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アイテム番号: SCP-███

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル: SCP-███は典型的な電子機器以上の特別な取り扱いや保管を必要としません。適当な温度で、乾燥した状態で電磁干渉を避けて保管してください。SCP-███は人間に対して危険をもたらすことはないと考えられており、そのため専用の収容室ではなく安全ロッカーに保管することが可能です。

説明: SCP-███はおよそ4 x 2 x 0.5 cmの小さな長方形の装置です。SCP-███の外見は現代のメモリカードに類似した、一種の記憶デバイスの形状をしています。一方、機能面では現代のものより高度です――財団のエンジニアはその記憶容量がおよそ200テラバイトであると推計しています。入手できたデータに基づけば、SCP-███は2074年頃に製造されたものであると考えられています。

SCP-███を現在のコンピュータに接続するためのインターフェースを構築するのに数年を要し、デバイス内のファイルを読込むために必要なソフトウェアを開発するのに更に数年を要しました。

デバイス内のコンテンツはマルチメディアが記録された単一のファイルのみです。財団のソフトウェアエンジニアはファイルを復旧し、現在のコンピュータで使用可能な形式に変換することに成功しました。コンテンツの動画はモノクロームで再生され、記録のなかの1つの’レイヤー’のみが閲覧可能です。エンジニアは少なくともこのようなレイヤーが18存在し、各レイヤーはそれぞれわずかに異なる角度から、または異なる色で撮影された映像を記録していると考えています。この記録は未だ発明されていない、一種の3次元ディスプレイで再生されることを意図したものであると考えられています。

デバイスのコンテンツ: 2名の刑事による殺人容疑者への事情聴取のように見えます。映像の欠損した部分のために刑事の名前は判明しておらず、容疑者もまた名前が不明であり、’博士’とのみ言及されています。最終的には記録の欠損部分を復旧し、登場人物および場所、正確な撮影日付を特定することで、記録されたイベントに至るまでの年月で関係した人物が特定されることが期待されています。

