世界は、あっけなく終わりを迎えた
いつもの様に家に帰り、妻の作った美味しいご飯を娘と食べる
娘の学校の話を妻と私は笑って聞く
翌日の朝、出勤すると筋骨隆々の警備員と軽い会釈を交わす
次に研究室に入り支度をする
私たちが負う危険を考えれば給料が安すぎると同僚と愚痴を言いながらやりかけの仕事を再開する
危険だが、やりがいがあって、家族がいて・・・
今思えばこの上ないぐらい、美しく、そして素晴らしい時間だった
私は、宇宙服を着てたたずんでいた
ここはかつて、生命の星と呼ばれた惑星
今ではただの荒廃した、化け物の巣窟だ
『空気残量・一週間 廃棄物循環システムによる食料の補填・一週間』
無機質なシステム音が告げる
正常なものは何もなくなった、アーティファクト(異常物質)とアノーマリー(超常現象)だけの、絶望にまみれた世界
しかし唯一つだけ、まだ希望がある
これは、最後の手段だ
この世界の仕組みがパラレルワールドという仮説通りでなければ、私は世界を破壊する事になる
それに、仮説が正しかったとしてもこれを行ったからといって全てが元に戻るわけではない
この世界は壊れたままで放置され、ただただ私だけが平穏を得るのだ
利己的な発想かもしれない
だが私はこれ以上、この壊れてしまった世界を見るのに耐えることができないのだ
それに、どちらにせよもう生存している人間も居ず、世界が破滅したところで困る者はいない
必要なもの、脚立と銃と弾は持った
これから空に銃を撃つむなしい仕事が始まる
だがこれで良い
また、あの美しい世界に戻れるのならば
事案2013/4/7
2013/4/7にS████博士のオフィス内にて発砲事件が発生しました。当時、S████博士は自身のオフィスにて報告書の作成を行っており、その最中に突然何者かに撃たれました。博士に怪我はなく、彼の証言では部屋には博士以外の誰もおらず、侵入された形跡もありませんでした。…