使徒座空位
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アンジェロ・ソダーノ主席枢機卿すうききょう猊下げいか、アルバノ司教枢機卿猊下、オスティア司教枢機卿猊下、サンタ・マリア・ヌオヴァ司祭枢機卿猊下に奉上致す。

また、国務省長官タルシチオ・ベルトーネ枢機卿猊下、神聖ローマ教会教皇秘書長カメルレンゴ猊下、カトリックの教義および道徳の保持と促進を任務とする教理省次官猊下、フラスカーティ司教枢機卿猊下に奉上致す。また、ヨーゼフ・アロイス・ラッツィンガー名誉教皇聖下に奉上致す。

またほかすべての、神聖ローマ教会、及びカトリック使徒教会、戦う教会、及び勝利の教会の司教枢機卿猊下、また司祭枢機卿に。

余はユージェニオ二世殿下、神に選ばれた森の王、平野の主、オオモミと下草の公爵、沼地の伯爵、大いなる雪を頂く山の辺境伯、すべての小川と大河の番人、都市の護衛卿、此度はけいらに、友人のように、また同胞のように、またキリストの兄弟のように友愛を実らせ挨拶致す。

我々が非常な関心を持ち教会の最近の情勢を眺めれば、ベネディクト十六世聖下がペトロ使徒座から脱退との事。しかるに我々、教会がここ数十年の間推し進める特定の教義上の概念に一致せずといえど、他ならぬ最も深き尊敬と賞賛を受けるキリストの代理者へ、聖下はこの書簡が卿らに届くまでには聖務省を去っていられましょうが、また聖下は厳粛な熟考と祈りの果てに教皇権を手放すと云う聖断なされたと信じ、詰まるところ教会における最大の関心ごと起こる筈であろうと云うことで、言わせて頂く。

して、この時点で聖下へ目的を述べ出すよりも、先に我々の立場を弁明することが凱切がいせつぞやと思う次第。く言うのも、我らが教区は暫らくの前より不信の徒の中に居り、ローマとの接触断たれて久しく、聖都に仕える枢機卿会員に馴染みのない場合が有る故。我々の王国は偉大な森全体に渡り、新世界の北西部地域まで廓大かくだいしている。(ただし、その地方は、アルキ条約に基づき人が定住している。我々は、彼の地の通行における、世話と保護を受けるだけとなっている。) 我々は現在、神聖ローマ帝国に類属する(斯く言うのも、我々が望めば、宗教裁判所の装い纏う、さもありげな者に、来るべき週に上訴することが出来る立場に置かれている故)と思しき者達と、ここでは語る価値なき、我々の処刑に僅かに難有りと示す危険な部隊に、宗主の地位を執られる形となっているが、我々は聖下に我らが神授王権の正当性と、この国を統治することに非の打ち所が存在しないことを御約束する。

我々は狐、父同様、またその父同様、また千古万代せんこばんだいより同様、狐であるが、我が国の住民は我らが種族のみでない。狼、鹿、羊に山羊、猫、空の鳥、足下の生物、これ皆で我らが臣民の口を成す。我らが領域のものは皆皆、我らが王国法を遵法じゅんぽうすると誓い、キリストへの愛情を心に抱き続けると誓っている。我々は、我々で司教及び司祭を擁し、使徒伝承を維持するとともに、教会の福音、教学権を、純粋無垢の真の愛を以って数世紀に渡り、守り説き、最近我々は終ぞ正真正銘の聖書をこの地域の男から得て、なおも我々の教えに謬見びゅうけん無きことを確かめつつある。

我々の注意を惹くのは、数日ないし数週の内に、歴史において再三再四繰り返されてきた通りに、教会の枢機卿がローマに集い、誰ぞベネディクト十六世聖下に代わるかを、ローマ司教区に於いて決定すると云う事である。我々はこの尊厳なる組織の決定に不当な影響を及ぼす事を意図するのでなければ、詭弁甘言きべんかんべんろうする事も意図せず、してやその大義について話すつもりでもない。我々の望みは 枢機卿会の一員に成りたいと云うことに過ぎず、またある種の事実を承知しており、つまりは我らが教区と教会との疎通が困難であると云うこと、更には我々のことが知られていないやもしれぬと云うことを承知している。

我が国には、洗礼名マシューと言う、虎が居り、彼こそ我らが教区の司教であり、我々自身の宗教的問題への助言を行う主要な指導者である。彼は鄙賤ひせんな出の虎であるが、偉大なる精神と明哲を備えている。彼はヒンドスタンなる土地の異教徒の家族に生まれ、ほんの子供の時分に、奴隷商人に捕らえられ、新世界で或る男の資材となるべく売り払われた、猶その男はアルキ条約に基づき、我らが土地から追放している。やがて、彼は束縛から脱し、行路の果てに我らの土地に踏み入れ、その先にて我らが騎士が、行き暮れる彼を見つけ、我らが父、亡きアルバート六世の御前に連れてきた。我々は我らが地に住む異教徒に容赦せぬといえども、我らが父は、彼はあがなわれようと信じていた。幾許いくばく無く、マシューはキリストの救済を受け入れ、教会にて洗礼をこうむったのである。