以下は復旧できた箇所の完全な転写記録です。記録は我々が’刑事1’と呼称する男がカメラに最も接近する箇所の途中から始まります。

<記録開始>

刑事1:…あなたの自白でしたが、我々には複数の証人もいます。そして我々にはこれがあります…
刑事が目の前のテーブル上のボタンを押下すると、映像の後方にある壁がぼやけ、ハイテクな研究室のような施設にフェードインした。壁はある種スクリーンのような役割を持っている。スクリーン上では、1人の男が、”床から天井まで伸びている、ぼやけたもの”と説明するのが最も妥当な物体の前に立っている。彼はもう1人の高齢の男に対し何かを叫んでおり、高齢の男はショットガンの銃口を彼に向けている。武器を持っているその男は事情徴収を受けている人物と同一であり、何かを怒鳴り返している。若い方の男はぼやけた物体の方を向いて一歩前進したが、その時点で高齢の男はショットガンを発射した。もう1人の男の頭部の左半分が破裂し、一度身体を回転させた後ぼやけた物体の中に倒れこみ、そして彼の肉体全身が消失した。
博士: こうしなければならなかったのだ!
刑事1: 何故ですか?
博士: 彼を止める必要があった!
刑事2: 彼のしようとしていたこととは?
博士: さぁ、ただ彼の行動はおそらく世界を破壊していたかもしれない。
2人の刑事は小さく笑った。
刑事1: 世界を破壊していた、ですか。世界を救ってくださりありがとうございます、博士。
博士: ふざけているのではない!君たちも見ただろう、私が彼を阻止した時に彼の死体が物体の中に落ちていったのを。被害はおそらく既にもたらされていて、既に手遅れかも知れない。
刑事1: 被害とは?
博士: その説明はやや長くなるが。
刑事1: あなたは重大な罪を犯してここにいる。そして我々はようやくあなたの身柄を確保したのです。話してもらいますよ。
博士: 分かった分かった。私は君たちには全面的に協力しよう。全てを話すとも。ワームホールについて何か知っているか?
刑事1が肩をすくめる仕草をする。
刑事2: 映画で見聞きした程度の知識ですが。歪曲した空間のようなものですよね。
博士: その通り。科学的な話はここではあまりしないつもりだが、私と私のチームは安定したワームホールの開発に従事していた。ある地点からある地点へと即座に移動するためのものだ。およそ6ヵ月前、ブレークスルーが起きた。我々は実際に、それを作り上げたのだ。
刑事1: あなたがワームホールを作ったと?
博士: そうだ。我々は研究室の中でとうとうワームホールを開いた。時空に穴を開けることに成功したのだ!実際のワームホールは、君たちがさっき目にした通りだ。
刑事2: なるほど…?ではそれはどこに繋がっているのです?
博士: フィラデルフィアだ。
刑事1: オー、素晴らしい。それはきっと…おそらく。フィリーにとっては良い時代になったのではないでしょうか。
刑事2: さぁ、ハワイの方が良かったかな。
博士: 頼むから続けさせてくれ。
刑事1: 分かりました、どうぞ。
博士: ありがとう。最初にワームホールを開いたとき、それがどこに繋がるかは我々には皆目見当つかなかった。我々は思いつく限りの実験を実施したが、最終的にはそこに何かを送り込む必要があることが分かった。そこで位置情報が分かる機器をビデオカメラに取り付け、それを投下することにした。歪曲空間を抜けた時点で機器を起動したところ、カメラがあるのは150km離れた地点であることが判明した。我々は2時間以内にその地点に向かい、そして樹木の上にそれを見つけることができた。
刑事2: この話は結局どこに行き着くのです?
刑事1: フィラデルフィアではなくて。
博士: あぁ、あぁ。それについてはもうすぐ説明する。私が彼を殺した理由を説明する前に、全ての経緯を知ってもらわなければならない。続けてもいいかな?
刑事1: 続けてください。
博士: 我々はカメラを回収したものの、分かったのはバッテリーが死んでいることだけであった。我々はワームホール内部の何らかの現象により機器が焼かれ、それによりバッテリーが空になってしまったのだと考えた。何らかの手掛かりが記録されていることを期待し、ラボに戻った我々はそれを充電機に接続した。
刑事2: それで手掛かりはつかめましたか?
博士: つかめたとも!ただこれはある意味我々にとってショックだった。最初にディスプレイに表示されたメッセージは、”チップに空き容量がありません”だったのだ。それを裏付けるように、同時に1人の技術者がバッテリーには何の問題も見つからなかったことに大声を上げた。バッテリーは、単純に使い切られていただけだったのだ。
刑事1: つまり?
博士: 標準のチップは36時間の映像を記録できるものだった。当時使用したカメラモデルのバッテリーは48時間耐えうるものであった。我々がカメラを回収したのが2時間以内。刑事さん、にもかかわらずバッテリーは使い切られ、デバイスのストレージは一杯の状態だったのだ!チップの中身も確認をしたが、36時間の軌跡が完全に記録されていた。
刑事1: 要するに、カメラは壊れて、チップに破損したデータを書き込んでしまったということでは?
博士: そうではない!カメラは完璧に動作していた!回収した映像記録はラボにいる私が笑顔でレンズを覗き込むところから始まり、そしてワームホールを通っていき、まぶしい光の中――陽の光の中に落ちていったのだ!次に緑が、その次には青い空が映し出された。我々の分かる範囲ではカメラは35m上空のワームホールから落下し、木の上に着地した。幸運なことに、最後に中空を写した状態で映像は終了した。 我々は映像の天候状態と月面の様子から、カメラは150kmの距離を旅しただけではなく、9日もの時をさかのぼっていることが分かったのだ!
刑事1: 時間をさかのぼる。
刑事2: タイムトラベルですか。
博士: あぁ。
刑事1: そんなに私達の時間を無駄にしたいようでしたら…
博士: そのようなつもりは無い、誓って本当だ。ワームホールは空間だけではない、時間をも歪曲させたのだ。
刑事1: つまりあなたはタイムマシンを作り上げたと。
博士: 期せずしてだが、確かに、そうだ。それから数週間、数ヵ月間、我々はさらに多くの物体をそれに送り込んで実験を行った。滅菌処理をした生体サンプルなども、空間的・時間的な出口を高い精度で測定できるまで送り続けた。
刑事1: どのような成果があったのですか?
博士: 我々はワームホールの出口の誤差を目的地の1.5mの範囲内に、そして時間の誤差を想定から12分の範囲にとどめることが出来た。
刑事2が咳払いした。
刑事2: これがスノウ博士の殺害と何の関係があるというのです?
