投獄
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騒々しい警報が鳴り響き、赤いダイオードの光が、ドアの下を流れる血を映し出していた。それは私のおかれている状況の象徴だった。私は深呼吸をして、落ち着こうとした。私はドアの向かいに座って、昨日の私に関する報告書を握り締めていた。

私は何とか死ぬ前に部屋に逃げ込むことができた。一人のDクラス従業員の、そしてぐちゃぐちゃになったよりたくさんの死体。KeterとEuclidのいくつかのオブジェクトが脱走していた。生まれるべきではなかった、病んでいて、心無く、冷酷な異常存在たち。
私は動かずに、決して破られない絶対的な沈黙の中、静かに座り込んでいた。血まみれの怪物から、私の居る部屋の4つの壁だけが、私を守っていた。頭上に、灰色のコンクリートに取り付けられた電話が見えた。それは建物の一階につながっている筈だ。しかしながら、私は内線番号を一切知らなかった。私は絶望して、自分のひざを抱えた。私は、虚無感が鋭い寒さという形で私を突き刺しているように感じていた。

数分の時間が過ぎたころ、私の頭上で電話の鳴る音が鳴り響いた。わたしは飛び起きて急いで受話器をとると、ドアのほうを確認した。

— も、もしもし? — わたしはどもりながら話しかける。

— あなた、名前は? — 受話器から女性の声が聞こえた。

— Amalia博士よ。いま地下二階、東棟にいるわ。 — わたしは一息に言い切った。

できるだけ速く、新鮮な空気を吸いたかった。

— ふむ…こんにちは、Amalia博士。場所を教えてくれてありがとう。まだ誰とも会ってない?

— え、えぇ。 — 私はささやくように答え、再びドアのほうを警戒した。

まだ近くにオブジェクトの来たような様子はない。

— なにか?

— ここには死体しかないわ。私はさっきから彼らの血とにらめっこしてる。 — わたしは引きつった笑い声を出した。

私の心臓の脈拍は最高潮に達し、私の筋肉は緊張していて、私は思うように動かせなかった。

— 私はあなたが怖いのはわかるけれど、答えてほしいの。他に誰か…

— あなたの名前は? — 私は女性の声をさえぎった。

彼女は私の名前を聞いたのに、なぜ助けに来ないのだろう?

— 私? — 彼女は私の問いに驚いたようだった。 — Tamara博士よ。私はあなたを助けたいの。私は…すぐにあなたのところに誰かひとをよこそうと思うわ。もうそのために機材を準備してるの。だからこそ、あなたと一緒に誰かいるのか、それがとても重要だわ。

不満で頭を振り、彼女にはそれが伝わらないことに気がついた。

— だ、だれもいないわ。私一人よ。たぶん、まだ近くにいくつかのKeterとEuclidのオブジェクトがいるわ。とても怖いの。 — 私はふるえ、恐怖心から涙を流した。 — 私は…

私は足音をきき、口を閉ざした。何かがここを通った。何かが、明らかに技術室へと向かっていった。

— だれかが…ここに向かってきてるわ。 —私はパニック気味にささやいた。

私の心臓の鼓動はますます早くなり、心臓はいまにも胸から飛び出しそうだった。

— おちついて。おちついてちょうだい。 — Tamara博士はそういった後、少し沈黙してからこういった。 — 静かに。お願い、静かにして。

私は話すのをやめ、受話器を耳に当てたまま、みみをすませた。あたかも誰かがしっかりとした足取りで歩いているように、その足音は遅く、落ち着いていた。それがドアの前で止まったとき、私は震えた。わたしは数秒息を止め、そのおかしな怪物が、私の吐息をききつけることを恐れていた。私はドアの近くの壁を照らす赤い光を見つめながら、この位置からどうやって私から気をそらすかを考えていた。なにもなく過ぎ去る数秒間の間、わたしの精神にはとてつもなく大きな負荷がかかっていた。冷酷な怪物が遠くへと去り、その足音が聞こえなくなったことを確認するとすぐに、私はできるだけやさしくTamaraに話しかけたが、恐怖から自然と声は大きくなった:

— い、行ったわ。

— 状況はどうなってるの?

— 大丈夫、たぶんもういなくなったと思うわ。 — その質問は私の神経を逆撫でした。私はあの状況じゃ外には出られなかった。どうやってドアの向こうの状況を確認しろというの? — どうやって私は外に…

— あぁ!ごめんなさい。救助部隊に対して言っていたの。 — 彼女は少し笑いながら私にそう話した。

それは私をさらにイラつかせた。一瞬、私は危険な状況にいることを忘れかけた。

— 私は、あなたに私の居る状況がまったく快適ではないことを思い出してほしいわ。 — 私は受話器の向こうの友人にそう忠告した。

彼女はつばを飲み込み、笑うのをやめた:

— ごめんなさい。

— いいのよ。どのくらい時間がかかりそうなの? — 私は少しでも自分を落ち着かせようと、そう聞いた。

— おそらく10分くらいよ。遅くても15分。

私は固まった。時間がかかりすぎる。私はまだ死にたくなかった。

— ええ、到着までが長すぎることは知ってるわ。でも、必ず助けに行くから。近くにオブジェクトがいないなら、すぐにでもここを出発するわ。

数秒の沈黙の間、私の気持ちはかき乱されていた。ストレスのせいで、私は、静かなのにもかかわらず誰かに見られているような感覚がしていました。

— Amalio博士? — Tamara博士は私を物思いから現実に引き戻した。 — あなたのラストネームは?