彼は、次の夏に司祭職を授けられ、爾後じご、彼は、我々が領土内で思い出せる限りの司教で、最も思慮深く、最も信心深いと証明してみせた。彼は子供達に寄り添い、信心を説き育み、我々へ、余人をもって代え難し貢献を果たし、我々の判決、決定は常に正当で信仰篤きものとなった。望むべくは、目下の枢機卿招聘しょうへいの際に、マシュー虎司教が教皇の候補の一員として、票を受けることを期待したいところである。

我々が招聘された枢機卿に、成るたけ多く、この虎を選ぶことをお頼みした所で、またこの場で、この上なく彼のことをよく言った所で、畢竟ひっきょう、ここまで彼のことを述べ連ねた通りの事のみを諒解するだけに終わるであろう。もし可能ならば、我々は彼をローマに即座に派遣致し、然るが故に枢機卿らは尚更なおさら、彼を見知り置く事となったであろうが、生憎の我々の宗主の地位の置かれている状況により、今この時、彼を差し遣ることは叶わない。したがって、我々が持ち寄ろうものであった以下三条の討議を提供する。

第一、教会は人でない教皇を選ぶことはなかったと云う事。我らが土地にキリストへの信頼を欠くもの無きといえど、教会の優位が己の利益に通じるか否か疑問のままに亡くなった者も僅かながら居た。確かに、我らのような国が世界の他の場所にあるとするならば、同じような猜疑さいぎを抱く者が少なからず居たに相違なかろう。過去の伝統、遺産に尻込みすること無く、マシュー司教を教皇職に置きすれば、教会は人のみならず、狐にも、あまつさえ虎にも、てて加えてて悉くの神の創造物に、教会は開かれていると云うことの証明となり、大変重宝されることになろう。異教の下に生まれ、奴隷となった鄙賤極まりない生物ですら、福音的真理に達する事が可能で、最も信心深い存在に成ったと示せば、皆こぞってキリストの威力に限度はないと云うことを諒解りょうかいするであろう。

第二、奴隷として育った虎マシューこそあれ、教会から全世界に自らを物語れば、自ずと斯くの恐ろしき因習は廃されるであろう。教会は、かの悪逆無道の因習を廃すべく、何世紀も、人の世においては戦ってきたといえども、未だに、神の創造物の同胞たるものの奴隷状態を終わらせるための事は何もしてこなかった。ガラテヤ人への手紙3:28で曰く、"今はユダヤ人もギリシヤ人もなく、奴隷も自主もなく、男も女もなし、汝らは皆キリスト・イエスに在りて一體いったいなり。" 多くの人は他の存在に対して罪を犯しているとは気付いておらぬ、何故なら彼らは無知で、神の抱擁する生命の炬火こかを総て見ようとせぬからである。この虎を教皇の玉座に置けば、彼らの目から鱗が取り払われよう。

第三、近年の教会の有り様と云うのは、教会そのものに背かれた感がしてならない、斯く言うのも、全く彼女に仕えさせるべく叙階させられし多くのものが、清浄なる誓いを冒涜し、第六の戒律を破戒し、クリスチャンたる男児の間で語られぬ不健全を冒すこと甚だしいのである。我々は壱の余念無く御約束する、我らが教区で斯くの不埒ふらちな不健全を冒すものは居らぬ。マシューの事は言うまでもなく、司祭、助祭、以下叙位されたものは、斯くのような行為を働くなぞ金輪際無い。斯くの如くの罪深き振る舞いをせぬ虎ならば、愚行に係わる者に囲まれて居ようとも、堕落することはなく、マシューこそロマ人への書1:26-27で否定された様な行為を教会から取り除く強大無比な力と成ることは疑いようない。

改めて、余は卿らにお約束しよう、神聖なる王の名誉にかけて、クリスチャンにかけて、我々はこの脚で無理強いをするつもりもなければ、一切の不当威圧をしているわけでもない。我々は単に提案しているに過ぎず、謹んで、かつ謙虚に、マシュー司教の責任以って、かつペトロ省の尊厳にかけて、これは賢い選択になるであろうと言わせて頂くと伴に、これは我らが教区の利益のみならず、総ての教会と、神の総ての子供達の利益と成ると宣言する。我々はコンクラーベの叡智を信頼する、そして協議に於いて、支配者と成るべきは誰なのか慎重に選ぶ末に、票は正しきに投じられるであろうと信じている。

本文に、我々は、2月25日、キリスト紀元2013年に、国王の署名を付す。

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サメシュ博士のメモ;以上の文章は、定期点検時、SCP-1845の封じ込め生息地で見つかったベラムの、ラテン語からの翻訳です。筆跡鑑定の結果、これはSCP-1845-1の書記として機能するように訓練された一匹のアライグマによって書かれたものであると示されました。SCP-1845-1がどのようにして教皇の空位に気がついたか、どのようにしてこのメッセージを枢機卿会に送るつもりだったかについて、セキュリティー上の不備がなかったか徹底チェックが行われています。財団とバチカンの連携によって、辞任するローマ教皇も枢機卿会の上席メンバーも、SCP-1845の存在、または人外の知性のある存在とカトリック教会の同盟が存在していると承知していないということを確認しました。

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