草木の中を歩きながら
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セーヴィアン・ツリー・フラワー・ガーデンに入れば、誰もがガーデンの中央にある大きな切り株に目を奪われるでしょう。その切り株は古く虫食いがあり、一帯に満ちる多くの生物の中でも腐朽を象徴するものとして一際目立っています。多くの来訪者はただ考え込むだけで、目前の答えにわざわざ手を伸ばそうとはせずにその場を離れることでしょう。しかし少数の、好奇心のある人たちは一番近くの整備員に切り株にまつわる話について尋ねるでしょう。すると整備員は静かに笑い、本当に知りたいと思っているのですか、と尋ねます。そうだ、と返せば、整備員は口を大きく広げ微笑むでしょう。

「ではまず事の起こりから話し始めることにしましょう……」

ツリー・フラワー・ガーデンがセーヴィアンの保有下に入る前は、エルリッチ人の高貴なる男が所有していました。彼の名はロバート・J・アトキンス。彼は変わった男で、大陸のすみずみから目を見張るような植物を集めていました。彼の集めたものには見物人の心を驚きで満たす木々や草花がありました。この植物たちは永い時の流れを見届けた生き証人と言えるでしょう。集めたものの中でも特にすばらしかったものは、彼がグランドファーザーと名付けた大きな木でした。アトキンスはこう言いました、この木はドルレンの北部から取り戻したものなのだと。また彼はこうも言いました、この木はこの世に存在する最も古い木であり、大陸中の人間がなした全ての業績を見届けてきたのだと。

当初彼はグランドファーザーを私的な庭園で展示しました。見物人を招待し、人々がエルリッチ最古の生命を見物し、触れられるようにしたのです。しかし時が過ぎると、彼は木の健康が心配になりました。多くの人間が木に触れ、木の持つ不死の力の一部を擦りとろうとしていたのです。また霊薬やまじないなどの秘術に使うために幹から樹皮をはぎ取る者もいました。幹はたちまち、見るからに丸裸で虫食いができはじめ、かつて力溢れる生命の源であった木は病んだ姿となりました。

そういうわけで高貴なるアトキンスは木を自分の砦に植えるよう命じました。この場所ならどんな市民も木を摘み取ったり覗いたりすることはできないでしょう。しかしこの場所さえ安全ではありませんでした。砦を守る男たちが戦いでの幸運や勇気、強さを得ようと葉を引き抜いてしまったのでしょう。彼らは葉をお茶の中に入れたり、身につけたり、武器に添えたりしました。しかし彼らが葉を摘み取るごとに木は細くなってやせこけ、すぐにねじ曲がったみすぼらしい姿へと変わりました。まるで死の床の老人のようです。アトキンスの不安は恐怖へと変わりました。

そういうわけでまたもや偉大なるグランドファーザーを移動させ、アトキンス自身の荘園にある部屋に入れました。アトキンスはどんな危険があろうとこの場所なら安全だと信じ、自分と召使い以外の誰をも近づけさせませんでした。しかしその安心感も、彼の強い被害妄想によりすぐに打ち砕かれました。アトキンスは召使いがグランドファーザーの植物室に入るのを拒絶するようになりました。彼は召使いたちもこの古代のオークをわざと傷つけているのだろうと信じていたからです。ある日の夜、彼は召使いが木の幹が擦る音を聞いたと信じ込み、部屋の中に住処を移しました。召使いにはドア枠越しに食べ物を持って来ることのみ許しました。

この後彼がどうなったのかはっきりと知る者はいません。ある者は、彼は残りの生涯をその木とともに生き、精霊と自身の魂以外は誰も近づけないようにしているのだと語ります。またある者は、彼の家はサヴァンスとのエルリッチの戦争によって壊されてしまったのだと語ります。たくさんの人が、グランドファーザーは長い間自分が受けてきた仕打ちと同じようにアトキンスの皮を剥ぎ始めたのだという物語を語ってさえいます。いずれにせよアトキンスはだいぶ前から姿を見せていません。戦争から逃げた召使いたちが家へと戻ってきたときには、切り株と帽子と、脇に羽ペンが置かれた無地の紙しかありませんでした。召使いの一人であったセーヴィアンは償いとして切り株を取り上げると、切り株が休む最後の場所として庭園の中に植えました。そんなわけでグランドファーザーはそのときからここに存在しており、質問をする勇気のある者に偉大な物語を提供しているのです。

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