はこれまで、サイト-CN-71にエージェント・ワンライなる人物がいるなんて聞いたこともない。我々はサイト管理官のクリス・ウォン博士と直接話し合いたいのだ。
エージェント・ワンライ: 君たちの交渉窓口は私、ただ一人だ。どうしてサイト管理官がクリス・ウォン博士だと分かったんだ?
D-9413: [溜息] ████████████、██████。██████SCP-CN-███、████████████……
エージェント・ワンライ: おいお前!黙りなさい!
D-9413: [無視して] ……██████、███████████████、███████████。█████████████████████、████████████████████、█████████████。█████████████、██████、██████████████████……
エージェント・ワンライ: 警備員!こいつを取り押さえろ!
[警備員がD-9413に電撃を与える。D-9413は転倒]
エージェント・ワンライ: これほどの機密資料、どうしてお前が知っているんだ?
D-9413: 君に教えるにはクリアランスが不足している。もう一度言おう、我々はサイト管理官と直接話し合いたいのだ。
エージェント・ワンライ: 良いだろう。ひとまず、上には君たちの要求を伝えておこう。
D-9413: インタビューが終わったら、Aクラス記憶処理を受けたまえ。今しがた、機密情報を権限の無い君に触れさせてしまったからな。
[インタビュー終了]
エージェント・ワンライ: くそっ!
付録CN-689-1:
インタビュー後、エージェント・ワンライはクラスA記憶処理を申請し、承認されました。D-9413がクリアランス無しで機密資料を認知していたことを受け、レベルIV情報漏洩案件に指定されました。D-9413の要求は拒絶され、対象はその後の取り調べにおいて、非協力的な態度を示すようになりました。有益な情報の獲得が期待できないことから、担当主任・ラム博士は対象にクラスC記憶処理を実施し、Dクラス職員の日常業務に復帰させました。
アイテム番号: SCP-CN-689
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: 影響を受けたDクラス職員はサイト-CN-71のD区画 D3ブロック Dクラス職員宿舎内で収容・監視されます。監視員およびセキュリティスタッフはアクセス権のない機密情報の獲得を防ぐために、任務の終了後、Aクラス記憶処理を受けてください。それでも異常影響を除去できない場合、サイト-CN-71はDクラス職員の募集を無期限に中止し、当オブジェクト以外の実験にDクラス職員を用いないでください。Dクラス職員の補助が必要なオブジェクトについては、指示があるまで他の収容サイトに移送されます。影響を受けたDクラス職員との接触には、クリアランスレベル4/689を持つ担当主任(現在はラム博士)の許可が必要です。また、倫理委員会に対してはSCP-CN-689-1の月例解雇を一時的に免除するよう申請しています。インタビューログはラム博士の承認を得た職員が分析にあたっています。
説明: SCP-CN-689は今の所、サイト-CN-71の実験で消費される職員に発生する、未知の異常影響です。影響を受けた消耗性職員(SCP-CN-689-1)の意識と人格は、架空のレベル2以上の職員のものに置換されます。彼らはまた、財団のレベル2以上の職員の一部は本来、サイト-CN-71に駐在するDクラス職員であったと主張します。対象が保有する専門知識は本人が受けた教育を逸脱しており、財団の運営や職員、オブジェクトに対しても一定の知識を有しています。
意識の置換が形成される原因については、今もなお分かっていません。実験の結果、影響を受けるのはサイト-CN-71の実験で消費される可能性のある職員として雇用される人物であり、Dクラス職員という名義で雇用されなくとも、これらの人物は雇用が成立した時点で一般職員の意識に置換されます。この効果は不可逆的であり、現時点で財団が保有する記憶処理技術をもってしても回復させるのは不可能です。監視員の観察によると、SCP-CN-689-1個体の大部分は攻撃性を失っており、財団に対する反抗の意思もみられませんが、一部の個体は自身がDクラス職員であることを受け入れられず、情緒が不安定となっています。研究担当者は対象が提供する背景資料に基づいた調査を行いましたが、対象の経歴や学歴に関するデータは全くの架空であることが確認されています。
発見: 2018年█月█日 AM1:00、サイト-CN-71 セクター10に駐在していたセキュリティスタッフが、サイト管理官へ緊急報告を行い、Dクラス職員宿舎において異常な騒動が発生していることを伝えました。全てのDクラス職員が自身を財団の一般職員であると表明し、サイト管理官との対話を要求しました。サイト-CN-71の保安委員会は敵対的な要注意団体によるアノマリーを用いた襲撃事件であると推定しました。認識災害がミーム性や伝染性を有していないか不明瞭だったこと、Dクラス職員が不足していたこともあり、サイト管理官は検討を経たのち、機動部隊-丙申-01(”年始め”First day)の隊員、エージェント・ワンライを派遣し、SCP-CN-689-1へインタビューを実施しました。
以下の機密記録はクリアランスレベル4/689以上の職員のみが閲覧できます。
インタビューログCN-689:
以下はSCP-CN-689-1-1(元D-9413)に対するインタビューで、エージェント・ワンライ(レベル3/689)が記録したものである。
日時: 2018年█月█日 PM2:04
インタビュアー: エージェント・ワンライ
インタビュー対象: SCP-CN-689-1-1
エージェント・ワンライ: 私はエージェント・ワンライ、サイト-CN-71管理委員会より、諸君との交渉に派遣された。
SCP-CN-689-1-1: 私はiflwlou、博士だ。クリアランスは4/290、職員番号は████-████-████-████、セキュリティコードは██████。
エージェント・ワンライ: いいや、君はiflwlou博士ではない。財団にそのような人間は在籍していない。君の本名は███、強姦罪で無期懲役が下され、Dクラス職員の募集プロトコルに基づき、財団に加入した。君の番号はD-9413だ。
SCP-CN-689-1-1: なんだと?そんなわけがない。 [暫し沈黙] 私は君が誰なのか知らない。私はこれまで、サイト-CN-71にエージェント・ワンライなる人物がいるなんて聞いたこともない。我々はサイト管理官のクリス・ウォン博士と直接話し合いたいのだ。
エージェント・ワンライ: 君たちの交渉窓口は私、ただ一人だ。どうしてサイト管理官がクリス・ウォン博士だと分かったんだ?
SCP-CN-689-1-1: [溜息] ████████████、██████。██████SCP-CN-███、████████████……
エージェント・ワンライ: おいお前!黙りなさい!
SCP-CN-689-1-1: [無視して] ……██████、███████████████、███████████。█████████████████████、████████████████████、█████████████。█████████████、██████、██████████████████……
エージェント・ワンライ: 警備員!こいつを取り押さえろ!
[警備員がSCP-CN-689-1-1に電撃を与える。SCP-CN-689-1-1は転倒]
エージェント・ワンライ: これほどの機密資料、どうしてお前が知っているんだ?
SCP-CN-689-1-1: 君に教えるにはクリアランスが不足している。もう一度言おう、我々はサイト管理官と直接話し合いたいのだ。
エージェント・ワンライ: 良いだろう。ひとまず、上には君たちの要求を伝えておこう。
SCP-CN-689-1-1: インタビューが終わったら、Aクラス記憶処理を受けたまえ。今しがた、機密情報を権限の無い君に触れさせてしまったからな。
[インタビュー終了]
エージェント・ワンライ: くそっ!
