SPC-140
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中央情報管理局ならびにプロジェクト運営事務局(CICAPOCO)による通達

SPC-140は目下稼働中です。エージェントはCYAN ABYSS変種鮫科存在の皮膚並びに墨の確保及び他の『青銅の昇拳』の実例の確保に最大限努力してください。グレイ・ワンダラー及び協力者を特定する試みは進行中です。グレイ・ワンダラー及び関連人物との有益な接触事案においては、オメガ-ブラックの優先事項として即座にCICAPOCOへの報告が義務付けられています。許可なき直接的な接触は可能な限り回避が推奨されます。不可避の接触事案においては、グレイ・ワンダラーが鮫科存在に対する有力な同盟者足り得る性質上、職員は外交儀礼に則った行動を義務付けられています。

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CYAN ABYSS変種鮫科存在、『鮫科拳闘マニュアル』第11版、図版6:51

プロジェクト番号: SPC-140

鮫科殴打ケイパビリティ: 『青銅の昇拳』に記載された上級SPC術及びSPC-140の更新により出現した考古遺跡からの出土品はセンターの鮫科存在の脅威への対処能力において有益であり続けています。加えてSPC-140が完全に稼働した場合、SPC-001の影響を歴史から完全に排除するであろう有益な再構築イベントを引き起こすと考えられています。

プロジェクト構成: SPC-140は主にCYAN ABYSS変種鮫科存在の皮膚に実体より得られた墨を用い原ウラル語で書かれた巻物(『青銅の昇拳』)によって構成され、『シャーキック戦争年代記』という題名が付けられています。追加の構成物はCYAN ABYSS鮫科存在より得られた皮とインク、及び他の『青銅の昇拳』実例です。(特筆すべき点として、これら他の実例は外宇宙由来です。)

『青銅の昇拳』は元々、中央アジアで発生した未知の文明並びに鮫科存在との間での戦争について扱っていました。この戦争は紀元前1800年頃に"アディトゥム"と呼ばれる小規模な都市国家で勃発した奴隷反乱を契機として始まりました。これら叛乱奴隷はSPC-001への直接崇拝を受容し、"シャーキック1・カルト"と称されています。変種の生命工学を用いて、これらシャーキックは自分たちを鮫科と頭足類の組織を備えた合成生命体、すなわちへCYAN-ABYSS実体2に変容させる能力を有します。当初の発見時点で、主題となっている戦争は紀元前300年に燕王国の拡大に伴う文明の最後の拠点の陥落と支配層である学者階級ダエーワの処刑により終結しました。強化の結果、この年代は文明が後の日華連邦(強化概要を参照。)となる金王朝との同盟の結成及びその後のダエーワ階級のほぼ全員が船上事故で亡くなる紀元後1210年にまで更新されました。

『青銅の昇拳』はダエーワの歴代哲人王によるSPC-001の弱点の鮫科拳闘の発見及び戦争の長期化により続けられた、洗練さを増していく鮫科殴打ケイパビリティの開発について記されています。加えて巻物自体をSPC-001の影響の歴史からの完全排除を目的とする高度な未完成兵器に変える方法が記されています。

CYAN-ABYSS実体の皮膚や墨もしくは巻物の複製品に直接接触すると『青銅の昇拳』はそれらオブジェクトを吸収します。この結果、巻物の長大化と新しい文章の出現が発生します。これら新しい箇所では既に記載があった鮫科殴打テクニック並びに歴史的事件についての掘り下げや修正が含まれますが、大抵の場合は年代順に続いていく歴史及び進展した鮫科拳闘技術についての情報という、新しい。より現代に近づいた記述から成ります。更新前の記録での文明の最後の崩壊は後代へと移されます。新しい人物、出来事、そして(図版も添えられた上で)拳闘技術の改良が追加されます。センターの考古学者は対応する新しい遺物やダエーバイト文明の痕跡を記述通りの場所、地層で発見しましたが、いくつかのケースでは完全に探査済みの発掘現場から遺物が発見されました。いずれの場合でも、ダエーバイト文明は支配層であるダエーワ階級の構成要員の大半が殺され、鮫科存在に貪り喰わて表向きには終焉を迎えます。どのケースでも最後は崩壊へと至るにせよ、生き残ったダエーワが再結集し支配階級の再興に成功しています。

強化に必要な墨はCYAN ABYSS実体の胸部の鰓の真下、人間の胸部ではおおよそ肺に相当する箇所の2つの墨袋から採取されます。(『鮫科拳闘マニュアル』3:13.3から3:13.5を参照。)

強化概要: 『青銅の昇拳』は1952年11月28日、マサチューセッツ州沖のCYAN ABYSSの前哨基地である冥王の砂州へのアメリカ衆合国政府による襲撃後に発見されました。文書は1954年3月に完訳へと至り、1956年に得られた技術が『鮫科拳闘マニュアル』第6版に収録されました。

