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2019年10月9日
台風で発見 大量の指の骨 信濃中央新聞社
列島に衝撃を与えた台風19号はまた思わぬ衝撃を与えたようだ。
山梨県芦畑村の山の斜面に埋まっていた大量の指の骨が発見された。現在掘り出されているものだけでも100本以上の指があるとみられている。
発見者は地元に住む78歳の元医師。日課の朝の散歩中、いつものコースの脇に大雨で崩れた土砂が。気になって近づくと土の中に怪しく光る白いものが2つ。最初は鳥か山猿の骨だと思ったそうだが、人間の指骨だと気づき警察に通報したそうだ。
遺体が埋まっている可能性があるとして警察が近くを掘り起こすと、他の骨や歯などは見つからず指骨が次から次へと掘り出された。皮膚や肉片は発見されていないため、腐敗するほど長い時間埋められていたと考えられ、身元の特定は難しいと考えられている。
突然見つかった"指塚"だが、芦畑村には産業物の不法投棄が問題となっており、今度は死体が投棄されたかと地元の人々は意外と冷静に考えている。
警察は指の遺棄された時期の調査や周囲一帯の捜査を続ける予定だ。
インタビュー記録1.docx
山城組 代打ち
川上遼
また取り調べかい、ご苦労様なこって。んん、初めて見る顔だな。別の部署?なるほど。それで俺に何のようだい。特に話せるようなことはないと思うがね。右手の指?おかしなことを聞きなさるね。そして極めて不快だ。このがたがたな手を見るたび、クソアマを思い出していらだってしょうがねェ。で、なんだ俺の指がどうした。失くした時の話を聞かせろだァ?とことん気に障るヤツだな。まぁいい。察するに大方"指切りおりん"のクビでも狙ってんだろう。あのせせら笑いが豚箱にぶち込まれるならまあせいせいすらァ。
だいたい一か月前の夜だな。急に山城組に「赤鬼」に呼び出された。「赤鬼」は赤坂にある雀荘だよ。おりんを追ってるのにそんなことも知らねェのか?まぁ俺も"指切りおりん"の噂は聞いてたもんで、近寄ったことはなかったんだけどよ。おりんの話を抜きにしてもあそこは有村のシマでよくわかんねェサマが横行してるってハナシだから寄りたくはなかったわな。しぶしぶ店まで行くと高レート部屋に連れてかれて、案の定山城の若ェのが指を血だらけにして転がってた。俺の知る限りじゃそいつもまぁまぁの博奕打ちだったんだけどよォ。まあ相手が相手だ、分が悪いわな。俺が卓につくと、対面には落とした指を箱にしまい込み、手をお高そうな布で拭ってるくだんの女がいた。俺もそいつの顔を見るのは初めてだったが、部屋の暗さも相まって能面みたいに白い顔なのが印象的だった。糸のような細い目に一文字に引かれた紅い口……。タダモンじゃねェのはすぐわかった。
最初はなかなかイケてた。決して油断してたわけじゃあないがこれならまァチョイとドジ踏んでもクビは切らずに行けンなと思ってた。オーラス南四、俺はトップであの女はラス親だが30000点以上の開きがあった。だがな、あいつはその状況になって初めて笑ったんだ。目は変わらず糸目のまんまなんだが口が三日月のように開いた。月並みな表現だが、蛇に睨まれた蛙って感じだったな。あんなに点差があるってのによ。そこから5巡目での満直を皮切りに連荘でトップまで行きやがった。俺も何回もテンパったが意に介さずに脂っこい牌もすずしい顔で捨てやがってそんで上がっちまう。蛇の目でこちらの牌を、全てを見透かしてんのかと思わされたぜ。終わったころにはあいつ以外はほとんど点棒がない状態だった。急にツキ出したからサマでもやってんじゃねェかとも思ったがそんな素振りはねェ。もしやってんなら相当の手練れだね。
……そんで気づけば俺も指を賭ける羽目になるまで追い込まれていた。正直2本程度で済んだのは運が良かった、いや俺の実力のおかげだな。でも間違いなく俺の完敗だ。ドスですっぱり根本までいかれちまった。あのアマ……本物のサディストだぜ。あの指を切り落とすときの恍惚とした目。真っ赤な口。ああダメだ、思い出したくもねェ。
インタビュー記録2.docx
雀荘「赤鬼」 店長
関浩一
ええ、私はいわば雇われ店長。オーナーは有村林檎様です。"指切りおりん"などと呼ばれてはいましたが、私にはとても優しくしてくださいました。林檎様は有村組長の遠縁だそうで。生まれは京都の方だと伺いました。この「赤鬼」は昔から有村組が治めていたのですがかつては場末も末でほとんど人がいなかったそうです。そんな組にとっては二束三文の雀荘を組長が林檎様にお上げになったところ、みるみる再興したのです。不思議なお方ですね。
麻雀はすこぶる強く、負けたことは数回しか見たことありません。本気を出すと、まるでその場全てが彼女に支配されたかのようになります。いかさまをやっていたんじゃないかですって?いいえ、あの方はそんなことをする方ではありません。確かに組の方々はよくわからないおもちゃをよく使っていました。「歩く点棒」なんかも見たことがあります。ですがそんなおもちゃはいわば弱者の使うもの。あのお方はそのようなものを使わずとも勝てるのです。あまりの強さにどうして麻雀が強いのか伺ったことがありますが、ただにっかりと笑うだけでした。
もっとも麻雀が強いとは言いましたが、私には麻雀を好んでいるようには見えませんでしたがね。卓外では人当りもよく、時々笑みを零すこともあるのですが、いざ打ち始めると全く表情が読めなくなります。それこそポーカーフェイスで麻雀に必要な技能なのかもしれませんが。相手を負かせそうになると少し笑いだすのですが、なんというかその笑いがあまりにも指を渇望しているかのように見えまして。懐から愛用の小刀を出すときは舌なめずりでもするかのようでした。たといあの方が相手の指を落とすためだけに麻雀をやっている、と言っても私は驚かないでしょう。いっそ指が欲しくてこの雀荘を作り上げたといってもいいかもしれません。
林檎様はいつも雀荘にいらっしゃるわけではなく、大きな勝負が開かれるとふらっと現れて小枝を収穫してお帰りになります。……ああ、小枝というのは人の指のことです。あのお方は切った指を赤い果実の実った枝が描かれた箱に入れてお帰りになります。そこから小枝と呼ぶようになったんではないかと。切り落とした小枝の行方、ですか?私も伺ったことがありますが、これも笑ってごまかされるだけでした。聞くだけ野暮ということですかね。
雀荘「赤鬼」の隠し金庫で発見された紙.jpg
御献立
料理長 椎名
食前酒 Carol di prosperità
前菜 胡麻豆腐
揚蚕豆
牛時雨煮
造り 石榴の湯引き
煮物 小枝大根
揚物 小枝天麩羅
抹茶塩
御食事 炊き込み御飯
松茸 牛蒡 油揚
水菓子 グレナデンシロップゼリー
石榴倶楽部