博士: すべてだ。
刑事1: では博士、あなたが自身のタイムマシンを使って今日この時間まで戻ってくることもできるのでしょうね。もし、あなたがラボに帰ることができれば。
博士: 分かった。今回の件を話す前にあのデバイスが何であるかを君たちに知ってもらう必要があったのだ。
刑事2: もう説明は終わったでしょう。さぁ、話してください。
博士: いいだろう。あの晩、私が家で読書をしていた頃にラボのセキュリティシステムが電話を鳴らした。立ち入りが制限されていた資材の保管室に何者かが侵入したとのことだった。その部屋はラボが保有していたあらゆる危険な化学物質や生物学的物質、武器、そんな類のものを保管していた場所だった。そこに侵入したのがスノウ博士であり、8リットルのRx52を持ち出したこともその時分かった。
刑事1: Rx52?
博士: 人造のウイルス、化学兵器の一種だ。罹患者は10分以内に深刻な発心を引き起こし、続いて膿疱が皮膚に表れる。症状は4時間継続するものの致命的というわけではなく、後遺症もない。
刑事1: 分かりました。続けてください。
博士: Rx52は致命的ではない一方で、それでも非常に危険だ。それが作られた目的は大衆の混乱とパニックを引き起こすことであり、殺戮は目的ではない。スノウ博士が持ち出しただけでも数万人もの人々に感染させることが出来る。私が研究所に到着して屋内に入った際ラボのコンピュータが私に挨拶をし、スノウ博士から新しいメッセージがあることを伝えてきた。私は私宛のメッセージを再生し、その時自分がすべきことを悟った。
刑事2: それは…
博士: 私は彼を止める必要があった、何をしてでも。
刑事1: スノウ博士からのメッセージはどのようなものだったのですか?
博士: それは一種の遺志と遺言のようなものだった。彼は自身が実行しようとしている計画のすべてを洗いざらい説明した。博士の言葉によると、彼は英雄に、伝説になるつもりだったらしい。彼はしばらくの間このことを計画していたようだ。ショットガン、200発の弾薬、8リットルのRx52を携行して過去に戻るつもりだった。彼が目的とした空間座標はニューヨークのマンハッタン、そして時間座標は2001年9月11日の午前4時だ。
刑事1: まさか?
博士: そうだ。彼は73年前のテロの朝に戻るつもりだった。刑事さん、君たちは2001年の9月11日に何があったかは分かっているだろう?
刑事1: 勿論です。歴史のクラスで全員が学ぶことでしょう。彼は何をしようとしていたのです?
博士: あのテロでは2,973人もの人々が死に、そのほとんどがかつての世界貿易センタービルにいた人々だった。博士は彼らを救おうとしたのだ。
刑事2: どういうことです?博士にテロが止められるはずが無い。2機の飛行機は完全に他の地点から飛んできたもののはずです。
博士: 博士は物理的に飛行機を止めようとしたのではない。彼は2つのビルにいた人々を避難させるつもりだったのだ。Rx52のキャニスターを4リットルずつ各建物の換気システムに接続し、当局に彼自身がテロリストであると通報し、両ビルに大量の天然痘ウイルスを放すつもりであることを公表しようとしたのだ。
刑事2: 天然痘?
博士: 20世紀に撲滅された致命的なウイルスだ。だがしばらくの間、生物兵器としての密かに保管されていたと考えられていた。彼の計画は二重だった――当局が博士の望んだ行動をしたならば、当局は両方の建物から人々を避難させたであろう。そうしなかった場合、彼は遠隔からRx52を建物の換気システムに解放したはずだ。 Rx52が引き起こす身体的症状はそれが本当に天然痘であると人々に信じさせ、人々はパニックを起こし、建物から避難するだろう。そうでなくとも、少なくとも人々は避難しようとし、当局が検疫手順を実施すれば、彼らはより低いフロアへと降りていくことだろう。
刑事1: なんてことだ。
博士: あぁ。巧妙な手段だ。攻撃を受ける人々には知る由もないが、もし計画が成功していたのなら、2機の飛行機は誰もいないビルと衝突することになっただろう。
刑事2: 武器は何のために?
博士: もし発見された際に備えてだ。彼は全ての事態に備えていた。Rx52の設置を目撃された場合、彼は銃撃戦を行うつもりだった。そうすればどちらのビルで彼が発見されるにせよ、当局はどちらのビルも閉鎖せざるを得なくなるという算段だ。博士は銃撃戦の合間に、彼らに「遅すぎる、俺は既にもう1つのビルにウイルスを設置し終わっている」と伝えるつもりだったのだろう。繰り返しになるが、こうすることでどちらのビルからも人々を追い出すことができる
刑事2: 分かりました、単刀直入に確認させてください。スノウ博士はあなたのタイムマシンを使って、この国の歴史上最悪の大惨事を防ごうとしたという理解で間違いないですか?
博士: その通りだ。
刑事2: そしてあなたはそれを止めようとしたと?
博士: あぁ、彼を止めなければならなかった! 彼に干渉させるわけにはいかなかったのだ!
刑事2: 何故? 彼は数千の命を救うことが出来たのですよ!
博士: 違う、それは断じて、間違っている。彼は歴史を変えようとしたのだ!歴史とは脆いものだ、分からないか?彼が計画を成功させた場合、我々の知るこの歴史は完全に書き換えられてしまう!彼が起こそうとしていたのはパラドクスだ!我々にはいったい何が起こるのかが予期できない、それが時空の構造を剪定してしまうかもしれない!時空それ自体の存在を破壊してしまうかもしれない!
2人の刑事は黙ったまま博士を見つめている。
博士: 分からないのか?彼は文字通り、世界を引き裂くところだったのだ!
刑事1: 座ってください。座りなさい。その原理については後で考えます。話を続けてください。そのメッセージを聞いたあなたは何をしたのですか?
博士: 私はワームホールのある部屋へ、できるかぎりの速さで走った。私がそこに着いたときには、博士はすでにホールを活性化していた。ドアの横にはRx52のキャニスターと、その上にショットガンと弾薬が置いてあった。彼は振り返って私を見るやいなや鼻で笑い、私に遅すぎたのだと告げた。彼はワームホールの前に立ち、もはや私には彼の場所へたどり着いて止めようとする術はなかった。仮に装備を持たずに過去に戻ったとしても、彼の存在それ自体が時間軸に壊滅的なダメージを与える可能性がある。私には選択の余地はなかった。彼に足を踏み出させることは阻止しなくてはならなかった。私はドアの横からショットガンを手に取り、そして銃口を彼に向けた。私は最後に彼に

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