門が開く
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ヤハウェは時が来たことを知り、サイト17の彼の部屋で、人の形の内で目覚めた。

次の瞬間、彼はサイト0にあった。司令室にいた人員は、寝ぼけ眼の者もいたが、彼が現れると飛び上がった。ヤハウェは彼らの顔に理解の兆しが浮かぶのを見るため寸時を置いた。O5-14はよろめき立ち上がった。

「時来たれり」ヤハウェは詠じた。

また次の瞬間、彼は門にあった。財団がSCP-001-Gammaと呼ぶ存在は彼の前に頭を垂れ、燃え盛る剣を下ろし、その燃え立つ4枚の翼は畏敬の念を込めて広げられた。

「ウリエルよ」ヤハウェは言った。「時来たれり。門を開け。全地に私の軍を率いよ」

「我が主にして我が神よ。承り、命に服しましょう」ウリエルは答えた。

門は軋みながら開き始めた。その内には多くの目を持ち、混じり気のない赤い光を放って燃える数千の輝く被造物、即ち天使の軍勢があった。軍勢は白い剣を掲げ、戦の聖歌を歌い、数えきれないほどの光り輝く翼のこすれ合う音は大気を満たした。


サイト10の内にあったもの、特異点であり、そうでなく、常に「錠」の一部であり、そうでなかったものは花のように開いた。

サイト10は一瞬のうちに打ち砕かれた。その内にいた人員は考える暇すら与えられず死んだ。

そして彼らは生き返り、動揺し、ニューハンプシャーの何処かに打ち捨てられていた。さきがけのなした破壊を除き、サイト10は共に無傷で現れた。

一方で、サイト10の廃墟とその中のすべての死体は、かつて地球上に存在せず、今や中東の砂漠を数千マイル押しのけてずっと存在していた広大な谷の地中深くに埋められていた。サイト10はそれら二つところにあり、どちらにもなかった。いずれにせよ、あった

青と緑のエネルギーの波が打ち寄せ、谷はかつて見られたことのない動植物で満たされた。

そのまさに中心で、打ち寄せる玉虫色の波の中を巡りながら、「錠」は小さな特異点の中心で漂っていた。ついに「錠」は開き、信号を送っていた。


エヴァレット・マン博士が最近死んだSCP-098を解剖している最中、その死骸の脚が痙攣し始めた。

彼は半ばでメスを止め、何が起こったのかと見つめた。このようなことは一度たりとも起こったことはなかった。

博士は生きたSCP-098の個体が入った檻を見上げた。それらはまた奇妙な活動をしていた。それらはじっとしていた。赤橙色の脚一本さえぴくりともしなかった。SCP-098は異常な甲殻類の内で一番大人しくはなかったし、エヴァレットはそれらが今のように振る舞うのを見たことがなかった。

それらは…見ているようだった。何かを待っていた。

098の死骸はまだひくついていた。

「ふーむ」エヴァレットは言った。

白衣のポケットで携帯が震え始めた。これはセキュアホンで深刻な緊急事態の際にのみ鳴る。エヴァレットはメスを置いて電話に出た。

「エヴァレット・マン、サイト2036、ステータスファイブ」彼は言った。

「剣が振り下ろされ振り上げられる」電話の向こう側の声が言った。

「しかし剣は一打ちで殺すだろう」エヴァレットが答えた。

「現時点で緊急指令パトモスが発令される」声は言った。「995の封じ込め違反が発生した。616は開放された。我々は001-Gammaからの報告を待っている。073と076は確保済みであり…」

「098について知りたいってわけだな」エヴァレットは言った。

「SCP-098は活性化しているか?」声が問うた。

「残念だがね。少々奇妙に振る舞ってはいるものの何とも…」

098の死骸は凍り付き、淡橙色の炎へと変わった。

次の瞬間、他の098の標本は同時に燃え上がった。それらの殻の小さな隙間が開き、繊細で震えるトンボに似た羽根が広げられた。エヴァレットが理解できる限り、各々の098の実体はその肢と同数の羽根を生やしていた。死骸さえもが。死骸は今や明らかに死んでいないようだった。

