窓の中に
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ぼくと彼女の話をしよう
初めて会ったのはバイトの帰りだったね。彼女はゆらゆら揺れる椅子に座って本を読んでた。たまたま窓からその姿が見えたんだ。のぞいたわけじゃないよ?
その日からぼくは彼女のことをちょくちょく見るようになったんだ。話しかけようとしたんだけど、女の人どころか友達すらいない僕には難易度が高かったんだよね。でもどうしても仲良くなりたかった。だから、とにかく彼女と接点を持つために彼女のことを探すようになったんだ。大学もバイトもどうでもよかったよ。

毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日ずっと探し歩いてたら、ついに██の服屋の前で彼女と会うことができたんだ!テンション上がりまくりでさ。ずっとさ、言いたかったことがいっぱいあったからさ、会ってすぐに全部、全部言い切っちゃったよ。今思えばとんでもないことだったよね、初対面の人間に早口で喋りまくられるなんてさ。
でも、彼女は最後に笑ってこう言ってくれたんだ。「これからもよろしくお願いしますね。」って!
彼女がこう言ってくれたおかげで、僕の何かが変わったんだ。

まず大きく変わったのが大学生活。1人講堂のすみでつまらない教授の話を子守唄にして2年間過ごしてきたけど、とんでもない時間の無駄な過ごし方だって気づいたんだ。あたりまえのことだったんだけど、ちゃんと講義を受けるようになったよ。教授とも仲良くしてもらえるようになって、気づいたら学科の奴らともよく話すようになったよ。これでこそ大学生って気がして生きるのが楽しくなってきたんだ。
ずっとケンカしてた親とも仲直りできたんだよね。やっぱり2人しかいない親だし、ぼくの意見ばかりぶつけて困らせるのは、この歳になっても続けるのは、恥ずかしいことだって思ったんだ。実家に帰って3人で話して、酒飲んでさ。美味かったなぁ、あの███。母さんが早くに寝ちゃってさ、父さんと2人でゆっくり話す時間が出来て、飲みながら、父さんに彼女の話をしたんだ。誰かが好きになってしまうのが怖くて誰にも言えなかったんだけど、父さんになら、と思って。父さんにぼくの目を見つめてもらったんだ。そしたら父さん、驚いた顔してさ。

そのあと、多分酔いつぶれちゃったんだと思うんだけど、ぼくめちゃくちゃ吐いたらしくて、夜中に病院に連れてかれたんだ。その時のことはよく覚えてないな。…でもなんで眼科に?とは思った。目が覚めたら真っ白な病室にいて、病院の人が話しに来て、ぼくのことについて何個か聞いてきたんだ。そこで彼女の話を、つい喋っちゃって。

それからぼくはここで暮らすことになったんだ。特に不自由もないし、むしろみんな優しくしてくれて居心地がいいよ。最初は戸惑ったけど、彼女のためだって思ったら何でも乗り越えられたよ。

ぼくはこれからも、彼女と過ごしていくよ。彼女はずっと、ひとみの中にいてぼくを待ってる。

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