インタビューPH-SC-TAN-45-1903

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インタビュー対象: エージェント・サラ・クロウリー

インタビュー担当: ███████博士

<記録開始、1903/██/██>

寒かった。暗かった。狭苦しい場所に押し込まれてどれだけ経ったのか分からなかった。彼がドアを開き、光が部屋に流れ込んだ。

███████博士: さて、サラ。話をしようか。

エージェント・クロウリー: 何の話?此間の違反の時の扱いが荒すぎた話か…それとも何?

███████博士: いやいや、そういうことではないよ。記録の為に、いくつか聞いておく必要があるだけだ。

エージェント・クロウリー: ああ、はい。聞きたいことは何でしょう?

彼は私を部屋から引き摺り出した。私は叫んだ、いつも教わっていた通りに。今は観客がいた。

███████博士: 君の口から、ここに就く以前の境遇を説明して欲しい。それだけだ。

エージェント・クロウリー: どうして?私の経歴は知っているでしょう?

███████博士: それはそうだ。正直に言えば、これもただの役所仕事だ。ただ、何があるか分からない。君の発言から何か重要な事実が見つかるかもしれない。確認するに越したことはない。

エージェント・クロウリー: まあ、そうね。あまり話すことも無いのだけれど。

彼は私の檻の扉を開いて、私を酒場へ連れて行った。目の前には男がいた。大きく、太った、酔っ払いの。男は私に何をするつもりかを激しく豪語した。そして私の顔に笑いを浴びせた。

男は自分の強さを確信していた。私は怖かった。男に突撃をかけた。

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報告された場所:
████████;ニューヨーク州、ニューヨーク、1903/██/██

███████博士: ものは試しだ。

エージェント・クロウリー: そうね。まず赤子の時に、ある人達に引き取られた。連れ去られた、何とでも呼べば良い。E████とT█████・クロウリー。彼らは兄弟で、何かの格闘場の運営をしていた。合法だったのかは知らない。

[休止]

多分違うわね。

あまりいい待遇では無かった。普通の子供というより、狂犬みたいな扱いだった。

███████博士: さぞかし大変だっただろう。詳しくお願い出来るだろうか?

エージェント・クロウリー: そうは言っても、何を話して欲しいのやら。

まず足を狙った。私がそれを横に払うと、男の体重は仇となった。 ズシンと床に叩きつけられた瞬間、私は彼の背中に組み付いた。

観客は歓声を挙げた。彼らは血に飢えていた。

███████博士: 話してみて。

エージェント・クロウリー: …最初の記憶の時から、彼らは私に戦い方を教えていた。見世物小屋のネタみたいに私を"極東の蛮人(Savage Slant)"と呼んで、リングに投げ出して大の男と戦わせた。七歳の時に。

"過酷な北モンゴルに鍛えられた雪の子"だとか何かが口上だった。"やれるものならやってみろ"、とね。

███████博士: でも君は…日本人のはずだ。

エージェント・クロウリー: そう。ムサシ生まれ、こちら育ち。知っていたとは意外ね。

でもまあ、田舎の荒くれに向けて売り出すには、中国の化け物とでもしておいた方が都合が良かったのでしょうね。知らないけれど。

███████博士: ふむ。それで七歳の時には戦い始めたんだったね。

エージェント・クロウリー: ええ。まあ、おそらくは。実際のところは分からないけれど、私の推量では。八歳だったかもしれないし、九歳だったかもしれない。あるいは十歳かも。何しろ…何、十五年前の話?あの頃は時間の感覚が無かったし、全部が一塊の"よく分からない"なわけ。

███████博士: なるほど。先のは'不確定'としておこう。それで、どうやって生き延びたんだ?大の男と戦った?まだ小さい女の子の時に?

エージェント・クロウリー: そう。それで何度も勝ち続けた。

███████博士: 失礼、今何と?

私は腕を男の頭に掛け、目を狙った。耳を噛み千切ると、彼は床を転がり、私を振り落とそうとした。彼の一かけらを吐き捨て、もう一口食らわせようと再び首を狙った。硬くなった爪で目を裂かれ、男は敗北した。

エージェント・クロウリー: その…ほとんどは勝ったわ。

███████博士: ど、どのように?

エージェント・クロウリー: 知らない、ただそうしただけ。

███████博士: 少し…理解に苦しむところだ。

エージェント・クロウリー: 私はただ…すごく頑張ったの。

私は男を投げ捨てた。男は闇雲にうろつき、逃げようとした。彼からは小便の匂いがした。私の手は赤色に覆われていた。私が文句を言うよりも早く、兄弟達はマンキャッチャーを首にかけ、私を檻に連れて行こうとした。

自分の仕事は終わっていたが、拒絶した。恐怖を飲み込んだ。突撃した。

███████博士: サラ、君が言っていることが如何に現実離れしているか分かっているんだね?

エージェント・クロウリー: 何と言ったら良いか分からない。あの頃自分がやっていたことを想像できる?

彼らをリングの外に投げ出して、背骨を壊した。地面にたたきつけて、目をくり抜いた。やすり掛けされた歯で、顔のあちらこちらを噛んでは吐き捨てた。だから…だから私の手は…こんなに焼けているの。

███████博士: 大丈夫だサラ、説明はしなくても―

エージェント・クロウリー: いや。そもそも私に話をさせておいて、止めては聞けない。毎晩、私はあの檻に突っ込まれた。その中で彼らは、手を掴んで、蝋燭の上に指をかざして、爪が岩のように硬くなるまで炙った。それで、私の歯と爪を研いで戦いに備えさせた。ほとんど。毎晩。

何が最悪だったか知りたい?奴らは私がそれを楽しむようにさせた。人の手足を千切ることだけが、唯一私に出来た人との"交流"だった。私の人生は"檻"か"戦闘"だけだった。そして戦いには全力を尽くして臨んだ…その方が、檻の中の時間が楽だったから。

そういう経験をすると…おかしくなってくる。それはもう滅茶苦茶に…もう戻って良い?他に何を話して欲しいのか見当がつかない。

彼の手ごとキャッチャーを奪い取り、両方を襲った。片方に向かって突進し、手を串刺しにした。頭を首輪から引き抜き、手早くもう一人を処理した。観客はそそくさと去った。私は逃げた。

自由だ。

<記録終了>

後書: エージェント・クロウリーが任務に復帰するより前、彼女は精神状態の悪化と飲酒量の増加を理由に、サイト-45のセラピーグループへの参加を申請した。再配属が検討されたものの、彼女は依然として任務を満足に果たしており、精神面での治癒の兆候を見せている。

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