付録CN-689-1:
インタビュー後、エージェント・ワンライはクラスA記憶処理を申請し、承認されました。SCP-CN-689-1-1がクリアランス無しで機密資料を認知していたことを受け、レベルIV情報漏洩案件に指定されました。SCP-CN-689-1-1(元D-9413)の要求は拒絶され、対象はその後の取り調べにおいて、非協力的な態度を示すようになりました。有益な情報の獲得が期待できないことから、担当主任・ラム博士は対象にクラスC記憶処理を実施し、Dクラス職員の日常業務に復帰させました。
2018年█月█日 更新: SCP-CN-689-1-1は記憶処理に免疫を持っていました。さらなる実験の結果、SCP-CN-689-1は記憶処理に耐性を有することが証明されました。機密情報の漏洩を防ぐために、当オブジェクト以外でのDクラス職員の実験投入は即時停止します。
以下はSCP-CN-689-1-13(元D-53547)へのインタビュー記録で、ラム博士(レベル4/112/689)が筆録を担当している。
日時: 2018年█月█日 PM5:35
インタビュアー: ラム博士、エージェント・ワンライ、エージェント・スフレ
インタビュー対象: SCP-CN-689-1-13
エージェント・ワンライ: こんにちは、SCP-CN-689-1-13。私がラム博士だ。君の求めに応じて、インタビューを行なおうと……
SCP-CN-689-1-13: [エージェント・ワンライの発言を遮り] はっきり言ったでしょう、私はSCP-CN-112の元担当主任・ラム博士との面会を求めているの。D-7086、あなたではありません。
エージェント・ワンライ: 何を言ってるんだ?
SCP-CN-689-1-13: あなたの声は知っています。あなたはiflwlou博士を訪ねた時、1対1でインタビューを行うべきでした。放送室で全員に聞こえるように話すなんて、もっての外だというのに。全く教育がなってない。
エージェント・ワンライ: なぜ俺をD-7086と呼んだ?
SCP-CN-689-1-13: クソッタレな局地的CKクラス-再構築シナリオが、あなた達Dクラスと、一般職員の立場を入れ替えてしまったのよ!もっと探りたければ、ラム博士をよこして頂戴。
[エージェント・ワンライが画面外へ移動。ラム博士の指示により、インタビュアーはDクラス職員宿舎の管理経験がないセキュリティスタッフ、エージェント・スフレに交替する]
エージェント・スフレ: どういう用件で、私に会おうと [遮られる] ……
SCP-CN-689-1-13: 遊びは終わりよ!ラム博士、あなたが聞いているのは分かってるわ。私はあなた本人に会いたいの。お願いだから、顔を出して頂戴。再構築で豚頭になっていても構わないわ!
[エージェント・スフレが画面外へ移動。ラム博士がインタビュアーを引き継ぐ]
ラム博士: 黒き月は吠えているか?8
SCP-CN-689-1-13: [データ削除]9。
ラム博士: [顔をしかめて] どうなっている?
SCP-CN-689-1-13: ごきげんよう、ラム博士。ごめんなさい、あなたとは荒っぽい話をしたくなかった。でもこのままじゃ、私や影響を受けた同僚たちが月例解雇されかねないの。
ラム博士: D-5354、君の話はたいへん興味深いものがあった。君は私の元助手であり、その後、私の代わりにSCP-CN-11210の担当主任になったと主張した。その上、一部の一般職員は本来、Dクラス職員であり、再構築によって身分が置き換わったときたもんだ。
SCP-CN-689-1-13: その通りよ。これはエージェント・ワンライに限った話じゃないの。私達を管理しているセキュリティも、あなたも皆、かつてはサイト-CN-71のDクラスだった。こんなの、偶然では起こりえないことよ。きっと誰かが意図的に起こしたんだわ。
ラム博士: 私はこれまで、Dクラスになった覚えは一度もないが。
SCP-CN-689-1-13: 再構築が行われる前、あなたは112の担当主任だった。けれど、オブジェクトの収容を蔑ろにしてしまい、サイト-CN-71の[データ削除]を引き起こした。にも関わらず、あなたへの処罰が軽かったもんだから、皆はO5-CNが贔屓したんじゃないかと考えたの。サイトの同僚は皆、この結果に強い不満を抱いて、ボイコットを起こした。最終的に、あなたはDクラスへの降格を依願し、サイト-CN-71のDクラス職員・D-1234になることで、この騒動を収めた。私は元々、無性愛者11だったこともあって、あなたから112の担当主任に指名されたのよ。
ラム博士: 君の話だと、私は感情に流されやすい人間だったようだな。それに、昇進の経緯もなかなか子どもじみている。
SCP-CN-689-1-13: あなたがバカで無能な上司だったことは確かだけど、いまさら回りくどい話はしたくないの。次へ行って頂戴。
ラム博士: ……分かった、本題に戻ろう。SCP-CN-689の研究チームは以前、君たちが局地的なCK-クラス: 再構築シナリオの影響を受けた可能性があると提言した。しかし、その懸念はすぐに排除されることとなった。SCP-CN-689イベントが発生した日、CKクラスシナリオの観測器は一切の反応を示さず、カント計数機も標準的な数値を維持していた。君たちが突然、一般職員の意識を獲得した以外は、何もかもが正常なのだ。
SCP-CN-689-1-13: 影響を受けた同僚達も、様々な推測を行っているわ。上位世界の創作者による悪戯や、オネイロイ・コレクティブの夢界、並行次元への意識転移、あるいは……私達は本当に、認識災害を患ったDクラスである……等ね。私達の大多数が導き出した、最も信憑性の高い結論は、局地的なCKクラス: 再構築シナリオが起きたというものよ。同僚の一部は、宿舎の現実安定化設備が不足していたために、Dクラスの現実改変者による報復を受けたとも推測している。上層部は彼らが1ヶ月しか生きられないと考えてるし、死んでも何とも思わない。モルモットに気を配る人がいるかしら?これは財団の全サイトに共通する欠点で、大きな抜け穴とも言えるわ。同僚は現実改変者がこのセキュリティホールを利用して、私達とDクラスの身分を入れ替えたと見込んでいる。この元凶について、彼らはあなた、ラム博士を一番の容疑者と考えてるわ。
ラム博士: 君も同じ考えなのか?
