エージェントのリクルート方法、あるいは単なる悪ふざけについて
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予め入手していたIDで、医務室の扉を開ける。
そのまま俺は息を潜め、黙々と机に向かう人物に近づいた。
白衣を着込んだ医師ー諸知博士。
この“財団”をスパイすることを志願して潜入したものの、俺は目立った成果を挙げられないでいた。そこで目をつけたのが、クリアランスレベルの高さと不釣り合いな扱いを受けているこの博士だ。
高度な情報にアクセス出来る割に、目立った護衛の付いていないこいつを拉致すれば、組織への面目も立つだろう。
悪いな、恨むなら警備の甘い財団を恨んでくれ。
胸中で言い捨てると、後一歩のところまで近づく。今更違和感を感じたのか、博士は振り向いたが、もう遅い。
俺は驚いているだろう顔を見ようとして・・・

・・・気がつくと、医務室のベッドに横たわっていた。
「気がつかれましたか。ご気分はいかがです?」
傍から聞こえる穏やかな声に、俺は状況を把握した。
「十分いいですよ。・・・実験は成功です、諸知博士」
「それは良かった。これでまた一つ、財団に貢献できました」
にこにこと笑う博士の前で、そもそもの切欠を思い返す。
ある要注意団体への潜入任務の前、この博士が提案してきた実験。
記憶を消して偽の人格を作り出し、まずは忠実な構成員として振舞う。勿論そのままでは困るから、財団への潜入を志願し、諸知博士に辿り着くよう“条件付け”る。後は博士の顔を見ることで元に戻るトリガーが作動、といった内容だ。
「さ、後は貴方が潜入して得た情報を報告するだけです!カナヘビくんのところに行きましょう!」
実験の成功に興奮気味の博士に連れられ、俺は医務室を出ようとし・・・・・・あれ?
「博士、確認してもいいですか?今回の実験、最初っから要注意団体だった人間をエージェントに仕立て上げたりなんて・・・出来ませんよね?」
否定の言葉がとにかく聞きたかった。だって、もしも出来るなら、俺は、俺の存在は。
「ふふ、さあ、どうでしょうね?」
子供のような笑い顔をした博士は、その後幾ら尋ねても、答えようとはしなかった。

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