永遠の『1』
評価: +2+x

財団においてはDクラス職員といえども貴重な人的資源である。
余程の事がない限り無為に『終了』する事は許されない。
そう、余程の事――例えば計画的な脱走を試みる等――がない限り。

(計算ミス、だったな)
声には出さず、彼はひとりごちる。

(計算ミス…勿論、私の、だ。アイツは正解を出した。一度は『1』になったんだからな)
この期に及んでも、彼は思索を巡らす。あの時の失敗を脳内で反芻し、改善の余地を模索する。次の機会などないのに。

(どれだけ万能でも、所詮は『電卓』という事か。こちらの意図を察して、融通を利かせたりはしない)
そろそろ意識が心もとなくなって来る。肉体のほうはとっくに限界のようだ。

(考えようによっては、私は幸せなのかもな……普通に死なせて貰えるんだから)
得体の知れない装置とも、得体の知れない怪物とも、得体の知れない世界とも、もう関わらずに済む。

(もうすぐ私は、解放される……解放……解、放? !?)
不意に、もう一つの可能性が脳裏をよぎる。

(アイツは、察していたのか!? 私の心を見透かした上で……)
ずっと何の感情も示さなかった彼の顔が、一気に驚愕に包まれる。

(刹那の『1』でも、何年、何十年程度の『1』でもない…永遠の『1』を! これが、アイツの弾き出した……)
そこまで考えたところで、脳も限界に達し。

彼は永遠の『1』を手に入れた。

特に指定がない限り、このサイトのすべてのコンテンツはクリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承3.0ライセンス の元で利用可能です。