SCP-CN-689-1-13: ええ。私はあなたをとても疑わしく感じている。なんてったって、あなたは私達の圧力のせいで、自らDクラスに降格したのですから。私たちを恨んでいてもおかしくはないわ。もし私があなただったら……もし私が、サイト-CN-71の100基の現実錨で力を制限されている、1人の現実改変者だったら……仕事でうまく行かず、Dクラスまで落ちぶれた後、セキュリティの穴を見つけたら……罪を着せた同僚に対して、きっと報いを受けさせたでしょうね。 [笑う] ラム博士、あなたは感情に流される人間ではあるけれど、悪人ではない。ただ運が悪かったに過ぎない。あなたには強い嫌疑がかかっているけれど、私は犯人ではないと思ってるわ。女のカンよ。
ラム博士: 君の弁護に感謝するよ。
SCP-CN-689-1-13: 悪の親玉が誰だなんて、今更どうでもいい話だわ。私達の命を守れるのは、あなたしかいないの。お願い、月例解雇を止めて頂戴。私達は財団に入った際、暗闇の中で身を殉じると誓ったわ12。けれど、こんな状況では死にたくない。死にたくないのよ。
ラム博士: [溜息] 財団の規則を知ってるだろう、我々はDクラスに慈悲を与えない。数を保つため、認識災害を受けていないDクラスには記憶処理だけを施し、他のサイトで再利用するという噂こそあるが、君たちはその条件を満たしていない。上に文句を言われるだろうが、異常の原因が判明するまでは、君たちの解雇日を延ばしてやろう。だが、君たちは私に協力しなければならない。私がやれるのはそこまでだ。君たちもあまり期待しないでくれたまえ。
SCP-CN-689-1-13: 私が今持っているのは、iflwlou博士からひったくってきた文書よ。異常についての、私達目線のレポートね。あなたに研究成果を引き渡すことを、iflwlou博士は反対していたけれど、ここまで来てしまったら、もう気にするもんですか。この文書は恐らく、あなたの参考に値すると思うわ。
ラム博士: 良いだろう。ミームチェックにかけてから、詳しく見ておくよ。
SCP-CN-689-1-13: それで結構よ。ありがとう、よろしくお願いするわ。
[インタビュー終了]
付録CN-689-2:
SCP-CN-689-1が本来持つ意識は完全に消失しているとみられています。新たな意識は協力的な態度をとっており、財団の運営に関して、専門知識を活かした協力を希望しています。これを受け、ラム博士は倫理委員会に対し、SCP-CN-689-1が保有しているDクラス身分の免除とレベル0職員への格上げを申請しました。
文書CN-689-1:
本文書はラム博士がSCP-CN-689-1-13へのインタビュー中に回収した文献であり、財団の報告書テンプレートに基づいて執筆されている。
アイテム番号: 分類待ち
オブジェクトクラス: Keter
特別収容プロトコル: 影響を受けた財団職員は冷静を保ちつつ、サイト-CN-71の影響を受けていない職員に対し、自分の身元を明かしてください。また、サイト管理官または高クリアランス職員との交渉を希望し、彼らに異常の本質を調べさせ、影響を受けた職員のDクラス身分を撤回させなければなりません。再構築によって一般職員となったDクラスからの合理的な要求に対しては、彼らによる攻撃を防ぐためにも、協力的な態度で臨んでください。現実改変学の専門知識を有する職員は研究チームを組織し、例えリソースが皆無であろうとも、当アノマリーを集中して研究しなければなりません。我々は絶対に負けられないのです。
説明: オブジェクトは現在、サイト-CN-71のレベル2以上の一般職員とDクラス職員を対象とした、局地的CKクラス: 再構築シナリオです。影響を受けた一般職員とDクラス職員の身分は入れ替わり、その数は同期することが判明しています。身分の入れ替わりを除けば、影響を受けた一般職員の意識や体格、人格は全て維持されています。一方、影響を受けたDクラスの意識は、架空のレベル2以上の職員の意識に置換されており、対象が保有する専門知識は本人が受けた教育を逸脱しています。対象は再構築以前の記憶を保持していませんが、本来の人格だけは維持しています。対象は影響を受けた一般職員に対し、憎悪の念を抱いており、倫理委員会が制定した《一般職員のDクラス職員への交渉規則》を無視した行動を展開します。
研究チームの推測によると、今回の局地的CKクラス: 再構築シナリオは、Dクラス職員となった現実改変者が宿舎のセキュリティホールを利用し、内部で起こしたものとされます。今の所、現実改変者の再構築後の身分は判明していません。対象がカント計数機で検知できない理由についても、研究チームは定論を出せないでいます。
付録:
現実改変者の身元を割り出すため、当オブジェクトの首席研究員13は影響を受けた一般職員が提供した資料を統合。再構築されたDクラス職員のプロフィールを纏めました。
D-1234: 本名: 林██、レベル4の上級研究員で、SCP-CN-112の担当主任。収容プロトコルの不備により、[データ削除]事故を引き起こす。その後、サイト内の世論の圧力を受け、自らDクラス職員へと降格し、Keter級オブジェクトの担当に配属される。再構築後は再びレベル4の上級研究員となり、SCP-CN-689の担当主任に就任している。
D-7086: 本名: 慕容█、再構築後のコードネームはエージェント・ワンライ。米国籍の華僑。対象は元々、米国・デルタフォース14に所属する二等軍曹だったが、[データ削除]事件において命令に背き、友軍の指揮官を殺害。軍事法廷で殺人罪となり、死刑を下される。その後は財団の募集に応じ、Dクラス職員として中国支部に配属される。再構築後は米軍を名誉除隊しており、財団中国支部の要請を受け、レベル3の機動部隊員となっている。
D-7689: 本名: 陸██、再構築後はエージェント・スフレ。香港警察に所属していたが、児童への性的暴行や殺人等の罪で無期懲役を受ける。その後は財団の募集に応じ、Dクラス職員となる。再構築後はサイト-CN-71に駐在するレベル2のセキュリティスタッフとなっている。
[後略]
実験ログCN-689:
実験番号: 実験CN-689-1
実験対象: 李██、麻薬密輸罪で収監中。薬物使用の前科あり。
実験目的: Dクラス職員の標準募集プロトコルを用いて、異常の起点を調べる。
実験結果: 契約場所をサイト-CN-71のDクラス職員配給所に設定して実施。エージェント・ワンライとエージェント・██が契約手続きを監督した。対象は契約後、即座に昏睡状態に陥り、3秒後に覚醒。対象の意識はレベル2の機動部隊員に置換されていた。対象は自身がDクラス職員の制服を着用していることに違和感を示し、エージェント・ワンライと██に質問を行った。インタビュー中、対象はエージェント・██に面識があると主張したが、██は否定。対象は激昂し、エージェント・██を素手で攻撃した。対象の攻撃は高度に洗練されており、職業格闘技の水準に達していた。警告が無視されたため、エージェント・ワンライは銃で対象を制圧。対象は3日後、重度の負傷により死亡した。検視の結果、対象の血液は薬物検査に対して陰性反応を示しており、各種生理的指標も健康水準に合致。薬物使用の痕跡は全て消失していた。
実験番号: 実験CN-689-2
実験対象: 張██、強盗罪で収監中。
実験目的: 対象を「Dクラス職員」以外の肩書きで雇用した後、消耗性実験の担当にあてた場合、異常が発生するか否かについて調べる。
実験結果: 契約場所を██刑務所の面会室に設定して実施。エージェント・ワンライとエージェント・██が契約手続きを監督した。「財団レベルR実験室の助手」という肩書きで対象を雇用し、消耗性実験を担当させた。対象はSCP-CN-689の影響を受け、意識が[データ削除]に置換された。ラム博士は東アジア監督者議会司令部に対して緊急警報を発信。司令部はO5-CN全13名の安全を報告した。
実験番号: 実験CN-689-3
実験対象: 陳██、元レベル2の初級研究員。[データ削除]事故により、Dクラス職員に降格。
実験目的: 一般職員をDクラス職員として雇用した場合、異常が発生するか否かについて調べる。
実験結果: 契約場所をサイト-CN-71のDクラス職員配給所に設定して実施。エージェント・ワンライとエージェント・██が契約手続きを監督した。対象が契約を拒否したため、エージェント・ワンライは3時間に渡って[データ削除]を実施。対象はその後、契約を了承するも、明確な異常は発生しなかった。ラム博士が対象にAクラス記憶処理を施した所、対象は記憶処理に免疫を有していた。
アイテム番号: SCP-CN-689
オブジェクトクラス: Euclid Keter