一瞬のうちにそれらは檻の側面を突破し、一度に何か知られていない言葉で囀った。それらは密閉実験房のガラス窓を引き裂き、その途上にあった壁を破壊しながらサイト中に広がった。エヴァレットはそれを見つめていた。

「気にしないでくれ」エヴァレットは回線の向こう側の声に言う。「私はたぶん数えられると言うつもりだったんだ」


ヤハウェは13の異なる場所にいる残る全てのO5評議会の人員13人の下に現れた。管理者は何年も前に死に、後任もいなかったので当然ながらその下に現れることはなかった。O5-14が評議会で票を投じることはもはやなく、評議会は決選投票を必要としていなかった。それでも、残る全ての者の下へと彼は現れた。彼らは彼の所有物であり、ずっとそうであった。彼を神様コンプレックスを抱いた現実改変者にすぎないと考えていた不信心者でさえ、彼に従う他はなかった。彼らは全て彼の所有物であり、それは彼の手が彼の体に付属しているのと同じくらい確かなことであった。

13人は椅子から飛び上がり、ベッドから跳ね起き、跪き、よろめいて地面に倒れこんだ。

「我が僕ウリエルは、かつてそなたらの創設者に主の偉大にして恐ろしき日に備えよと伝えた」ヤハウェは一度に13の声で言った。「今日まさにその日が来た。最後の備えをせよ。成すべきことは待つことのみなり。私の軍は地を渡る。直に私は四人の騎手を呼ぶであろう。最後の審判の封が解かれれば、主の偉大にして恐ろしき日は来る。そして皆は楽園に至るであろう。

彼は答えを待つことなく一つ人の体に戻り、僅かな目眩を感じていた。彼は全能の存在であったはずだが、最後のが終わるまでその内で過ごすことに決めたこの小さな人間の体に全てを詰め込むことはできなかったようだ。全能なるが故に、ここのところ彼は一度に複数の場所に存在する練習をしていなかった。自然に、息をするようにこなせたが、長い間水底に潜っていた後に息をするくらいには不自然に感じられた。

実のところ、何かがおかしかった…彼が今まさに成したことを引き金に記憶の何処かが疼いた…

考えがまとまらなくなった。それは人の儚さの負の側面であった。この体は人として完成されていたが、真の全知に比べれば欠けるものであった。

彼は常にそうであるように次に成すべきことを知っていた。彼は名もなき古の谷に戻るであろう。彼が初めに創った地、エデンの先駆け。彼の他誰も足を踏み入れたことがなく、最後の日が終わった後でさえ誰も立ち入ることのないであろう谷。

彼は1歩を踏み出し、そしてそこにあった。

そして…

彼は一人ではなかった。


警報がサイト2036に鳴り響くのをエヴァレット・マンはぼんやりと聞いていた。緊急指令パトモスにせよそうでないにせよ、あらゆる大騒ぎは不要だった。

彼はかつてSCP-098の研究及び封じ込め用補助房であった場所から出、職員達に混じった。誰も彼に注意を払わなかった。全くもって無礼なことだとエヴァレットは考えた。098は誰一人殺さず、ただ…去っていったのだ。壁と天井の穴は直せるだろう。

彼は人ごみからギアーズを見つけ向かっていった。穏当なやり方で状況に対処できると信頼できるもう一人の輩だ。

「大規模な封じ込め違反が起こったようですね」ギアーズは言った。

「そう、SCP-098だ」エヴァレットは言った。「995と616も封じ込めを突破したと聞いたぞ。001-Gammaも直にだろうな。だが何を大騒ぎしているのかが分からん。XKクラスシナリオは前にも食い止めただろ。またやれるさ。違いと言ったらO5-14が騒ぐくら−」

ギアーズは手を挙げた。話を遮るのは彼の流儀ではない。だからこそ、ギアーズのその仕草一つで誰もが話を止めるとエヴァレットは知っていた。「私はパトモスのことを話しているのではありません」ギアーズは言う。「001-Gammaでもありません」

「うん?」エヴァレットは眉を上げる。「何が起こったって言うんだ?」

「クソッタレなことが腐るほどです」ギアーズはエヴァレットが誓って聞いたことがないほど、完璧に冷静な声で言った。

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