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開示情報1号『デレクソン壁画序文』

『時間とはなんぞや?』
この問いに答えが出ることなど、ついぞ無かった。
何故か? それは、この問いに答えなど無いからだ。もっと言えば、「時間」などというものはどこにも存在しない。
エネルギーの流動性、物質の連続した運動、規則的な経過と不規則的なベクトル、それらは本来独立したものである。
しかし人類はこれを目にして、盲目的に「時間」という存在を認識に固着させてしまった。
あたかも、宇宙と空間という名の植物を観察するように、世界を尚早的に断言してしまった。
宇宙と空間という植物をまさしく根底から支える"根"が存在し、その一部が「時間」である、と。

だが時間などまやかしだ。
人間の認識が「運動」という現象を前にして作り上げた幻想に過ぎない。
粒子が動く、エネルギーが流動する。その事実が、何故「時間」という存在を定義することになるのだ? 寝言と狂気はあまりにも広く広く蔓延り過ぎた。

「時間など存在しない」

ではタイムマシンは実現不可能か? そうではない。可能なのだ。
だが「時間」という概念で横着を行うことは許されない。時間など無い。その結論によって、時間は支配可能である。
その方法を大まかにまず述べさせて頂くならば、どのような物質にも、必ず「痕跡」というものが残る。
粒子が、微細なエネルギーを空間中に放出しながら、ある空間を通過したと仮定する。
その際「粒子がエネルギーを放出した」という事実と放出量は、粒子の持つエネルギー残量という痕跡から求められる。「どの方向にどれだけエネルギーを放出したか」は、エネルギーの空間上の指向と放出のタイミングから求められる。
エネルギー放出量の僅かな差で、粒子がどの方向へ向けて通過したのかも求められる。エネルギーは必ず拡散し減衰するからである。その拡散したエネルギーを捉えることで、更に詳細な軌道が把握出来る。

私が何を言いたいのか、そろそろ皆にも伝わったように思う。
あらゆる詳細な痕跡のデータを取得し、解析することで、限りなく正しい「物体の過去像」を導き出すことが出来る。
その「物体の過去像」を再構築すること。それがタイムマシンである。

コンクリートの道路上を小石が転がって停止したとする。傍目には、何も変わっていないように見えるだろう。
だが、小石が転がった事で、必ず小石の至る所が「転がる前」に比べて確実に削り取れている。
コンクリートの道路も同様である。確実に、ほんの僅かな破損が生じているのだ。
その痕跡、物体が自身に刻む記憶または記録が「小石がコンクリートの道路上をこのような軌道、角度、仕事量で転がった」と証明している。
あとは、そのデータから小石が元あった場所を割り出し、小石を戻し、ごく僅かな破片を集め、確実にコンクリートの道路と小石を修復する。小石が転がったことで生じた大気中の分子移動と、その衝突によっても連鎖的に生じた分子移動も元に戻す。ごく僅かな地磁気の歪曲も元通りに戻す。
全ての物質、全てのエネルギーの動きを解析し、そして正確に復元する。それがタイムマシンである。
カオス理論がシュヴァイツァー反相対論によって解消され、スート波及実験によってあらゆる素粒子の相互干渉の影響の経過が追跡可能となった今、ついに宇宙を裏返すべき所まで辿り着いた。

時間は死んだ。カオスはくたばった。今こそ私は勝利する。

 
開示情報2号: SCP-987-JPは「過去に戻るタイムマシン」と言えます。しかしその実態は、何らかの実体を過去の時間軸世界へと転移させるというものではなく、この世界全てを過去の状態へと戻すタイムマシンです。
「10秒前」と設定し起動したならば、あらゆる物質が設定時点より10秒前の状態へと戻されます。SCP-987-JPは起動した瞬間に全宇宙のあらゆる物質のデータ取得を開始し、そのデータから「過去の状態」を確定させるための演算を開始します。
 
データの取得と演算が完了し次第、SCP-987-JPは原理不明のエントロピー逆転とヒューム値の低下を波及的に引き起こし、全宇宙の改変を実行し、設定された時間の状態を再現します。
これらのデータ取得と演算が完了するまでの時間は、1000年程度の誤差があるものの大凡7億年ほどです。つまり「10秒前」と設定しSCP-987-JPを起動した場合、7億年後に、SCP-987-JPは全宇宙を7億年+10秒前の状態へと戻します。それこそ、原子一粒、素粒子ひとつに至るまで正確に戻します。
 
しかし、それが本当に正確であるのかどうかは、何によっても証明が不可能です。
SCP-987-JPのみが、過去の起動記録という形で正確性の証明としていますが、この情報そのものの正確性が保証されていない上、起動記録自体、SCP-987-JPによる改変の影響を受けている可能性も考えられます。
これらの事から、改変の結果として、予測出来なかった誤差が生じている可能性もあり、その裏付けとして起動記録と現行世界の情報の食い違いが指摘されています。
 
SCP-987-JPが何時、どのように、誰の手によって作成されたのかは不明です。デレクソン壁画序文、本文に示されている理論についても詳細は判明していません。
 
しかしながら、デレクソン壁画発掘の経緯と起動記録との部分的な整合、そしてデレクソン壁画に基づくTICr-2003──デレクソン設計図からのSCP-987-JPの再構築の正確性、SCP-987-JPの改変によるカオス論的かつ潜在的な影響の刻印から、SCP-987-JPには一種の安全装置のような機能が備わっていると考えられます。
それは、もしSCP-987-JP自体が、自身の改変によって「開発前」の状態へと崩壊したとき、SCP-987-JPが再び再構築できるよう、基幹的な設計・思想がいつか地球上のどこかに現出するよう、カオス論的な確率挙動に予め指向性を与えていくものと思われます。
デレクソン壁画には人工的な痕跡が無く、あくまで自然的な偶然の重なりによって描かれた物体であるとの解析結果が出ている事から、この仮説は非常に有力なものとして支持されています。
 
開示情報3号

もし時間というものが存在するのならば、SCP-987-JPは時間を逆行させているのではない。
故に、時間的な異常に対するこれまでのノウハウ、考察は役に立たないが、これは希望でもある。
何故ならば、SCP-987-JPによって世界を巻き戻した時、それは運命論的には「未来が不確定な状態のまま」であるからだ。
それこそが、我々がデレクソン壁画から、この異常物を自らの手で作成した理由なのである。

 
SCP-987-JPは現在までに6度の起動と完遂が記録されています。
それぞれの起動記録については下記を参照してください
No. 設定日時 開始から実行までの時間
1 日本時間1987年5月17日15時27分27.88秒 700000821年253日18時間37分28.93秒
2 アメリカ・カリフォルニア時間1887年2月64日10時56分78.22秒 699999271年162日23時間82分22.38秒
3 プロシア共和国時間1429年8月11日25時18分11.87秒 700000023年28日35時間10分60.37秒
4 ドイツ時間1992年2月30日21時57分37.48秒 699999999年99日99時間99分99.99秒
5 大アフリカ連邦アンゴラ時間1789年12月25日8時47分57.12秒 700000681年349日22時間53分58.81秒
6 日本時間2007年3月10日7時29分61.29秒 700000007年360日19時間42分1.74秒

 
 
1995年11月27日11時37分52秒に、SCP-987-JPは起動されました。設定日時は日本時間1936年8月11日6時41分4
 
 

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