特別収容プロトコル: 影響を受けたDクラス職員は所属する財団サイトのDクラス職員宿舎にて収容されます。駐在のセキュリティスタッフは影響を受けたDクラス職員を1対1で監視してください。対象は映像や録音による監視下に常に置かれなければなりません。食事には抗うつ薬を添加し、自殺を防ぐためのカウンセリングが定期的に実施されます。カウンセラーや監視員、セキュリティスタッフについては、アクセス権のない機密情報の獲得を防ぐために、任務の終了後、Aクラス記憶処理を受けてください。影響を受けた財団サイトはDクラス職員を新しく募集してください。SCP-CN-689-1個体にはデルタ・プロトコル(付録参照)を施した後、Dクラス職員としての待遇に復帰させます。倫理委員会はDクラス職員を必要とする実験や収容プロトコルを再び認可しました。影響を受けたDクラス職員との接触には、クリアランスレベル4/689を持つ担当主任(現在は███博士。前任のラム博士は当オブジェクトの研究から離脱しました。詳細は懲戒ログCN-689-1を参照)の許可が必要です。
倫理委員会より財団中国支部職員への通告:
SCP-CN-689-1に対する倫理委員会の裁定により、財団職員の士気が下がっていることは把握している。この件については、詳しい解説が必要だろう。SCP-CN-689-1はこれまでも、これからも、我々の一員ではない。諸君にはこの点をよく理解して頂きたい。SCP-CN-689の研究チームは認識災害現象の原因を未だ解明できていない。しかし、研究チームによる多方面かつ厳格、詳細な調査により、SCP-CN-689-1個体には再構築の痕跡がみられないことが分かった。よって、対象が再構築の影響を受けたという説は否定されている。
諸君はSCP-CN-689-1個体に対し、同情の意を示している。正常な感情反応だが、我々は諸君に警告したい。SCP-CN-689-1の本質はDクラス職員だ。SCP-CN-689-1が異常な専門知識を持っているとしても、倫理委員会は財団に対する彼らの忠誠を一切保証しない。これは彼らが反財団勢力と化す恐れがあることを意味している。可能性がいくら少なくても、財団にとっては非常に危険な存在なのだ。財団のリソースは有限である。異常物品を収容するためにあるリソースを、Dクラス職員の代替品を探すことに費やすべきではない。財団はSCP-CN-689現象のせいで、Dクラス職員に対する一貫とした政策を改めたりはしない。これは倫理委員会の最終裁定である。諸君にはプロフェッショナルな態度で仕事に臨んでもらいたい。ラム博士の件はとても良い反面教師になったといえよう。
我々は諸君に提言する。財団職員として任用された以上、諸君は《財団誓詞》の宣誓に基づかねばならない。諸君は自ら暗闇に身を殉じることを誓ったはずだ。SCP-CN-689-1が一般職員の意識を備えているのなら、彼らもそれを覚悟していることだろう。運命だと受け止めてほしい。
駐中国支部倫理委員会代表
Dr. Lawrence Jiu
確保.収容.保護
付録:
SCP-CN-689-1個体の大脳皮質には小型のシナプス電流検知式起爆チップが埋め込まれており、チップは全て財団の中央データベースに連動しています。SCP-CN-689-1が財団の収容に反発する意志(許可無く書面または口頭で機密情報を述べる行為など)を検知した場合、爆弾を内蔵した首輪が起爆されます。SCP-CN-689-1が誤って起爆条件を満たしたことで終了されるのを防ぐため、チップの特性や起爆条件は全ての個体に通達されます。
説明: SCP-CN-689は今の所、サイト-CN-71、サイト-CN-██、エリア-CN-██の実験で消費される職員に発生する、伝染性の認識災害現象です。影響を受けた消耗性職員(SCP-CN-689-1)の意識と人格は、架空のレベル2以上の職員のものに置換されます。彼らはまた、財団のレベル2以上の職員の一部は本来、サイト-CN-71に駐在するDクラス職員であったと主張します。対象が保有する専門知識は本人が受けた教育を逸脱しており、財団の運営や職員、オブジェクトに対しても一定の知識を有しています。
認識災害が形成される原因については、今もなお分かっていません。実験の結果、影響を受けるのは財団の消耗性実験に参加する可能性のある職員であり、Dクラス職員として雇用されていなくとも、皆即座に一般職員の意識に置換されます。監視員の観察によると、SCP-CN-689-1個体の大部分は攻撃性を失っており、財団に対する反抗の意思もみられませんが、一部の個体は自身がDクラス職員であることを受け入れられず、情緒が不安定となっています。研究担当者は対象が提供する背景資料に基づいた調査を行いましたが、対象の経歴や学歴に関するデータは全くの架空であることが確認されています。
当初、SCP-CN-689-1個体は恭順的な態度をとっていました。しかし、1ヶ月の拘禁を経て、月例解雇が近づくと、大部分の個体が一般職員への協力を拒否するようになり、財団へ反抗する意思を表し始めました。一部の個体は情緒が不安定になった末、自殺しています(回収文書CN-689-2を参照)。アノマリーに関する専門的な知識を有するために、SCP-CN-689-1の収容と処分は困難を極めています。現在、サイト-CN-71に収容されている個体が暴動を起こしており、財団は当サイトのDクラス職員宿舎の統制権を喪失しました(インシデントCN-689-1参照)。
発見: 2018年█月█日 AM1:00、サイト-CN-71 セクター10に駐在していたセキュリティスタッフが、サイト管理官へ緊急報告を行い、Dクラス職員宿舎において異常な騒動が発生していることを伝えました。全てのDクラス職員が自身を財団の一般職員であると表明し、サイト管理官との対話を要求しました。サイト-CN-71の保安委員会は敵対的な要注意団体によるアノマリーを用いた襲撃事件であると推定しました。認識災害がミーム性や伝染性を有していないか不明瞭だったこと、Dクラス職員が不足していたこともあり、サイト管理官は検討を経たのち、機動部隊-丙申-01(”年始め”First day)の隊員、エージェント・ワンライを派遣し、SCP-CN-689-1へインタビューを実施しました。
懲戒ログCN-689-1:
前担当主任・ラム博士はSCP-CN-689-1個体に同情の念を抱き、著しく緩やかな収容プロトコルを制定しました。この間、SCP-CN-689の伝染性を解明できなかったことから、サイト-CN-██、エリア-CN-██のDクラス職員をオブジェクトに感染させる事態を引き起こしました。ラム博士は倫理委員会にSCP-CN-689-1のDクラス職員身分を免除し、レベル0職員に改めるよう申請しましたが、倫理委員会によって否決(0:13)されました。結果を知ったラム博士は委員会に対して不適切な発言を行ったため、サイト-CN-71管理官の命令により、ラム博士はSCP-CN-689の担当主任としての任を解かれ、強制的な心理カウンセリングを実施されました。
インシデントCN-689-1:
2018年█月██日 PM11:26、サイト-CN-71のDクラス職員宿舎にいたSCP-CN-689-1が、未知のチャンネルを通じて、倫理委員会の採決結果を察知、暴動を起こしました。SCP-CN-689-1は自身の異常な専門知識を駆使して、エージェント・ワンライを含めたDクラス職員宿舎のセキュリティスタッフを拘束。同時に、宿舎の周囲に異空間障壁を設置し、施設を現実次元より隔離しました。SCP-CN-689-1は宿舎の正門に以下の張り紙を掲示しています:
我々は異常を抑制できるし、創り出すこともできる。
黒幕に告ぐ。我々は決して負けを認めない。
以下の機密記録はクリアランスレベル4/689以上の職員のみが閲覧できます。
インタビューログCN-689:
以下はSCP-CN-689-1-1(元D-9413)に対するインタビューで、エージェント・ワンライ(レベル3/689)が記録したものである。
日時: 2018年█月█日 PM2:04
インタビュアー: エージェント・ワンライ
インタビュー対象: SCP-CN-689-1-1
エージェント・ワンライ: 私はエージェント・ワンライ、サイト-CN-71管理委員会より、諸君との交渉に派遣された。
SCP-CN-689-1-1: 私はiflwlou、博士だ。クリアランスは4/290、職員番号は████-████-████-████、セキュリティコードは██████。
エージェント・ワンライ: いいや、君はiflwlou博士ではない。財団にそのような人間は在籍していない。君の本名は███、強姦罪で無期懲役が下され、Dクラス職員の募集プロトコルに基づき、財団に加入した。君の番号はD-9413だ。
SCP-CN-689-1-1: なんだと?そんなわけがない。 [暫し沈黙] 私は君が誰なのか知らない。私はこれまで、サイト-CN-71にエージェント・ワンライなる人物がいるなんて聞いたこともない。我々はサイト管理官のクリス・ウォン博士と直接話し合いたいのだ。
エージェント・ワンライ: 君たちの交渉窓口は私、ただ一人だ。どうしてサイト管理官がクリス・ウォン博士だと分かったんだ?