— そんなこと聞いて何の意味があるの?

— もしあなたが、静かにして、何も考えたくないというのなら、私たちは黙っていましょう。 — 彼女はやさしく笑った。

— Levisonよ。Amalia Rachel Levison博士。 — 私は答えた。

瞬間的な衝動が私にそうさせていた。私は彼女の姓と、ミドルネームがしりたかった。しかし、わたしはそれをあきらめた。私は静かに座り、耳を澄ます必要がある。私は受話器の向こうの声に片耳を集中させーもう片方を、周囲の静寂に傾けた。私が必死に取り除こうとした恐怖心は、再び頭をもたげるだろう。

— 素敵な名前ね。私ね、レイチェルって友人がいたのよ。彼女はすばらしい人だったわ。

— そう。 — 私は静かに相槌を打った。

— まぁ、いいわ。話題を戻すけど、あなた、財団でどのくらい働いているの?

— 二十歳になってからずっとよ。

— ほんとに? — 私は一人でほほえんだ。

なぜ私はそんなことをしたのか、わからなかった。

— 3年間。

私はさらに続けようとしたが、それは受話器の向こうからの、騒がしいドアの音でさえぎられた。

— 何の音?

すぐに返答が帰ってきて、私はとても幸せな気持ちになった。

— あなたのための救援部隊よ — 私の友人はそう答えた。 — 彼らはすぐ行くわ。

わたしの、怒りを伴った恐怖は、一瞬で和らいでいった。

— さて、でも彼らが来るまで、もう少しおしゃべりしましょう。あなた、どうやって財団を知ったの?

質問は私の興奮を、すこし鈍らせた。

— 残念ながら、覚えてないの。最初の3ヶ月のことは、なにも。健忘症にかかっていて。どうやら、私は他の博士と共同で行った実験で、心理的に耐えられなかったみたい。誰との物だったのか、なぜこんなことになったのか、聞いてみたことは無いわ。たぶん、それで正解だと思うけど。

— ごめんなさい。

私は気にしないで、と答えようとした。しかし私は答えられなかった。わたしは、動きを止めた。私は、ドアの向こうからうめき声が聞こえるのに気がついた。明らかに人間のものではなかった。

— Tamara博士、聞こえる?これは、私の幻聴じゃない?

私は、私の精神がそれを私に聞かせているのだと願いたかった。

— シー!静かに。 — 女性は落ち着いた声で答えた。

でも、私にとってはそれで終わらなかった…残念なことに。私は落ち着き払っていたので、その音を聞いたことがあることにすぐに気がついた。もし私のことをやつが先に見つけてしまったら?私が警戒を怠り、そのせいで人生を危険にさらしてしまっているとしたら?

奇妙なうなり声と、戦闘音が耳に入ってきた。オブジェクトは壁を傷つけ、こちら側と反対側の壁を交互に打ち付けているようだった。廊下を走る音が聞こえた。しかし、私が最も恐れていたのはそこではなく、この戦いの勝者が私を勝ち取るということだった。

先ほどの喜びから一転、私は恐怖のそこへ転がり落ちた。地獄は、何かが床に倒れこむ音を聞いたときに終わった。再び沈黙があり、唯一聞こえるのは、血にぬれた床を死体を引きずっていく音だけだった。

— それは、私をみつけたわけじゃなかった。 — 彼女は信じられないようにつぶやいた。

私は、Tamaraがそれを聞き取れていなかったことを知っていたので、私は少し大きな声で、繰り返した。

— よかった。 — 彼女は、私の声で安心したように言った。 — 救出部隊が向かってるわ。彼らはいま地下一階にいる。

私は、誰かがここに来る前に私は発狂してしまい、記憶処理を受ける必要がでてきてしまうのではと思った。しかし、わたしの救世主が常に続けてくれた会話は、私が正常な精神を保つことを助けになった。今度は、会話の途中に何かがおきることはなかった。3度、会話を中断して、事態の経過を伺う必要はなかった。しかし、それにもかかわらず、電話での会話以外になにもせずに、この小さな部屋に座っていることは、私にとって、永遠にも感じられる時間だった。しばらくして、私の体感では30分が過ぎたのではと思うころ、私は救助部隊に何かあったのではと心配し始めた。

ドアについたLEDが赤から緑へと変わった瞬間、懐中電灯の光が私の視界を奪った。そして防護服に身を包んだ男性が現れ、すべてうまくいったのだということがわかって私は涙した。わたしは、なきじゃくった。

— Tamara博士。私が救助を待っている間、私にいろいろとしてくれたこと、私を見つけてくれたこと、本当に感謝してもしきれません。 — 私はたちあがって救世主と自由に目を向ける前に、彼女にそう告げた。

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