1963年12月2日、正体不明の人物もしくは集団(グレイ・ワンダラー)により、センターに対する情報提供が行われました。『青銅の昇拳』中の原ウラル語で記されていた暗号文書ではセンターの巻物発見を祝福し、加えてセンターにCYAN ABYSSの皮もしくは墨を接触させるよう提案してきました。1964年2月13日、CICAPOCOにより実験が許可され、CYAN ABYSS由来の産物の接触による強化方法が発見されました。

1975年1月30日、センターはホラズム共和政汗国ムイナクの遺跡から、2冊目となる『青銅の昇拳』の写本を発見しました。接触において、2つの文書が生成され、タイムラインの約400年の延伸が引き起こされました。

全体として、313.6リットルのCYAN ABYSSの墨、470.4kgの皮膚そして『青銅の昇拳』の追加の2つの実例が『青銅の昇拳』の強化に用いられ、巻物の長さは205メートルまで、タイムラインは約1000年まで延伸しました。この結果、第11版での170点の応用技術のうち102点が『青銅の昇拳』からの直接の情報元になるという『鮫科拳闘マニュアル』への大規模な修正が発生しました。

1984年7月20日、センターのエージェントがグレイ・ワンダラーと蛇の手のエージェントらによる会合を傍受しました。以下の文書は会合の盗聴音声の書き起こしです。

<記録開始>

正体不明の蛇の手の工作員1: お前が殴り屋たちと児戯に興じているのは退屈だとは言えないけどね、並行世界のお前は看守たちと上手くいった試しは間違いなく無かった。だからと言って、我々が助けてくれると考えた理由は全く分からないぞ。お前は今後一切図書館3から歓迎されないし、アーキビストたちも我々がお前に手を貸したとすれば相当控えめに言ったとしても、いい顔はしないだろう。

グレイ・ワンダラー: 承知しております。我が民と図書館との間では夥しい悪しき血が流れました。しかしながら、この件において、共通の興味関心を抱いていると思うのです。私の故郷であるこの世界線はあらゆる生じうる諸地球を脅かす危険な逸脱を有しています。私はこの現実の骨組みにおける欠陥の修復を試みてきました….お気に召してくれると思ったのです。

正体不明の蛇の手の工作員1: 誠実さを些か欠いているな。非存在の問題の完全な解決にまで膨らんでしまう以上、我々への要求の内容はお前の所のサメの問題の解決に留まらなくなるのだから。望んでいるのはダエーワの絶滅であるため、図書館としては受け入れがたい、。

正体不明の蛇の手の工作員2: [笑い声] サメに貪り喰われるのはイケてるけどね。

正体不明の蛇の手の工作員1: そうだな、つまりだ。お前は自分の価値を証明しなければならない。具体的に言えば、お前は我々に何を対価に出来る?

グレイ・ワンダラー: 返礼品というわけですね。もし私のためにルールを捻じ曲げてくれるのであれば、こちらも同じ手を打ちましょう。あなた方の図書館には未知であっても、私にはありきたりとはいえぬ数々の事物があります。

正体不明の蛇の手の工作員1: 本気で言ってるのか?

グレイ・ワンダラー: 名付ける行為でさえも安全とは言えぬのですが、私は本気です。Mistaken Beast4の手に落ちていない年代記1冊と引き換えに、禁断の伝承をお伝えましょう。

正体不明の蛇の手の工作員1: ええと…なるほど、こいつか。所有下にない情報を対価とするなら、恐らく図書館とてお前の罪業に目を瞑ってくれるだろう。こいつは稀少品だ。ただし実際の図書館が見せる反応の中身について手掛かりがない中での取引は無理だ。持ち帰って、どういう風に受理されるかを確認した上で、取引が成立可能とされた場合、返却するとしよう。ただし保証は出来ないだろうな。

グレイ・ワンダラー: 今は構いません。言うまでもなく、私があなた方に提示した取引の中身を並行世界の私たちが知ってしまった場合に、私を殺す術を見つけ出す未来が存在する以上、あなた方が調査に慎重になってくれるのは有難いものですから。

<記録終了>

この結果を受け、エージェントは外宇宙起源の『青銅の昇拳』の諸版に警戒し、発見した場合は確保及び報告に最大限努力を尽くすよう義務付けられました。もしセンターが再度VENUSBERGへのアクセスを確立した場合、並行世界の『青銅の昇拳』文書の入手は最優先事項と判断されます。(事案中のVENUSBERG内のエージェントは鮫科存在との接触を厳しく禁止されます。インシデント GOBLIN CHARIOTを繰り返してはなりません。)

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