SCP-CN-689-1-1: [溜息] ████████████、██████。██████SCP-CN-███、████████████……
エージェント・ワンライ: おいお前!黙りなさい!
SCP-CN-689-1-1: [無視して] ……██████、███████████████、███████████。█████████████████████、████████████████████、█████████████。█████████████、██████、██████████████████……
エージェント・ワンライ: 警備員!こいつを取り押さえろ!
[警備員がSCP-CN-689-1-1に電撃を与える。SCP-CN-689-1-1は転倒]
エージェント・ワンライ: これほどの機密資料、どうしてお前が知っているんだ?
SCP-CN-689-1-1: 君に教えるにはクリアランスが不足している。もう一度言おう、我々はサイト管理官と直接話し合いたいのだ。
エージェント・ワンライ: 良いだろう。ひとまず、上には君たちの要求を伝えておこう。
SCP-CN-689-1-1: インタビューが終わったら、Aクラス記憶処理を受けたまえ。今しがた、機密情報を権限の無い君に触れさせてしまったからな。
[インタビュー終了]
エージェント・ワンライ: くそっ!
付録CN-689-1:
インタビュー後、エージェント・ワンライはクラスA記憶処理を申請し、承認されました。SCP-CN-689-1-1がクリアランス無しで機密資料を認知していたことを受け、レベルIV情報漏洩案件に指定されました。SCP-CN-689-1-1(元D-9413)の要求は拒絶され、対象はその後の取り調べにおいて、非協力的な態度を示すようになりました。有益な情報の獲得が期待できないことから、担当主任・ラム博士は対象にクラスC記憶処理を実施し、Dクラス職員の日常業務に復帰させました。
2018年█月█日 更新: SCP-CN-689-1-1は記憶処理に免疫を持っていました。さらなる実験の結果、SCP-CN-689-1は記憶処理に耐性を有することが証明されました。機密情報の漏洩を防ぐために、当オブジェクト以外でのDクラス職員の実験投入は即時停止します。
以下はSCP-CN-689-1-13(元D-5354)へのインタビュー記録で、ラム博士(レベル4/112/689)が筆録を担当している。
日時: 2018年█月█日 PM5:35
インタビュアー: ラム博士、エージェント・ワンライ、エージェント・スフレ
インタビュー対象: SCP-CN-689-1-13
エージェント・ワンライ: こんにちは、SCP-CN-689-1-13。私がラム博士だ。君の求めに応じて、インタビューを行なおうと……
SCP-CN-689-1-13: [エージェント・ワンライの発言を遮り] はっきり言ったでしょう、私はSCP-CN-112の元担当主任・ラム博士との面会を求めているの。D-7086、あなたではありません。
エージェント・ワンライ: 何を言ってるんだ?
SCP-CN-689-1-13: あなたの声は知っています。あなたはiflwlou博士を訪ねた時、1対1でインタビューを行うべきでした。放送室で全員に聞こえるように話すなんて、もっての外だというのに。全く教育がなってない。
エージェント・ワンライ: なぜ俺をD-7086と呼んだ?
SCP-CN-689-1-13: クソッタレな局地的CKクラス-再構築シナリオが、あなた達Dクラスと、一般職員の立場を入れ替えてしまったのよ!もっと探りたければ、ラム博士をよこして頂戴。
[エージェント・ワンライが画面外へ移動。ラム博士の指示により、インタビュアーはDクラス職員宿舎の管理経験がないセキュリティスタッフ、エージェント・スフレに交替する]
エージェント・スフレ: どういう用件で、私に会おうと [遮られる] ……
SCP-CN-689-1-13: 遊びは終わりよ!ラム博士、あなたが聞いているのは分かってるわ。私はあなた本人に会いたいの。お願いだから、顔を出して頂戴。再構築で豚頭になっていても構わないわ!
[エージェント・スフレが画面外へ移動。ラム博士がインタビュアーを引き継ぐ]
ラム博士: 黒き月は吠えているか?
SCP-CN-689-1-13: [データ削除]。
ラム博士: [顔をしかめて] どうなっている?
