巡る先
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█月██日
今日は新しい男の子がしせつに来ました。
██君は僕と同じ█年生だから、仲良くしてほしいと先生に言われたのでお話ししました。
だけど██君は僕が好きなヒーローを知りませんでした。
でもアニメの映画が好きみたいなので、一緒にビデオを見ました。

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█月█日
今日は遠足で水族館に行きました。
僕は楽しみでしたが、██君は泣いていました。
██君は水族館に行かないでずっと先生と一緒でした。
どうして泣いているのかわかりませんでした。

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██月██日
今日は将来の夢について作文を書きました。
僕は医者になりたいと書きました。
██君は消防士になりたいと書いていました。
██君はとても優しい子だから、きっとなれると先生が言っていました。
僕も先生と同じことを思いました。

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19██年 █月█日
今日は学校で進路希望についてのプリントが出された。
志望校には██高校を書いた。

担任にはもっと上でもと言われたが、施設の先生方に負担をかけたくない。
そもそも勉強なら何処でも出来る。
休み時間に██に志望校を聞いたら、俺と同じ高校だった。
あいつは小学校の時作文に書いた時と同じように、今も消防士になりたいと思ってるのだろうか。
そう思って聞いてみたら、あいつは勿論だと笑った。

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19██年 █月██日
今日は高校入試当日だった。
俺は問題なく出来たと思うが、問題は██だ。
あいつは試験に遅刻した。会場までの道に倒れていた人を助けようとしたのだ。
そのせいで危うく失格になりかけたらしい。

あいつはいつもそうだ。
自分のことを顧みずに誰かを助けようとする。
それで自分の身に何かあったら、どうするつもりだ。
今回のようなことだけじゃない。いつか、下手すると命に関わることだってあるかもしれない。
それでもあいつは困っているからと言って、助けに行こうとするのか。
俺にはわからない。

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20██年 █月██日
今日は街で偶然██と会い、二人で飲みに行った。施設を出てからこうして会うのは久々だ。
消防士の仕事は大変だが、頑張っているらしい。

帰り道、俺はどうして消防士を目指したのか██に聞いた。思えばちゃんと理由を聞いたのは初めてだ。
するとあいつは、わからないと答えた。
あいつ曰くわからないが消防士になれば、誰かがどこかで喜んでくれる。ずっとそんな気がしているらしい。
意味がわからないと言ったら、██もそうだなと笑っていた。

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20██年 ██月██日
あいつは馬鹿だ

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20██年 █月██日
今日は久々に██の墓参りに行った。
流石にこの年にもなるとあの坂道はこたえる。途中すれ違った親子連れが羨ましい限りだ。

あれから色々考えたが、未だに僕はあの日命を投げ出してまで一人の子供を救ったあいつを、許していいかわからない。
ただひとつ、思うことがあるとするなら。
彼の命が、無駄にならなければ、
あの日救われた命が、誰かの役に立っていれば。
……そうであれば、いいと思う。

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