SCP-CN-689-1-13: ごきげんよう、ラム博士。ごめんなさい、あなたとは荒っぽい話をしたくなかった。でもこのままじゃ、私や影響を受けた同僚たちが月例解雇されかねないの。
ラム博士: D-5354、君の話はたいへん興味深いものがあった。君は私の元助手であり、その後、私の代わりにSCP-CN-112の担当主任になったと主張した。その上、一部の一般職員は本来、Dクラス職員であり、再構築によって身分が置き換わったときたもんだ。
SCP-CN-689-1-13: その通りよ。これはエージェント・ワンライに限った話じゃないの。私達を管理しているセキュリティも、あなたも皆、かつてはサイト-CN-71のDクラスだった。こんなの、偶然では起こりえないことよ。きっと誰かが意図的に起こしたんだわ。
ラム博士: 私はこれまで、Dクラスになった覚えは一度もないが。
SCP-CN-689-1-13: 再構築が行われる前、あなたは112の担当主任だった。けれど、オブジェクトの収容を蔑ろにしてしまい、サイト-CN-71の[データ削除]を引き起こした。にも関わらず、あなたへの処罰が軽かったもんだから、皆はO5-CNが贔屓したんじゃないかと考えたの。サイトの同僚は皆、この結果に強い不満を抱いて、ボイコットを起こした。最終的に、あなたはDクラスへの降格を依願し、サイト-CN-71のDクラス職員・D-1234になることで、この騒動を収めた。私は元々、無性愛者だったこともあって、あなたから112の担当主任に指名されたのよ。
ラム博士: 君の話だと、私は感情に流されやすい人間だったようだな。それに、昇進の経緯もなかなか子どもじみている。
SCP-CN-689-1-13: あなたがバカで無能な上司だったことは確かだけど、いまさら回りくどい話はしたくないの。次へ行って頂戴。
ラム博士: ……分かった、本題に戻ろう。SCP-CN-689の研究チームは以前、君たちが局地的なCK-クラス: 再構築シナリオの影響を受けた可能性があると提言した。しかし、その懸念はすぐに排除されることとなった。SCP-CN-689イベントが発生した日、CKクラスシナリオの観測器は一切の反応を示さず、カント計数機も標準的な数値を維持していた。君たちが突然、一般職員の意識を獲得した以外は、何もかもが正常なのだ。
SCP-CN-689-1-13: 影響を受けた同僚達も、様々な推測を行っているわ。上位世界の創作者による悪戯や、オネイロイ・コレクティブの夢界、並行次元への意識転移、あるいは……私達は本当に、認識災害を患ったDクラスである……等ね。私達の大多数が導き出した、最も信憑性の高い結論は、局地的なCKクラス: 再構築シナリオが起きたというものよ。同僚の一部は、宿舎の現実安定化設備が不足していたために、Dクラスの現実改変者による報復を受けたとも推測している。上層部は彼らが1ヶ月しか生きられないと考えてるし、死んでも何とも思わない。モルモットに気を配る人がいるかしら?これは財団の全サイトに共通する欠点で、大きな抜け穴とも言えるわ。同僚は現実改変者がこのセキュリティホールを利用して、私達とDクラスの身分を入れ替えたと見込んでいる。この元凶について、彼らはあなた、ラム博士を一番の容疑者と考えてるわ。
ラム博士: 君も同じ考えなのか?
SCP-CN-689-1-13: ええ。私はあなたをとても疑わしく感じている。なんてったって、あなたは私達の圧力のせいで、自らDクラスに降格したのですから。私たちを恨んでいてもおかしくはないわ。もし私があなただったら……もし私が、サイト-CN-71の100基の現実錨で力を制限されている、1人の現実改変者だったら……仕事でうまく行かず、Dクラスまで落ちぶれた後、セキュリティの穴を見つけたら……罪を着せた同僚に対して、きっと報いを受けさせたでしょうね。 [笑う] ラム博士、あなたは感情に流される人間ではあるけれど、悪人ではない。ただ運が悪かったに過ぎない。あなたには強い嫌疑がかかっているけれど、私は犯人ではないと思ってるわ。女のカンよ。
ラム博士: 君の弁護に感謝するよ。
SCP-CN-689-1-13: 悪の親玉が誰だなんて、今更どうでもいい話だわ。私達の命を守れるのは、あなたしかいないの。お願い、月例解雇を止めて頂戴。私達は財団に入った際、暗闇の中で身を殉じると誓ったわ。けれど、こんな状況では死にたくない。死にたくないのよ。
ラム博士: [溜息] 財団の規則を知ってるだろう、我々はDクラスに慈悲を与えない。数を保つため、認識災害を受けていないDクラスには記憶処理だけを施し、他のサイトで再利用するという噂こそあるが、君たちはその条件を満たしていない。上に文句を言われるだろうが、異常の原因が判明するまでは、君たちの解雇日を延ばしてやろう。だが、君たちは私に協力しなければならない。私がやれるのはそこまでだ。君たちもあまり期待しないでくれたまえ。
SCP-CN-689-1-13: 私が今持っているのは、iflwlou博士からひったくってきた文書よ。異常についての、私達目線のレポートね。あなたに研究成果を引き渡すことを、iflwlou博士は反対していたけれど、ここまで来てしまったら、もう気にするもんですか。この文書は恐らく、あなたの参考に値すると思うわ。
ラム博士: 良いだろう。ミームチェックにかけてから、詳しく見ておくよ。
SCP-CN-689-1-13: それで結構よ。ありがとう、よろしくお願いするわ。
[インタビュー終了]
付録CN-689-2:
SCP-CN-689-1が本来持つ意識は完全に消失しているとみられています。新たな意識は協力的な態度をとっており、財団の運営に関して、専門知識を活かした協力を希望しています。これを受け、ラム博士は倫理委員会に対し、SCP-CN-689-1が保有しているDクラス身分の免除とレベル0職員への格上げを申請しました。
2018年█月██日 更新: 倫理委員会は申請を否決しました(0:13)。
回収文書CN-689:
本文書はラム博士がSCP-CN-689-1-13へのインタビュー中に回収した文献であり、財団の報告書テンプレートに基づいて執筆されている。
アイテム番号: 分類待ち
オブジェクトクラス: Keter
特別収容プロトコル: 影響を受けた財団職員は冷静を保ちつつ、サイト-CN-71の影響を受けていない職員に対し、自分の身元を明かしてください。また、サイト管理官または高クリアランス職員との交渉を希望し、彼らに異常の本質を調べさせ、影響を受けた職員のDクラス身分を撤回させなければなりません。再構築によって一般職員となったDクラスからの合理的な要求に対しては、彼らによる攻撃を防ぐためにも、協力的な態度で臨んでください。現実改変学の専門知識を有する職員は研究チームを組織し、例えリソースが皆無であろうとも、当アノマリーを集中して研究しなければなりません。我々は絶対に負けられないのです。
説明: オブジェクトは現在、サイト-CN-71のレベル2以上の一般職員とDクラス職員を対象とした、局地的CKクラス: 再構築シナリオです。影響を受けた一般職員とDクラス職員の身分は入れ替わり、その数は同期することが判明しています。身分の入れ替わりを除けば、影響を受けた一般職員の意識や体格、人格は全て維持されています。一方、影響を受けたDクラスの意識は、架空のレベル2以上の職員の意識に置換されており、対象が保有する専門知識は本人が受けた教育を逸脱しています。対象は再構築以前の記憶を保持していませんが、本来の人格だけは維持しています。対象は影響を受けた一般職員に対し、憎悪の念を抱いており、倫理委員会が制定した《一般職員のDクラス職員への交渉規則》を無視した行動を展開します。
研究チームの推測によると、今回の局地的CKクラス: 再構築シナリオは、Dクラス職員となった現実改変者が宿舎のセキュリティホールを利用し、内部で起こしたものとされます。今の所、現実改変者の再構築後の身分は判明していません。対象がカント計数機で検知できない理由についても、研究チームは定論を出せないでいます。
付録:
現実改変者の身元を割り出すため、当オブジェクトの首席研究員は影響を受けた一般職員が提供した資料を統合。再構築されたDクラス職員のプロフィールを纏めました。
D-1234: 本名: 林██、レベル4の上級研究員で、SCP-CN-112の担当主任。収容プロトコルの不備により、[データ削除]事故を引き起こす。その後、サイト内の世論の圧力を受け、自らDクラス職員へと降格し、Keter級オブジェクトの担当に配属される。再構築後は再びレベル4の上級研究員となり、SCP-CN-689の担当主任に就任している。
D-7086: 本名: 慕容█、再構築後のコードネームはエージェント・ワンライ。米国籍の華僑。対象は元々、米国・デルタフォースに所属する二等軍曹だったが、[データ削除]事件において命令に背き、友軍の指揮官を殺害。軍事法廷で殺人罪となり、死刑を下される。その後は財団の募集に応じ、Dクラス職員として中国支部に配属される。再構築後は米軍を名誉除隊しており、財団中国支部の要請を受け、レベル3の機動部隊員となっている。
D-7689: 本名: 陸██、再構築後はエージェント・スフレ。香港警察に所属していたが、児童への性的暴行や殺人等の罪で無期懲役を受ける。その後は財団の募集に応じ、Dクラス職員となる。再構築後はサイト-CN-71に駐在するレベル2のセキュリティスタッフとなっている。
[後略]
2018年█月██日 AM3:37、SCP-CN-689-1-106(元D-8765)、自称: スーザン・ユー博士(クリアランスレベル3)がシーツで首を吊っているのを監視員が発見。救急搬送されたものの、AM4:47に死亡が確認されました。遺体からは[データ削除]の痕跡が見つかっています。当文書は監視員が枕元で発見した、対象の個人日記です。
2018年█月█:
落ち着け、落ち着け、落ち着け。これは嘘、幻覚だ。私は私、スーザン・ユー博士。D-8765じゃない。きっと何かの間違いだ。どうして私の話を聞いてくれないの!iflwlou博士、エイリーン・チャン博士、エージェント・████もこちらへやってきた。皆とても困惑している。私たちは一瞬でDクラス宿舎に転移し、オレンジのツナギを着ていた。本当のDクラスはここのセキュリティをやっている。一体どうなってるの?
2018年█月█:
iflwlou博士はやれるだけやったと報告した。博士は交渉したエージェントを怒らせてしまったようで、皆不安を抱いている。iflwlou博士は自分たちの立場を堅持するべきとした。さもないと、私たちは生き延びるチャンスさえも失ってしまうと。Dクラスは人の形をしたモルモットに過ぎない……私たちは普段、そんな風に彼らを扱っていた。皆もよく理解している事だ。
2018年█月█:
早朝、iflwlou博士がセキュリティスタッフに連れ出され、尋問を受けた。夜遅くに戻ってきた時、彼の四肢は真っ赤に腫れ上がっていた。まるで豚の生レバーだ。博士は一言も話さなかった。でも、私は彼が拷問を耐えていたのだと思っている。……次は私だろうか?
2018年█月█:
他の同僚も、次々と尋問を受けた。だけど、メアリー・██████博士とアラン・██████博士は戻ってこなかった。2人はいつ戻るのか、私は何度もセキュリティに問いかけた。でも、彼らは相変わらず私を無視している。かつて私がDクラスにとった態度も、こんな感じだったのだろうか?
2018年█月█:
ようやく顔見知りに出会った。ブランドン15がこのオブジェクトの担当になったのだ。私は監視台のブランドンに手を振り、助けを求めた。けれど、彼は険悪な顔で私を睨むと、セキュリティを呼んで私を遠ざけさせた。彼はセキュリティに向かって、こう言ったのを覚えている:「真面目に仕事しろ!2度とこの薄汚いヤツを俺に近づけるな」私はすっかり冷めてしまった。彼は私を忘れている。私は彼の、ガールフレンドだったのに。どうしてこうなるの?
2018年█月██:
泣いて何の意味があるの?分からない。私はもう、泣くことしかできない。iflwlouとエイリーンはずっと争っている。顔も耳も真っ赤だ。上級研究員という立場も顧みず、掴み合いの喧嘩をしている。私は気にならなかったが、セキュリティが強引に2人を引き離した。エイリーンは担当主任・ラム博士との面会を頑なに主張していて、その願いは叶うこととなった。エイリーンが去った後、セキュリティは同僚を何人か選んで、訳も無く殴りだした。他の人は息を殺している。騒ぎを知ったラム博士は、激しく怒鳴りながら宿舎に駆け付け、セキュリティに説明を求めた。セキュリティは同僚たちが監視に抵抗したので、規定のプロトコルに基づいて処罰したものと弁解した。
2018年█月██:
ラム博士が更迭されてから、セキュリティはさらにやりたい放題、私たちをいたぶった。エージェント・リャンが死んだ。セキュリティは大勢の前で彼を射殺した後、皆により誠実に振る舞うよう呼びかけた。
2018年█月██:
深夜、あいつが触ってきて——16
実験ログCN-689:
実験番号: 実験CN-689-1
実験対象: 李██、麻薬密輸罪で収監中。薬物使用の前科あり。
実験目的: Dクラス職員の標準募集プロトコルを用いて、異常の起点を調べる。
実験結果: 契約場所をサイト-CN-71のDクラス職員配給所に設定して実施。エージェント・ワンライとエージェント・██が契約手続きを監督した。対象は契約後、即座に昏睡状態に陥り、3秒後に覚醒。対象の意識はレベル2の機動部隊員に置換されていた。対象は自身がDクラス職員の制服を着用していることに違和感を示し、エージェント・ワンライと██に質問を行った。インタビュー中、対象はエージェント・██に面識があると主張したが、██は否定。対象は激昂し、エージェント・██を素手で攻撃した。対象の攻撃は高度に洗練されており、職業格闘技の水準に達していた。警告が無視されたため、エージェント・ワンライは銃で対象を制圧。対象は3日後、重度の負傷により死亡した。検視の結果、対象の血液は薬物検査に対して陰性反応を示しており、各種生理的指標も健康水準に合致。薬物使用の痕跡は全て消失していた。
実験番号: 実験CN-689-2
実験対象: 張██、強盗罪で収監中。
実験目的: 対象を「Dクラス職員」以外の肩書きで雇用した後、消耗性実験の担当にあてた場合、異常が発生するか否かについて調べる。
実験結果: 契約場所を██刑務所の面会室に設定して実施。エージェント・ワンライとエージェント・██が契約手続きを監督した。「財団レベルR実験室の助手」という肩書きで対象を雇用し、消耗性実験を担当させた。対象はSCP-CN-689の影響を受け、意識が[データ削除]に置換された。ラム博士は東アジア監督者議会司令部に対して緊急警報を発信。司令部はO5-CN全13名の安全を報告した。
実験番号: 実験CN-689-3
実験対象: 陳██、元レベル2の初級研究員。[データ削除]事故により、Dクラス職員に降格。
実験目的: 一般職員をDクラス職員として雇用した場合、異常が発生するか否かについて調べる。
実験結果: 契約場所をサイト-CN-71のDクラス職員配給所に設定して実施。エージェント・ワンライとエージェント・██が契約手続きを監督した。対象が契約を拒否したため、エージェント・ワンライは3時間に渡って[データ削除]を実施。対象はその後、契約を了承するも、明確な異常は発生しなかった。ラム博士が対象にAクラス記憶処理を施した所、対象は記憶処理に免疫を有していた。
皆様、以下はエージェント・ワンライがセキュリティスタッフを引き連れ、収容を突破したSCP-CN-689-1に対峙する場面を記録したものです。
[再生開始]
エージェント・ワンライ: アンタらがまだこんなことをやれるとは、驚きだ。
SCP-CN-689-1-1: [自動システム警告: 致死的ミームを検知、編集済]
エージェント・ワンライ: 全員、耳をふさげ!
[2名のセキュリティが倒れ、生命反応を失う。SCP-CN-689-1個体は対抗ミームを摂取しているとみられ、致死的ミームの影響を受けなかった]
[SCP-CN-689-1-29は折れた椅子の脚を使い、エージェント・スフレの影を釘付けにする。エージェント・スフレは悲鳴を上げ、胸部に穴が開く。穴は強烈な吸引力を発し、エージェント・スフレの身体を内部へと吸い込んだ後、消失]
SCP-CN-689-1-29: スーザンの仇だ!このくそったれ……
[エージェント・ワンライがSCP-CN-689-1-29の頭部を銃撃、対象の終了に成功する]
[SCP-CN-689-1-32がエージェント・ワンライに飛びかかり、彼の銃を蹴り飛ばす。2人は取っ組み合う。エージェント・ワンライは対象を床に押し付けると、頚椎を捻じ曲げ切断。対象の終了に成功する]
[SCP-CN-689-1-1が銃を拾い、エージェント・ワンライに向け発砲する。銃弾がエージェント・ワンライの皮膚を掠るも、彼は負傷せず。SCP-CN-689-1-1は再び引き金を引くが、銃弾はエージェント・ワンライによって回避される]
SCP-CN-689-1-1: お前か、お前だったのか。
エージェント・ワンライ: ようやく気づいたか。
[エージェント・ワンライはSCP-CN-689-1-1に向かって突進する。しかし、SCP-CN-689-1-1は再び致死的ミームを発現させる。エージェント・ワンライは即座に耳を塞いで回避。今回のミームはより強烈であり、全てのセキュリティが殺害される]
エージェント・ワンライ: 畜生! [エージェント・ワンライは曲がり角に隠れ、軍用ナイフを取り出す]
SCP-CN-689-1-93: こいつで最後だ!くたばれ、タイプグリーン!
SCP-CN-689-1-1: はっきり問おう。お前は誰だ?目的は何だ?エージェント・ワンライ……いや、D-7086、慕容飛と呼ぶべきか?
エージェント・ワンライ: 俺が誰かなんてのは重要じゃねえ。財団様の賜物だよ。俺はロードス・プロジェクトの逆行プロトコルが生み出した失敗作だ。当然ながら、俺は終了された。だが奇妙なことに、ロードス・プロジェクトの転生効果はここでも発揮された。俺は転生する度に、どこかのサイトのDクラス職員になった。
エージェント・ワンライ: 数え切れねぇほどの実験で、俺はアンタらを観察し、学び、尊敬し、軽蔑した。
エージェント・ワンライ: 財団が俺に、妊婦に対して最低最悪な仕打ちをするよう強要した時、俺は悪者になった。お前らは俺にこう言った。財団は必要であれば悪を犯さねばならない。お前の悪は、世界を救うための悪だと。
エージェント・ワンライ: 財団に恐ろしくヤバイ病気を移され、生きたまま解剖された時、俺は自分に言い聞かせた。どんな苦痛も、世界の安定に繋がるんだと。
エージェント・ワンライ: 財団がアノマリーに脅かされ、窮地に陥った時、俺は身を投げ出して、そいつを滅ぼした。お前らは俺を英雄と呼んだ。
エージェント・ワンライ: だが、どんなに上手くやっても、お行儀良くしても、Dクラスの待遇は一向に改善することはなかった。結局俺は、月末に終了される運命になっていた。アンタらは記憶処理剤や莫大な資源を持っているが、Dクラスには慈悲を見せようとしない。Dクラスには死んで当然な奴もいれば、軽犯罪だったにも関わらず、1ヶ月後の釈放というエサに食いつき、契約した奴もいる。冤罪で捕まった不運な奴もいる。そいつらに帰路が与えられることはなかった。「人類を守るため、必要悪を行使する」……聞こえは良いが、実際は釈放に値する奴を選ぶのが面倒くさいだけに過ぎない。アンタらは人間で、俺達も人間だ。どうして助けてくれないんだ!
SCP-CN-689-1-1: お前はロードス・システムを通じて、カント計数機を騙したんだな?
エージェント・ワンライ: ああ、とても便利な装置さ。何百回も死んでから、やっと基本的な機能を理解したけどな。ロードス・システムは元々、平行世界の財団が作り出したものだ。どんなKクラスシナリオが起きていたって、自由に世界を往来できる。高ヒュームや低ヒュームの環境にあれば、安全なヒューム障壁を生成する。俺の場合、次元転移はもうできねぇが、EVE粒子を吸収する機能はまだ生きてたんで、ヒュームをごまかすことができた。システムをうまいこと使えるようになったんで、俺は現実を改変し、財団から逃げ出そうと試みた。けれど、それは失敗に終わった。
エージェント・ワンライ: ロードス・システムにはセーフティがかかっていた。俺は財団の承認を受けなければ、サイトから離脱できない。自由になれる唯一の方法は、財団から正式に特赦を貰うことだ。どうすれば貰えるんだ?財団のために、手柄を上げれば良いのか?いや、無理だ。そんなので特赦を貰えるなら、俺はとっくのとうに釈放されていたはずだ。だったら、現実改変で財団に立ち向かうべきか?いや、俺は絶対にそんな真似はしない。歯向かえる力があったとして、俺より強い現実改変者はごまんといるんだ。そいつらでさえ、財団の収容下にいるんだからな。
SCP-CN-689-1-1: なるほど、だから一芝居を打ったのか。我々とDクラスの身分を入れ替え、財団職員に不安を与えた後、群衆の圧力によって、財団にDクラスの待遇を改善させる。そうすることで、特赦のチャンスを得る、と。
エージェント・ワンライ: [軍用ナイフを回収し、両手を高く挙げ、曲がり角を出る] その通り。財団を離れることはできねぇが、俺はどんな身分にもなれるんだ。アンタらの身分にもな。俺を殺したって無駄だ。俺はまた、どっかのサイトのDクラスに生まれ変わるだろう。そうなったら、アンタらは永遠に身分を回復できなくなる。言っとくが、これは報復ではないし、反抗でもない。俺はただ、財団を離れて、まともに暮らしたいだけなんだ。
SCP-CN-689-1-1: 我々はアノマリーの脅威から世界を守り、闇の中で殉じることも惜しまないと誓ってきた。この異空間の檻はお前のために設けたものだ。お前はもう、どこにも移動できない。
エージェント・ワンライ: アンタは勘違いしてるよ。 [エージェント・ワンライの身体が徐々に透けていく]
SCP-CN-689-1-1: 何故だ……?
エージェント・ワンライ: どうやら、お仲間も動揺してるようだな。人ってのは自分よがりだ。生死が関わると、いっつも本性が露わになる。俺は財団サイトでしか活動できねぇ。だがな、異空間を維持する奴らのほとんどは、財団に対して不信感を抱えている。ここはまだ「財団」の一部と言えるだろうか?
エージェント・ワンライ: 当ててやるよ。アンタらも内心は、財団を逃げ出したいんだろう?
SCP-CN-689-1-1: 待ちなさい!
エージェント・ワンライ: じゃあな。
[再生終了]
結構。ではこれより、投票を始めます。エージェント・ワンライの参加を承認しますか?
賛成。
賛成。
賛成。
反対。
賛成。
賛成。
賛成。
賛成。
反対。
反対。
賛成。
反対。
賛成。
賛成9票、反対4票、審議を可決します。ようこそいらっしゃいました、エージェント・ワンライ。参加申請は承認されました。あなたのコードネームを教えて頂けますか?
05-D、この「D」は「Disposable使い捨て」の意。
改めまして、おめでとうございます、05-D。